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概要:今回の総合経済対策に伴う利付国債発行増は少額にとどまった。1年分の所得税収と消費税収の合計に相当する額の財政支出となるが、財投債の減額や借換債の前倒し発行分の活用に加え、割引短期国債(短国)の増額で賄うためだ。ただ、償還までの期間が短い債券の増加は、金利上昇時に利払い費が膨らむことになりかねないと、金融市場では懸念も出ている。
[東京 8日 ロイター] - 今回の総合経済対策に伴う利付国債発行増は少額にとどまった。1年分の所得税収と消費税収の合計に相当する額の財政支出となるが、財投債の減額や借換債の前倒し発行分の活用に加え、割引短期国債(短国)の増額で賄うためだ。ただ、償還までの期間が短い債券の増加は、金利上昇時に利払い費が膨らむことになりかねないと、金融市場では懸念も出ている。
償還までの期間が短い債券の増加は、金利上昇時に利払い費が膨らむことになりかねないと、金融市場では懸念も出ている。
<多様な財源を総動員>
総合経済対策は事業規模71.6兆円、財政支出39.0兆円の大型パッケージとなったが、2022年度第2次補正予算で新規に必要とされる財源は意外なほど小さい。利付国債では2年債が23年1月債から1000億円増えるだけで、当初比では3000億円の増額にとどまる。
経済対策への歳出追加に伴う予算ベースの新規国債発行額は22.9兆円増えるものの、財投債の減額や借換債の前倒し発行分を活用することなどで国債発行額は9.7兆円の増額に抑制。さらに前年度の特例国債の発行減少等で5.2兆円の枠が出来たため、市中向けの発行総額は4.5兆円の増額で済むためだ。
さらに短国を4.2兆円発行することで利付国債の発行を抑えている。短国は新型コロナ禍以降、急増しており、20年度の短期債(1年以下)は前年度の21.6兆円から82.5兆円に急増。22年度当初予算では60.4兆円に縮小していたが、今回の補正で64.6兆円に膨らむ。
ただ、教育や医療、福祉、ODA(政府開発援助)などに使われている財政投融資を大幅に削減するのは現実的に難しい。借換債の前倒し発行分を使いすぎれば、将来の発行増につながる。短国が大規模に発行できるのは、日銀当座預金残高にマイナス金利が課せられている金融機関に購入ニーズがあることも一因だ。大型補正予算の財源が今後も豊富にあるわけではない。
<超長期債は需給軟調で受け止めれず>
本来なら、償還までの期間が長い利付国債を発行した方が、国の財政は安定する。しかし、足元の20年や30年など超長期債の市場環境は軟弱で、「大量の発行増を受け止められる状況ではない」とJPモルガン証券の債券調査部長、山脇貴史氏は指摘する。
現在の超長期債発行額は、流動性供給入札を含め月平均2兆7000億円。一方、日銀の超長期国債買い入れオペは月1兆0500億円でカバー率は約38%。10年債の81%や5年債の76%と比べ低く「グリップ力」は弱い。民間の主要な買い手である生損保は金利が急上昇した上期、前年同期比12%減の買い越し額にとどまった。
日銀のイールドカーブコントロール政策(YCC)では、超長期金利は操作の対象ではない。長めの金利の動きを自由にしておくことで市場機能を維持するが、超長期金利が上昇しすぎて10年金利の操作に支障が出るような場合は、買い入れ額を増やす方針をとっている。
ただ、10月25日に開催された国債投資家懇談会では、日銀のYCC政策(指し値オペ)の影響で、先物のヘッジ機能が低下し、超長期債を買いにくくなっているとの指摘が出ていた。今回、超長期債ではなく、2年債や短国が増発対象に選ばれたのは、そうした意見も参考にされた可能性がある。
一方、パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は、海外金利の急上昇が超長期債軟調の最大の要因とみる。「超長期債を7年ゾーンの先物でヘッジするニーズはそれほど大きくない。日銀のせいではない」との見方を示している。
<イギリスを想起との声も>
足元で進む財源の短期化はリスクを高める。東短リサーチの加藤出社長は、日本は金利上昇時に利払いが急激に膨らむ脆弱な構造になってきていると警告する。「日銀が膨大な量の長期国債を買い取って、それを日銀当座預金に変換していることで、日本の統合政府(政府と中央銀行)の対民間債務の平均残存期間は大幅に短期化している」と指摘する。
金利上昇局面でも、発行済み国債の利払い費は増加しない。しかし、償還1年以内の短国を借り換える際は利払いが膨らむ。景気回復に伴う金利上昇なら、税収も増え、国債発行量を減らすことができるかもしれないが、リスクプレミアムが高まる形の金利上昇であれば、それは難しくなる。
国際通貨基金(IMF)の推計では、人口100万人以上の先進国で22年の財政収支が前年より悪化する国は29国中、日本を含め5カ国しかない。新型コロナ拡大前の19年と比較して、政府債務残高の対GDP(国内総生産)比が最も増加するのも日本だ。これらの推計は今回の補正予算を含んでいない。
民間の資金需要が乏しい昨今の日本では、政府が需要を作り出す必要があり、資金が余っている民間金融機関も国債等で運用するニーズがある。しかし、世界各国がコロナ対応を一巡させ、財政を縮小させる中で、巨額な経済対策を続ける日本は異色に映る。「日本の景気は世界でみて良い方だ。その中での財政拡張政策は、批判を浴びて金利が急上昇したイギリスを想起させてしまう」とパインブリッジの松川氏は話している。
(編集:石田仁志)
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