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概要:カナダ北部の辺境地帯に暮らす人々は、以前からずっと食料購入にかなりの金額を投じてきた。昨今の物価上昇は、ただでさえ厳しい状況をさらに悪化させており、世界有数の穀物・食肉輸出国であるカナダの弱点が露呈している。
[イカルイト(加ヌナブト準州) 8日 ロイター] - カナダ北部の辺境地帯に暮らす人々は、以前からずっと食料購入にかなりの金額を投じてきた。昨今の物価上昇は、ただでさえ厳しい状況をさらに悪化させており、世界有数の穀物・食肉輸出国であるカナダの弱点が露呈している。
カナダ北部の辺境地帯に暮らす人々は、以前からずっと食料購入にかなりの金額を投じてきた。昨今の物価上昇は、ただでさえ厳しい状況をさらに悪化させている。
カナダ最北部を構成する3つの準州のうち、最大のヌナブト準州では、複数のコミュニティーを相互に結ぶ道路がなく、生鮮食品は週に2回の空輸に依存せざるを得ない。永久凍土と、ほぼ1年を通じて氷点下になる気温のため、農作物の栽培はほぼ不可能だ。
新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)と、ロシアのウクライナ侵攻がもたらしたサプライチェーンの混乱を受け、貧困国における食糧事情はさらに悪化した。ヌナブト準州での状況は、小麦・豚肉の輸出量で世界第3位であるカナダのような富裕国でさえ、貧困地域では被害が生じていることを示している。
ヌナブト準州の州都イカルイトの店舗ではこのところ、チェリー1袋が21カナダドル(約2200円)、ボトル入り飲料水6本パックが19カナダドル(約2000円)で販売されている。いずれも、同国南部の2倍の価格だ。ソフトドリンク12缶入りパックは27カナダドルで、南部の3倍に上る。
イカルイトに住むナサニエル・シュイナードさん(35)によれば、従来であれば6人家族の食費は2週間で500カナダドルだったという。だが今年1月以降、支出は2週間ごとに150カナダドルずつ増えた。
警備会社とIT企業を掛け持ちで働くシュイナードさんは「これまでより長時間働いて、何とかやっている」と語る。「家族と過ごす時間は減っているが」
イカルイトで困窮者に無料の食事を提供している、いわゆる「スープキッチン(炊き出し)」のカジュクトゥルビク食品配給センターによれば、今年6月までに提供した食事は2万食分。すでに、昨年1年間の回数に達してしまった。
同センターでエグゼクティブ・ディレクターを務めるレイチェル・ブレイス氏は「国内北部での食料不安により、すでにカナダ史上で最も長期にわたって、公衆衛生上の緊急事態が宣言されている」と語る。
「この7カ月で需要が急増しているのが心配だ」
ヌナブト準州のマーガレット・ナカシュク家庭サービス担当相は、食料不足のために子どもらは学校での勉強に悪影響が出ているほか、侵入窃盗を中心とする犯罪が増大していると言う。
<「コストは増大」>
カナダ北部での食品価格の上昇について、定量的な把握は難しい。国内統計局による北部準州地域でのインフレ測定は、主要都市3カ所における物価上昇を試算するだけに留まり、生鮮食品やエネルギーなどを除いた詳細な内容はない。
イカルイトの消費者物価指数は年初以来2倍に上昇し、インフレ率は6月には4.3%に達した。これはカナダ銀行(中央銀行)の目標である2%を大きく超えている。カナダ全土でのインフレ率8.1%よりはかなり低いが、その理由は主として、ヌナブト準州政府が価格高騰の前に燃料を一括購入していたためだ。
この地域は長年にわたり食料不足に苦しんできた。統計局が2020年に行った調査によれば、2017-18年に同準州の世帯のうち57%が食料不安に悩まされており、カナダの州・準州の中で最悪の水準だった。「食料不安」とは、世帯に必要な種類もしくは量の食料を買う経済的な余裕がない状態と定義されている。
カナダ北部地域は連邦政府の食料補助金「ニュートリション・ノース」の支給対象となっている。これにより、北部地域における一部のコミュニティーにおいて特定の食品価格は引き下げられているが、カジュクトゥルビクのブレイス氏によれば、それでも不平等の是正はできていないという。
この地域は水産資源に富んでいるが、その恩恵を直接受けることもできない。沖合ではターボット(大型のヒラメ)やエビが獲れるが、漁獲量の95%以上は輸出向けだ。ヌナブト漁業協同組合でエグゼクティブ・ディレクターを務めるブライアン・バーク氏は、同準州には水揚げのできる深水港もなければ、沿岸に近い経済的な漁場を特定するための研究も行われていないと言う。
政府は4000万カナダドルを投じて同準州初の深水港を建設すると約束しているが、完成は数年先になる。
「スープキッチン」を率いるブレイス氏は、同準州の住民からは、小売店が不当に高い価格をつけているのではないかと疑う声もあるという。
昨年、北部最大の食料品チェーンの1つであるノースウェスト・カンパニーは、2019年に比べて純利益が82.5%増加したと報告した。もっともこれは、パンデミック中に消費者の購入量が増えたことを反映したもので、ノースウェストで国内店舗運営担当バイスプレジデントを務めるマイク・ボーリュー氏は、同社の利益率は南部の食料品店チェーンと変わらないという。
ボーリュー氏によれば、ヌナブト準州の食料価格が高くなる最大の要因は空輸コストであり、過剰包装の削減や賞味期限を延長する規制によりコストが下がる可能性がある。
たとえば箱入りシリアル食品の場合、箱の中身の3分の1はただの空気である場合が多い。食品によっては賞味期間が過度に短く設定されているため、実際には長持ちするという。
イカルイトのケニー・ベル市長は、価格上昇は食品会社の責任ではないと語る。
「ここでの事業には本当にコストがかかる」とベル市長は言う。「しかも事業コストは確実に増大している」
(Rod Nickel記者、翻訳:エァクレーレン)
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