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概要:ダンス投稿などで人気の動画アプリ「TikTok」を展開するByteDance が、中国版アプリを通じて、民間への科学の普及啓蒙のための動画配信を拡大することが明らかになった。その裏事情とは……
中国版TikTok「抖音(Douyin)」のサービス案内画面。「記録美好生活」をうたう動画アプリだが、科学普及のための動画コンテンツを強化することに……。
出典:Douyin HPより編集部キャプチャ
全世界で10億ダウンロードを超える人気動画アプリ「TikTok」を展開する、中国のByteDance (以下、バイトダンス)が同アプリの中国版「抖音(Douyin)」を通じて、民間への科学の普及啓蒙のための動画配信を拡大することが明らかになった。3月22日、チャイナデイリー(中国日報)が報じた。
同記事によると、科学動画の配信は、中国科学院(=同国国務院直属の科学技術に関する最高研究機関)などの国家機関が全面的に支援するほか、民間の研究所やその研究者らにも積極的な投稿を呼びかけていくという。
また、科学動画の品質管理や制作支援、内容のチェックを行うため、バイトダンス側に専属のアドバイザリーチームを設置。中国科学院の研究者らをそのメンバーとして招集し、最終的には100人規模のチームとしてテーマ分野を網羅する。
バイトダンスの上場計画が背景に
専門家の間では、昨今の中国経済の失速を受け、習近平指導部が市場経済重視から国家主導による景気浮揚を重視する政策へとシフトし始めている、との見方が強まっている。
REUTERS/Guglielmo Mangiapane
中国国内向けのDouyinではすでに、ポピュラーサイエンス分野の動画投稿が官民問わず行われているが、今回その強化拡大を打ち出すことになった背景には、バイトダンスの上場に向けた動きがあるとみられる。
中国の習近平国家主席は2018年11月、ハイテク分野のスタートアップ向け新市場「科創板」(中国版ナスダック)を上海証券取引所に新設する計画を発表。2019年3月には上場規則などが公開され、上場申請の受け付けが始まった。
香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(2019年2月21日付)は、中国当局がこの新市場への上場を打診するため、バイトダンスに接触したと報じている。真偽のほどは定かではないものの、アメリカや日本をはじめ世界進出を加速する同社が、大きな投資資金を必要としていることは間違いない。当局にとっても、急成長するバイトダンスの上場は「科創板」の良い宣伝になるに違いない。
習近平指導部は中国での上場に「期待」
2019年3月、北京で開催された全国人民代表大会の様子。
REUTERS/Jason Lee
ただし、バイトダンスが今後自らの都合に合わせた上場を実現できるかどうかは不透明だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(2019年3月15日付)は、現在ニューヨーク証券取引所に上場しているEC世界最大手のアリババグループが、夏にも中国での上場を検討していると報じている。同グループの中核企業で、決済事業の「Alipay(アリペイ)」やスコアリング事業の「芝麻(ジーマ)信用」を展開するアントフィナンシャルについても、中国での上場可能性を指摘する声が出ている。
また、中国経済の減速による社会不安の高まりを背景に、習近平指導部による“締めつけ”が目立つようになってきている。
2019年3月の全人代に参加し、報道陣に囲まれるバイドゥ(百度)の李彦宏CEO。米ナスダック上場、中国を代表する企業である同社も、習近平指導部の顔色を慎重に伺っている。
REUTERS/Stringer
3月15日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)では、検索エンジン大手バイドゥ(百度、米ナスダック上場)の李彦宏CEOが「すべての民営企業家は党の目標実現に貢献していく」と発言(日本経済新聞、2019年3月20日付)するなど、企業は指導部のご機嫌取りに躍起になっている。ちなみに、バイドゥもアリババと同じく、夏に中国の証券取引所に上場するとの見方が出てきている。
習近平指導部が、アメリカの証券取引所に流れていた投資資金を国内に呼び込み、金融市場を活性化することで、中国経済を浮揚させたいと考えているのは明らかだ。その文脈を踏まえると、上海の新市場にせよ、既存の香港や深センの取引所にせよ、バイトダンスに与えられた上場の選択肢はそう多くないのではないか。
バイトダンスにとって決断の年
北京にあるバイトダンス(字節跳動)の本社。2018年8月撮影。
REUTERS/Stringer
こうした流れを考えると、バイトダンスがDouyinでの科学動画配信の強化を打ち出した狙いは、民間への科学の普及啓蒙などではなく、習近平指導部への服従を示す融和策ととらえるのが正しいだろう。
その前段となる“事件”は、2018年4月に起きていた。
バイトダンスが展開する別の短編動画アプリ「内涵段子」が、反社会的コンテンツを拡散しているとの指摘を中国当局から受けて閉鎖に追い込まれ、アプリのダウンロードもできなくなった。張一鳴CEOは政府に向けた公式謝罪文を発表、反社会的コンテンツの削除要員を6000人から1万人に増やすなどの措置をとり、事態を収拾した(ブルームバーグ、2018年4月12日付)。
この事件以降、TikTokと並ぶ同社の主要サービスであるニュースアグリゲーションアプリ「今日頭条」でも、一部コンテンツがポルノ・わいせつ物の配信に当たるとして削除や一時サービス停止を命じられるなど、当局からの指導が繰り返されてきた。
2017年10月、バイトダンス(字節跳動)本社。当時はまだ社名より、ニュースアグリゲーションアプリ「今日頭条(Toutiao)」のイメージを先行させていた。この後、アプリ名から社名へと外壁のサインを変更。
REUTERS/Stringer
今回の科学動画配信の強化では、冒頭に記した通り、バイトダンス内に設置されるチームに中国科学院の研究者やエンジニアなど中国当局のスタンスを色濃く反映する人材が加わることになる。詳細はなお不明だが、普通に考えれば、チームを通じて当局に何もかも筒抜けになる。
中国経済の減速による広告収入の減少でダメージを受ける企業は多く、バイトダンスも2018年の売上高が伸び悩んだと報じられている。さらなる事業拡大のために資金調達というテコ入れが求められるタイミングだが、上場に向けた(あるいは指導部との関係改善のための)コンテンツの健全性確保など、リスクとコストは大きい。
バイドゥ、アリババ、テンセントが中国インターネット三大企業を超えて世界企業へと成長するのを目前に、バイトダンスがどう動くのか、2019年は同社にとって決断の年になりそうだ。
(文:川村力)
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