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概要:ドル・円相場は139円前半をピークに下げへ転じ、140円台が遠のきつつあります。 米経済の減速懸念による利上げペース鈍化の思惑で、ドル売り圧力が強まったことが背景にあります。 ただ、日米政治情勢が不透
ドル・円相場は139円前半をピークに下げへ転じ、140円台が遠のきつつあります。
米経済の減速懸念による利上げペース鈍化の思惑で、ドル売り圧力が強まったことが背景にあります。
ただ、日米政治情勢が不透明なことから、現時点で下落トレンド入りとは言い切れません。
ドル・円は7月14日に139円39銭まで強含み、心理的節目の140円が視野に入りました。
しかし、その後は下落基調に転じています。
7月26~27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅が0.75ptに抑えられたほか、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が今後の引き締めペース鈍化の見通しに言及。
米4-6月期国内総生産(GDP)は2期連続マイナスとなり、リセッション懸念がドルを押し下げました。
FRBの利上げ加速スタンスを原動力に春先から20円以上も水準を切り上げてきたのですから、FRBがタカ派色を弱めれば米金利の低下を手がかりに売られるのは致し方ないでしょう。
FEDウォッチによると、市場関係者の半数が次回9月のFOMCではFF金利2.75-3.00%へ0.50ptの引き上げを予想しています(米7月雇用統計を受けてその後、0.75ptの利上げ確率が3分の2程度まで上昇)。
ドルは円以外の主要通貨に対しても上昇が一服しており、「ドル1強」はいったん収束したと言えそうです。
NY株式市場はFRBによる引き締め後退を好感した買いが優勢となり、指数を押し上げています。
今後リセッションが意識されれば株安に転じ、円買いがドルを下押ししそうです。
といっても、FRBと日銀による金融政策スタンスの違いから、目先もドル・円は下げづらい値動きが続くとみています。
また、世界規模のリセッション懸念がますます強まれば、ドルには有事の買いも見込まれます。
ただ、政治情勢が絡むと、1-3カ月先は読めなくなります。
11月の米中間選挙が迫るなか、バイデン大統領の支持率は依然低迷しています。
ウクライナ戦争は中国との覇権争いの側面もあり、本来なら支持率アップにつながる要因のはずが、現状は逆。
このまま中間選挙で民主党が大敗した場合、2年後の大統領選でバイデン氏が再選を狙う流れを作れず、別の候補者を擁立するシナリオも浮上しそうです。
一方、日本では岸田政権が1カ月前の参院選で大勝し国政選挙で連勝を飾ったものの、最近の世論調査では支持率が低下。
安倍晋三元首相の国葬をめぐる段取りのミスや自民党と宗教団体との関係が問題視されています。
岸田氏が持ち味としてきた安定性を失い、これまで抑えられてきた自民党内の派閥どうしの権力抗争が激化すれば、1993年以来の分裂の危機に陥らないとも限りません。
ペロシ米下院議長のやや独り歩き的な台湾訪問は、あいまいさの上に成り立っていた東アジアの安定を破壊しかねないものです。
世界の分断が進むなか、日米それぞれのリーダーシップが弱まれば、中国をはじめロシア、北朝鮮の挑発行為はエスカレートするでしょう。
その際には「有事のドル買い」かリスク回避の円買いか、それとも「日本売り」の一環である円売りか、あらゆるケースを考える必要がありそうです。
(吉池 威)
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