トラス英首相、8日にエネルギー費対策発表 財政圧迫懸念でポンド下落

[ロンドン ７日 ロイター] - トラス英首相は７日、エネルギー価格高騰に対応する家計・企業向け支援計画の詳細を８日に発表すると表明した。インフレ抑制の効果があるとみられる一方で、政府の借入額が１０００億ポンド（１１５０億ドル）以上増える見込みとなった。

通貨ポンドは、対ドルで１９８５年以来の安値に沈んだ。エネルギー費対策を賄うために必要となる国債発行の規模や、トラス氏が公約している減税を巡る財政圧迫懸念がポンド売りの一因となった。

関係筋はロイターに対し、トラス首相はエネルギー価格の凍結を検討しており、関連費用は１０００億ポンド規模になる可能性があると述べた。

ドイツ銀行はエネルギー費対策と減税計画による財政負担が１７９０億ポンドに上る可能性があると指摘。新型コロナウイルスの世界的大流行（パンデミック）を受けた同国の記録的な公的支出の半分程度に相当する。

トラス首相は一方、エネルギー費対策の一部をエネルギー企業への増税で賄うべきとする野党・労働党の主張に否定的な見解を示した。「超過利潤税課税には反対だ。企業に対し、英国への投資を思いとどまらせることは間違いだ」と議員らに語った。

クワーテング財務相は、家計や企業を支援し、減税を賄うために短期的に借入金は拡大する見通しとし「われわれは断固かつ異なるやり方で物事に対処する必要がある。つまり、残っている資源を再配分するのではなく、企業投資をいかに引き出し、英経済の規模を拡大させるかに絶えず焦点を置く必要がある」と強調した。

ポンドは１．１４０７ドルまで下げ、対ユーロでも約１％下落した。

ポンドの下落は物価上昇圧力を高める可能性があるが、エネルギー価格を凍結すれば、生活費高騰による家計への圧力は和らぐ公算が大きい。

イングランド銀行（英中央銀行）のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏はトラス新首相が目指す計画について、インフレ率を鈍化させる可能性があるものの、金利への影響を語るのは時期尚早だと述べた。

同氏はまた、政府支出の急拡大によって、物価を押し上げるほどの需要喚起効果が出ることは中銀として阻止する考えを示した。

ただ、中銀の次回９月１５日の政策決定会合について、市場が織り込む７５ベーシスポイント（ｂｐ）利上げの確率は７日の市場で８０％程度から６０％に低下した。