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概要:2023年、転職市場はどのような様相を見せるのでしょうか。採用が伸びる分野、働き方などのトレンドは? 過去30年で「ここまで採用ニーズが高い状況は経験したことがない」と言う転職エージェントの森本千賀子さんが、2023年の転職市場のトレンドを予測します。
Ezra Bailey/Getty Images
あけましておめでとうございます。今年も皆さまにとって、キャリアがよりよい方向へ発展する1年となりますよう、心からお祈りいたします。
新年第1回目となる今回は、2023年の転職市場の展望をお話ししたいと思います。2022年の動きを振り返りつつ、今後の予測をお伝えします。
中途採用市場はコロナ禍から速やかに回復し、活況
マクロの視点からお話しすると、中途採用市場は非常に活況です。
私は約30年にわたって人材ビジネスを手がけてきましたが、ここまで採用ニーズが高い状況はいまだかつて経験したことがありません。毎月40~50社から新規の人材紹介依頼が押し寄せている状況です。
この動向はデータにも表れています。有効求人倍率の推移を示した下図をご覧ください。
(出所)厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の「第3表 有効求人倍率」のデータをもとに編集部作成。値は1970〜2021年の有効求人倍率(年度平均、パートタイムを含む一般)。
2008年のリーマンショック直後に0.45倍まで下がったものの、以降は右肩上がり。コロナ禍の直前には1.62倍に達しました。これはバブル期の1.43倍を上回る高さです。
コロナ禍で多くの企業が採用をストップし、2020年には1.10倍まで落ちたものの、徐々に採用が再開され、2022年11月には1.35倍まで戻りました。2023年はさらに高まっていくと予測されます。
リーマンショック後よりも求人の復活が早かった理由としては、以下の要因が挙げられます。
「リーマンショック」の教訓を活かした
突然不景気に見舞われたリーマンショックとは異なり、経済は健全な状態。しかも、リーマンショック時の教訓から内部留保を増やしていた企業が多く、安易な人件費カットに走ることもありませんでした。
リモートワークのインフラも整っており、事業活動を継続できると判断。観光・外食業などコロナの影響を受ける業種以外では、大幅な業績悪化を懸念することもなかったと言えるでしょう。
「コロナ融資」で資金を調達
政府主導で実質金利ゼロの融資が実施されたことにより、通常ならベンチャーキャピタルなどの出資を受けられないような企業でも億単位の資金調達に成功していました。
コロナ禍により発展した業種があった
事業活動のオンライン化により「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が加速。テレワークの支援やデジタルを活用した新たな事業創出など、「攻め」の戦略をとった企業が採用を強化しました。
将来を見据え、経営戦略として「採用」を重視
「アメリカではリセッション(景気後退)によるレイオフのニュースをよく見ますが、これから日本もそうなるのでしょうか」——そんな質問をいただくことがあります。
しかし日本の状況はアメリカと異なります。
日本では労働人口が減少へ。パーソル総合研究所が発表した2030年の労働市場の未来推計によると、2030年、7073万人の労働需要に対し供給は6429万人で、644万人が不足すると試算されています。
少子化に伴い、若手人材の確保もますます難しくなっていきます。
外国人人材の活用も、アメリカと比べると言語や文化の問題から受け入れが難しい状況です。
そこで、多くの企業が中長期視点で「人材採用」を重要な経営戦略に据え、採用活動の手を緩めていないのです。
これまでマーケティングを重視して予算を投じていた企業で、「顧客から問い合わせや注文があっても、対応できる営業やカスタマーサクセスがいない」と、予算をマーケティングから採用へ回す動きも見られます。
こうした背景が絡み合い、2023年も採用市場は活況が続くと見込まれます。
ではここからは、今年注目の動向をお伝えします。
企業の「DX」を支援する業種・企業が大量採用
近年、最も採用ニーズが高いのが「DX」を推進する人材。しかし、多くの企業が希望に見合う人材を採用できていない状況です。
それでもDXは進めなければならない……となると、頼るのはコンサルティングファームやSIer(システムインテグレーター)。ニーズ高騰を受け、コンサルティングファームやSIerでは数百~数千人単位の採用計画を立てており、コンサル・エンジニア未経験者も受け入れています。
また、SES(System Engineering Service:システムエンジニアリングサービス)も活況です。SESとは、クライアント企業に対して労働力を提供する契約形態のこと。自社で雇用した社員をクライアント企業に派遣したりプロジェクトを一括受託したりする業態です。IT未経験者も受け入れ、自社でリスキリング(学び直し)・育成しています。
また、クラウド上でソフトウェアサービスを提供する「SaaS」企業の採用も継続しています。
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「インバウンドビジネス」が復活へ
外国人観光客の受け入れの規制も緩和され、再び訪日旅行が増加し始めました。
宿泊・観光業をはじめ、インバウンド消費の取り込み図る小売・サービス・外食業界などでも求人が増えるでしょう。
「女性活躍」がさらに進む
2015年頃から話題に上がっている「女性活躍推進」。2023年にはこの動きがさらに進むのではないかと私は思っています。
コロナ禍以降はリモートワークが定着し、育児とも両立しやすくなりました。副業・兼業の拡大でフリーランスとしての働き方も選択できるなど、活躍の幅が広がっています。
また、女性活躍推進施策で女性の登用を進めた企業が、女性の仕事ぶりや能力を高く評価し、さらなる活用への意欲を見せているケースも見られます。
ちなみに、「欧州赴任」を経験したことがある経営者は、女性が当たり前に活躍している社会に触れているため、女性に期待してチャンスを提供する傾向が見てとれます。
「第二新卒採用」に再燃の見込み
コロナ禍では、多くの企業が「即戦力採用」にシフトしました。
先行きが見えない状況で採用人数を絞ったため経験者を優先したこと、未経験者を採用してもリモートワーク下では教育が難しいことなどがその理由です。
しかし、経験者はさらに採用難易度が上昇。一方、「出社」に戻すことで教育もしやすくなるため、未経験者の採用が復活しています。
リモートワークを継続する企業であっても、ここ2~3年で「eラーニングの活用」「オンラインでの研修・オンボーディング・1on1」など、若手育成のノウハウが蓄積されました。
育成環境が整った2023年は、第二新卒の採用も再燃しそうです。
シニア層の活躍も加速
シニア人材を受け入れる企業が増えています。
実際、私は2022年、50代後半~60代の方の転職サポートを複数手がけました。
「人生100年時代」と言われる今、60歳の定年退職をもって職業人生を引退しようとする方はほとんどいません。
引退どころか、これまでの経験を活かして活躍する方も多数。その様子を目にした企業では、シニア人材の活躍への期待も高まっています。
シニア層の採用市場も、今後拡大していくと感じています。
「副業者」や「副業を経ての転職者」が増加へ
一方、働く個人はどう動いているのでしょうか。
私の感触では、2022年、「今いる会社だけでコツコツ頑張っていこう」という人が少なくなりました。
「第2・第3のキャリアの選択肢」を持っておこうと考える人が増え、「副業」が常態化。転職相談に来られた方の職務経歴書を拝見すると、ほとんどの方が何らかの副業を経験されているのです。
社員の副業を解禁する企業、副業人材を抵抗感なく受け入れて活用する企業も増えています。
副業といえば、かつては「副収入を得る手段」でした。しかし、副業・兼業元年と言われる2018年ごろから顕在化した「副業2.0」では「自身のスキルを活かしつつ、さらに磨く手段」となり、今現在の「副業3.0」では「本業ではできない『やりたいこと』をする手段」「新たなキャリアを築く手段」に進化しています。
2023年以降は、副業を活用してスキルアップしたり、本当にやりたいことを見つけたりした人が転職を実現させていくのではないでしょうか。
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大手からベンチャーへの転職の「障壁」が消える
副業の一般化は、転職先の選択肢の変化にもつながっています。
最近、大手企業からベンチャー企業・スタートアップに転職する例が増えているのです。
以前は、大手からベンチャーに転職を考えても、「年収ダウン」となるために断念するケースが多くありました。
しかし、ベンチャー企業の多くは「副業・兼業OK」。正社員としての給与は下がっても、「副業の収入で補えばいい」と、ベンチャーへの転職に踏み切っているのです。
また、いきなりベンチャーに転職するには抵抗のあった大手企業出身者の方が、副業からスタートし、やりがいを見出し、結果としてベンチャー企業・スタートアップに転職する事例も増えました。
大手企業の終身雇用が崩れつつある今、大手からベンチャーへの人材流動は、さらに進むと見込まれます。
VUCAの時代にあって、コロナパンデミックにより社会構造の変化・進化が劇的に加速しました。さらに、日本の労働力不足が必至となるなか、かつてないほど採用環境が活発化すると予測しています。
この環境を自身のキャリア開発においての好機ととらえ、世の中のトレンドを敏感にキャッチしながら、「キャリア自律(変化する環境において、企業や組織に依存するのではなく、自らのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むこと)」を目指しましょう。
自身のキャリアに向き合い、キャリアの方向性を常に見つめ直すことをお勧めします。
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※転職やキャリアに関して、森本さんに相談してみたいことはありませんか? 疑問に思っていることや悩んでいることなど、ぜひこちらのアンケートからあなたの声をお聞かせください。ご記入いただいた回答は、今後の記事作りに活用させていただく場合があります。
※本連載の第94回は、1月16日(月)を予定しています。
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。
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