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概要:世界最大の植物油輸入国であるインドでは、世界的な供給網の混乱により生じた食用油不足を乗り切るため、原材料の「米ぬか」に注目が集まっている。
[ムンバイ 24日 ロイター] - 世界最大の植物油輸入国であるインドでは、世界的な供給網の混乱により生じた食用油不足を乗り切るため、原材料の「米ぬか」に注目が集まっている。
6月24日、世界最大の植物油輸入国であるインドでは、世界的な供給網の混乱により生じた食用油不足を乗り切るため、原材料の「米ぬか」に注目が集まっている。アーメダバード近郊の水田で2012年7月撮影(2022年 ロイター/Amit Dave)
精米過程の副産物として生じる米ぬかは、これまで畜産や養鶏用の飼料として使われてきた。近年では製油工場でも、健康志向の強い消費者が支持するコメ油の抽出が行われるようになったが、従来は競合する食用油に比べて割高だった。
現在でも、インドにおける植物油消費全体に占めるコメ油の比率は小さい。だが、業界関係者によれば食用油の間で最も急速に伸びており、需要に応じるために生産・輸入の拡大が始まっているという。
インドネシアによるパーム油輸出の規制とウクライナからのひまわり油出荷が途絶したことで、このところ世界的に食用油価格が高騰しており、競合製品に対するコメ油の割高感はすっかり消えてしまった。これを機に、風味の特徴がひまわり油に似ているコメ油への需要は急増している。
国際米油協会(IARBO)のB・V・メータ事務総長は、ウクライナ産ひまわり油の輸入が急減する中で、消費者の間でコメ油への乗り換えが始まっている、と話す。インドは通常、国内のひまわり油需要の3分の2以上をウクライナからの輸入に頼っている。
ムンバイで暮らす主婦のアディティ・シャルマさんは、「コロナ禍を機に、健康的な食材を求めるようになった。身体に良いというコメ油を初めて使ったのは6カ月前で、それ以来、ずっと使っている」と話す。
シャルマさんは、コメ油にはコレステロール値を下げ、抗酸化作用もあるとして、「風味も良いし、健康にも良い」と話す。
現在、インドでのコメ油の価格は1トン当たり14万7000ルピー(約25万円)。これに対し、ひまわり油は17万ルピーだ。
インド溶剤抽出事業者協会(SEA)がまとめたデータによれば、コメ油は通常、他の油種に比べて25%ほど割高だが、ここ数カ月は輸入植物油よりも安くなっており、一般市民にとっても買いやすくなっている。
価格競争力を得たことで、コメ油の消費量は3月以降増大しており、事業者はコメ油生産に動きつつある。
4人家族のシャルマさんは、以前のように割高になったとしてもコメ油を買い続けるだろう、と話す。
<副産物から主役へ>
コメ油への需要は非常に旺盛で、精米事業者の収益構造まで変わってしまった。今や彼らは、コメ油の生産を優先している。
「精米事業者にとっては、これまで副産物にすぎなかった米ぬかが、今や主力製品になってしまった」と語るのは、国内最大のコメ油メーカーであるリセラ・グループのプニート・ゴヤル最高経営責任者(CEO)。
ゴヤルCEOは、需要増大に対応するため、現在1日600トンの精製能力を今後2カ月で1日750トンまで拡大する予定だと話している。
インド米輸出事業者協会のB・V・クリシュナラオ会長によれば、植物油不足を受けて、製油事業者は米ぬかに対し過去最高の買い取り価格を提示しているという。
米ぬか価格は1トン当たり3万ルピーから3万6000ルピーまで跳ね上がった。精米工程に送られる玄米の価格は1トン当たり約1万9000ルピーである。
だが、依然としてコメ油の供給を大きく制約しているのは、精米が行われているすべての地域で製油設備が不足しているという問題だ。人間が消費する食用油に加工する場合、米ぬかを籾殻から分離して48時間以内に処理する必要があるからだ。
米ぬかのうち食用油に加工されるのは今のところ55%に留まり、残りは低価格の飼料市場に回ってしまう。
それでも、複数の製油事業者が生産量の最大化に努めており、インドにおけるコメ油生産量は、2021年の約95万トンに対し、今年は過去最高の105万トンに達する見込みである。インドが競合製品の輸入を減らす一助になるはずだ。
<需要の増大>
インドにおける食用油の消費量は過去20年間で3倍に膨れあがった。背景には、人口増加と所得の上昇、国民の外食傾向の高まりがある。
インドの植物油消費量は年間約2300万トン、そのうち1300万トン近くを輸入している。国内生産のコメ油で、植物油消費全体の約5%を賄うことができる。
インドの食用油メーカー、アダニ・ウィルマー や日用品大手エマミ 、そして穀物商社カーギルのインド事業部などの企業は、都市部での需要増大に対応するため、独自のコメ油ブランドを立ち上げた。
インド最大の米輸出企業であるサトヤム・バラジーでエグゼクティブ・ディレクターを務めるヒマンシュ・アガルワル氏は、コメ油ブランドの人気は上昇しており、消費者の支持も高まっていると話す。
「この新しいセグメントは成長の一途にある」とアガルワル氏。従来はもっぱらパーム油、大豆油、ひまわり油、なたね油を提供していた企業も、コメ油製品を発売しているという。
リセラのゴヤルCEOは、食品大手ペプシコ や食品メーカーのハルディラムなどの法人顧客でも、揚げ物加工にコメ油の利用が増えていると語る。
とはいえ、国内生産だけでは増大する需要に応えきれない。
「バングラデシュからコメ油を輸入している企業が2-3社あるが、バングラデシュでも輸出に回せる余裕は限られている」とIARBOのメータ氏は話した。
(翻訳:エァクレーレン)
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