简体中文
繁體中文
English
Pусский
日本語
ภาษาไทย
Tiếng Việt
Bahasa Indonesia
Español
हिन्दी
Filippiiniläinen
Français
Deutsch
Português
Türkçe
한국어
العربية
概要:日本人起業家の内藤聡さんが米国で創業した「Anyplace」が、合計1000万ドルの資金調達を実施しました。このうち200万ドルは、経営破綻して買収されたSVBからの融資です。
3月に経営破綻し、ファースト・シチズンズ・バンクの傘下に入ったシリコンバレーバンク。スタートアップのメインバンクとも言える存在で、VCや企業が一斉に預金を引き上げたことが破綻の一因となった。
出典:REUTERS
起業家の内藤聡さん(33)が米国で創業したホテルやサービスアパートメントの賃貸サービス「Anyplace(エニープレイス)」が、シリーズBラウンドで合計1000万ドル(約14.3億円)の資金調達を実施した。
この内800万ドルは、シリコンバレーの著名投資家ジェイソン・カラカニス(Jason Calacanis)氏のファンドやCapitalX、三井住友海上キャピタルなどを引受先とした第三者割当増資。200万ドルはあのシリコンバレーバンク(SVB)からのベンチャーデットだ。
SVBは3月に経営破綻し、米東部の地方銀行ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズグループが買収した。現在はファースト・シチズンズ・バンクの一部門として経営を続けている。
異例のスピード破綻となったSVBから、それでも融資を受けた理由は何か。内藤CEOに聞いた。
「資金の100%預ける」にサイン
内藤聡CEO。自身もAnyplaceの物件に住まい、サンフランシスコを拠点にしつつ、他都市の物件も転々としている。
オンライン画面をキャプチャ
「2023年3月の上旬に、会社の資金を全額SVBの口座で管理するという内容のタームシートにサインしたんです。その週末に例の取り付け騒ぎが起こりました」
内藤さんはこう振り返る。
「SVBはそうしてスタートアップの預金を増やしていったので、それ(会社の資金を100%SVBに預けること)は当時スタンダードで、特別なことではありませんでした。
サインはしましたが、まだ口座も作っていなければ資金も移していなかったので、弊社としては『ギリギリセーフ』でした。ただ、その時SVBはつぶれると思っていて、この話自体がなくなると思ったんです」
3月末には、米東部の地方銀行ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズグループがSVBを買収することが発表され、SVBはファースト・シチズンズ・バンクの一部門として存続することになった。
「破綻から2~3週間はこの話は止まっていたのですが、買収が決まった後に改めて電話で話をすることになりました」
もっと知る
シリコンバレー銀行破綻を解説…なぜ起こったのか、今後はどうなるのか
Advertisement
SVBが魅力的な理由
ベンチャーデットは通常の融資と異なり、エクイティ(資本)とデット(負債)を組み合わせた資金提供方式だ。エクイティを補完する役割を持ち、金額は直近のエクイティ調達額の2~3割程度が相場とされる。
経営破綻し、リスク管理の甘さも指摘されたSVBから、それでもなおベンチャーデットを受けたのはなぜなのか。
内藤さんは主に三つの理由を挙げる。
一つは、担当者の知識の高さだ。
「トラディショナルな銀行のデットファイナンス部門の人よりも、SVBの担当者の方がスタートアップに詳しく理解も早いんです。Anyplaceと同業のスタートアップにも融資していることもあって、事業内容やマーケットの成長具合にも詳しく話がトントン拍子で進みました。SVBの人と話すと、本当に銀行家っぽくないんです。やっていることは銀行業務ですが、働いている人はVCの投資家のようでした」
二つ目は少額でも融資が受けられることだ。
「トラディショナルな銀行のデッドファイナンスは500万ドル以下はやらないところが多いです。 一方で、今回弊社が200万ドルの融資を受けたように、SVBは少額でもスタートアップと継続的に関係を築いて一緒に成長してきた経緯のある銀行です」
最後に金利の低さを挙げる。内藤さんによると、他銀行のベンチャーデットの金利は10%超が当たり前の中、SVBの金利は8~9%だという。
「他の銀行やファンドとも話した結果、やっぱりSVBがスタートアップに人気だった理由が分かりました」(内藤さん)
今は「ある意味一番安全な銀行」
ベンチャーデットを受けるにあたっての不安や、今回のラウンドに参加した投資家からの反発はなかったのか。
内藤さんは「特別なかった」と明かす。
「SVBは買収慣れしているファースト・シチズンズ・バンクの傘下に入りましたし、政府の監督下にも置かれ、ある意味一番安全な銀行という雰囲気もありました。また、SVBとファースト・シチズンズバンクの財務健全性に関する資料をもらって、融資事業を継続できるぐらい安定した資産量があることを説明してもらいました。それをファンドの人たちも共有したので、特に反対はなかったですね」
ただ、タームシートの内容は見直した。
「会社の資金を100%預けるという条項は、半分に減らしました。本当はこの項目は撤廃したかったのですが、SVB側もリスクを取っている分、譲れないという事でこの比率で決着しました。株式取得(新株予約権)の比率も、当初の0.15%から0.125%に下げてもらいました」
という。
もっと知る
ゴールドマン・サックスはシリコンバレー銀行を救おうとしたが、できなかった。何もかもが失敗だった
物件数を1年で2倍に
Anyplaceの管理する部屋。ジムやプールがついているホテルなど、長期滞在に向いている物件を中心に仕入れているという。
内藤さん提供
調達資金は事業拡大に充てる。
Anyplaceは現在、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンディエゴの4都市で約100物件を管理している。この数を、1年以内に200件と倍増させるのが目標だ。
「今回の資金を使って、4都市に物件をどんどん広げていきたいです。米国の主要都市では基本的にAnyplaceの物件がある状態に持っていきたいと考えています」
同社が扱う物件は、デスクやモニター、高速Wi-Fiなどが揃い、リモートワークに適していることが特徴。長期出張者や、コロナ禍で増えたデジタルノマドワーカーのニーズを捉え、稼働率は80%を超えている。
グーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、スナップ(Snap)など大手テック企業ではオフィス回帰の流れもあるが、
「実際、ほとんどの会社は在宅勤務を続けているのが現状です。在宅勤務を機に家族で引っ越している社員がいたり、リモートワークを続けた方が、居住地を問わず全米から優秀な人材を採用できたりするメリットもあります。もちろん一部はオフィスに戻っていくと思うので、その影響は受けるかもしれませんが、リモートを続ける会社だけでも大きなマーケットは生まれている印象があります」(内藤さん)
不動産サービス会社CBREの調査によると、米国のオフィス空室率は17.8%に上昇し、ここ30年で過去最高となった。在宅勤務の浸透もその一因と言える。
市況「ITバブル以来の悪さ」
Anyplaceの従業員。
内藤さん提供
Anyplaceの年間売上ランレートは430万ドル(約6億円)で、前年比で約3倍伸びた。
従業員数は25人。オフィスはなく、全員がリモートワーカーだ。
「今回調達した資金で、人も増やしていこうと思っています。とはいえ最小限のチームで大きな成果を出していくという少数精鋭の形は変えずにいきたいです」
着実に成果を上げながらも慎重な姿勢を崩さないのは、最近のスタートアップ不況を目の当たりにしていることが大きい。
「ゼロ金利の時代に、スタートアップはどんどん資金調達をしてチームを増やしました。でも、結局それが今、バリュエーションを半分や3分の1に下げて運転資金を調達せざるを得なくなったり、社員のレイオフを進めてダウンサイズしたりする結果につながっています。そうならないよう注意しています」(内藤さん)
Anyplaceのリード投資家は、Uberに初期投資した著名なエンジェル投資家・ジェイソン・カラカニス(Jason Calacanis)氏だ。そのジェイソン氏も、最近のスタートアップ市況については「(2000年代初期の)ITバブル崩壊以来の悪さ」と指摘しているという。
こうした中、Anyplaceは前回のラウンドよりもバリュエーションを上げての資金調達となった。
「前回が控えめだった分、倍近くのバリュエーションで調達できました。全体が浮かれている時にどれだけ堅実に顧客が欲しいものを作り、堅実な調達をすることが重要なのかを感じました。
僕たちのような20代~30代前半の経営者は、ITバブル当時の不況を知らないタイミングで起業しているので、いい時期しか知らないんですよね。我々が今回直面しているのは、経営者人生の中で初めての不況。身をもって勉強になりました」
免責事項:
このコンテンツの見解は筆者個人的な見解を示すものに過ぎず、当社の投資アドバイスではありません。当サイトは、記事情報の正確性、完全性、適時性を保証するものではなく、情報の使用または関連コンテンツにより生じた、いかなる損失に対しても責任は負いません。