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概要:米欧日の中央銀行が金融政策を決定する会合が、6月中旬に相次いだ。この「中銀ウィーク」で明らかになったのは、要約すれば「米連邦準備理事会(FRB)は市場が想定していたよりもややタカ派」で、「欧州中央銀行(ECB)は市場が想定していた通りにタカ派」である一方、「日銀は引き続きハト派」だということだった。
[東京 27日] - 米欧日の中央銀行が金融政策を決定する会合が、6月中旬に相次いだ。この「中銀ウィーク」で明らかになったのは、要約すれば「米連邦準備理事会(FRB)は市場が想定していたよりもややタカ派」で、「欧州中央銀行(ECB)は市場が想定していた通りにタカ派」である一方、「日銀は引き続きハト派」だということだった。
6月27日、米欧日の中央銀行が金融政策を決定する会合が、6月中旬に相次いだ。写真は日本円と米ドルの紙幣。3月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)
<円安けん制発言の意図>
そうした認識に沿う形で、金融政策のベクトルに注目して動く傾向が強い為替市場では、ドル/円が143.87円、ユーロ/円が156.93円を一時つけるなど、円安の進行余地を探る動きが続いた。
このため日本の通貨当局者から、けん制色を帯びた発言が出てくる場面が増えつつある。財務省の神田真人財務官は26日、最近の為替相場の動きは「急速で一方的だ」とコメント。「高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては適切に対応したい」「行き過ぎた動きには、どのようなオプションも排除しない」と述べた。
今年2月にインド・ベンガルールで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、終了後に発表された議長総括の中に「我々は、2021年4月の為替相場についてのコミットメントを再確認する」(財務省仮訳)という一文を含んでいた。
そして、この21年4月のコミットメントの中には「為替レートの柔軟性は経済の調整を円滑化しうることに留意する。(中略)我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する。我々は、通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない」(同)という文言が盛り込まれていた。
要するに、為替相場の特定の水準を守ろうとするような「水準介入」の実施は、自国製品の輸出競争力を高める狙いの通貨切り下げ的な色彩を帯びるので許容されない一方、「過度な変動や無秩序な動き」は経済・金融の安定を阻害するので、そうした相場の不規則な変動を落ち着かせてならす狙いからの介入である「スムージングオペ」は許容されるということである。鈴木俊一財務相や神田財務官による記者団とのやり取りは、この原理原則をしっかり頭に置いた上でのものになっている。
<前回と異なる介入警戒水準>
上記の点をあらためて確認した上で考えると、昨年9月22日に日本の通貨当局がドル売り・円買い介入を実施し始めたとみられる水準である145.90円になれば、そこで介入がすぐ入ると考えることには、無理があるとみるべきだろう。
仮定の話として、この水準にドル/円相場が到達する直前の相場変動のスピードが急速であり「過度な変動」に該当すると解釈できる場合であっても、昨年9月と同じ水準で介入が行われる場合には、そこに「防衛線」があるという誤解が為替のプレーヤーの間で広がりやすくなるだけでなく、米国の財務省当局者から不要な疑念を抱かれかねない。
エコノミストを含む市場の側では、仮に日本の通貨当局がスムージングオペ実施を本格検討するとしても、それは大きな節目である150円前後までドル高・円安が進んでいく場合ではないかという予想が目立つ。
もしも、相場実勢が150円ラインを一気に超えていく場合には、昨年10月21日に記録した151.94円(直近のドル高・円安ピーク)が単なる通過点になる方向で「過度な変動」が増幅されかねないという警戒感が、政府・与党内で強まりやすいと考えられるからである。
<円安・株高、政府の思惑とYCC修正の関係>
では、昨年秋の「超円安」局面と比べた場合、今回の「円安再加速」には、どのような特徴があるのだろうか。メディア上で市場関係者のコメントがすでにいくつも出ているテーマだが、ここであらためて整理しながら筆者の見解を加味すると、以下の3点になる。
1)今回の「円安再加速」は「33年ぶりの日本株高」とセットである、2)昨年の夏から秋と異なり、「悪い円安」論が今回は目立たない、3)円安は、インバウンド回復によるサービス業や地方経済へのメリットが目立つ──と指摘できる。
上記の3点はいずれも、日本の通貨当局者が焦って為替介入に動かなくてもよい方向に作用する話である。特に1)は、非常に重要とみる。
通常国会で衆院解散に動かなかった岸田文雄首相はおそらく、内閣支持率の回復が前提ではあるものの、秋の臨時国会で解散権を行使する機をうかがうことになるだろう。いずれにせよ、2024年9月の自民党総裁選までは、与野党ともに衆院選にらみの臨戦態勢になる。
そうした時間帯に株価が上昇して歴史的な高値圏にあるというのは、政府・与党にとってみれば、実にありがたい話である。なぜなら、海外投資家が中心ではあるものの、マーケットが日本のマクロ経済・企業業績の今後に期待して「買い」に動いてくれていると解釈できるわけであり、経済政策運営への評価は「合格点」だと、政府・与党は堂々とアピールできるからである。
このように考えると、円安を止める狙いから政府・与党が日銀に圧力をかけて、円の市場金利が上昇する方向の異次元緩和の修正を促すといったシナリオは、実現する可能性が(少なくとも現時点では)低いという結論になる。
万が一、日銀が金融政策正常化の方向で7月や10月にサプライズ的に動くことによって、選挙前の時期帯に日本の株価が急反落するようであれば、政府・与党にとって政治的にネガティブということになるだろう。
また、前回の本欄でコメントした通り、米欧利上げ局面の「延長戦」的な最終盤で市場のプレーヤーがドルやユーロを対円で買い上げるにしても、自ずと限界があるだろう。したがって、日本の通貨当局が為替相場への対応で「待ち」の姿勢をとることには、一定の合理性がある。
中央銀行の利上げがこの先過剰に行われることによる景気の腰折れ(さらには早期の利下げへの転換)が警戒されている英ポンドの上値が重いことは、示唆に富む。
編集:田巻一彦
*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。
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