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概要:米連邦準備理事会(FRB)や他の中央銀行は、何としても1970年代型の「賃金・物価スパイラル」を回避しなければとの思いに取りつかれている。だが先週発表された最新の米国内総生産(GDP)統計からは、インフレ高止まりリスクはもう少し複雑な性格をしていることが読み取れる。
[オーランド(米フロリダ州) 1日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)や他の中央銀行は、何としても1970年代型の「賃金・物価スパイラル」を回避しなければとの思いに取りつかれている。だが先週発表された最新の米国内総生産(GDP)統計からは、インフレ高止まりリスクはもう少し複雑な性格をしていることが読み取れる。
米FRBや他の中央銀行は、何としても1970年代型の「賃金・物価スパイラル」を回避しなければとの思いに取りつかれている。だが先週発表された最新の米GDP統計からは、インフレ高止まりリスクはもう少し複雑な性格をしていることが読み取れる。
私はこれから持ち出す問題を「企業利益・物価スパイラル」と呼びたい。
多くの尺度に照らせば、米国の労働市場は過去数十年で最も堅調と言える。そして労働力は、企業の単独の生産投入要素としては最大である以上、政策担当者が「過度の」賃金需要がインフレを引き起こしたり、さらに加速させたりするのを恐れる気持ちは正しい。
しかし企業利益というプリズムを通して見ると、米企業も、特に大企業は実にしっかりした状態にあることが分かる。今年第2・四半期に米企業は過去最高、ないし半世紀ぶりに近い水準の利益を計上した。
これもまたインフレの脅威ではないか。ところが政策担当者からは、賃金と物価が連鎖的に上昇するリスクほど、企業利益を巡るインフレの危険性を警告する声は聞こえてこない。
労働者への分配と企業の内部留保の綱引きにおいては、過去30年にわたってGDPに占める内部留保比率が高まってきており、こうした流れは目新しくないし、政治問題でもない。
ただ物価上昇率が40年ぶりの高い伸びになっている今は、政策担当者にとって1つの課題として浮上してきている。インディペンデント・アドバイザー・アライアンスのクリス・ザッカレッリ最高投資責任者も、FRBが検討すべき事象だと説く。
ザッカレッリ氏は「企業利益の増加が間接的にFRBの利上げを促すのは間違いない。物価があらゆる分野で上昇し、企業利益が高水準で推移する限り、直接的にインフレの高まりにつながる」と指摘した。
第2・四半期GDPに占める企業利益の比率は12.25%と、1950年以降で最も高くなった。非金融企業の粗利益率は15.5%で、1960年代からの期間で最高だった昨年の水準に迫っている。
名目企業利益が過去最高になったのもさほど驚きではないだろうが、それでも2兆ドルの大台を突破したのは注目される。
折しも米国の労働需給は数十年来で最も引き締まっている。失業率が足元の3.5%より低くなったのは直近でも50年余り前で、現在は失業者1人当たり約2件の求人がある。
労働者のストライキや賃上げを巡る労使紛争について米国は欧州に比べれば発生の確率は低いが、FRBは賃金の伸びが物価上昇率と一致するのを歓迎しないだろう。まして賃金が物価を超える上昇ペースになるのはもっと嫌がりそうだ。
FRBは、そうした賃金上昇は2つのうちどちらか1つの事態をもたらすと主張するとみられる。いずれのケースも、物価安定と雇用最大化というFRBの使命には反する。1つは企業が賃金上昇を消費者に転嫁してインフレが加速、もう1つは企業が単純に人員を削減するという展開だ。
<不公平なしわ寄せ>
米企業の価格決定力を抑制する上では財政政策の方が適している。元労働長官でカリフォルニア大学バークレー校教授のロバート・ライシュ氏が指摘するように、バイデン政権は最近成立させた法令で自社株買いに1%課税する仕組みと、法人税に最低税率を導入した。
ライシュ氏は、これでは踏み込み不足と批判しつつも、思いがけない利益への課税や物価統制、法人税率引き上げ、富裕層向け課税や独占禁止法運用の強化はワシントンで猛反対を受けると認めている。
強力な財政措置が講じられないとすれば、厄介な仕事はFRBの金融政策に委ねられる。FRBは雇用に打撃を与え、景気後退の原因となりかねない政策金利の引き上げに動くしかない。
ライシュ氏はロイターに「利上げはFRBが有する唯一のインフレ対策手段だ。問題はその負担の大部分が平均的な労働者層と貧困層に集中することだ」と語った。
ただFRBの情報発信が、企業の価格設定よりも賃金上昇圧力を巡るリスクを重視しているのはほとんど疑いの余地がない。
FRBが7月26─27日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨は、「賃金」に7回、「労働市場」に17回、「雇用」に8回も言及があった半面、「利益」はゼロだった。
パウエルFRB議長による7月27日の会見の発言記録も、「賃金」に9回、「労働市場」に38回、「雇用」に15回も触れたが、「利益」「企業」は一言もない。
企業利益の過熱感を止めるという面で、政治が消極的になり、FRBはその力が乏しいとしても、経済が自律的に作用するかもしれない。
金融環境が引き締まれば、経済活動と需要は鈍り、必然的に企業利益の伸びは緩やかになって利益率も低下していく。
ソシエテ・ジェネラルの株式アナリストチームは1日、「企業利益の伸びは減速してゼロに向かっている。これは利益率に下げ圧力が働くことを意味し、現時点で今年は利益率が5%低下するというのがコンセンサス予想だ」と記した。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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