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概要:7月27-28日の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動幅の上限を0.50%から引き上げるとの観測がある。いよいよ政策修正に動くという理解になる。
[東京 20日] - 7月27-28日の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動幅の上限を0.50%から引き上げるとの観測がある。いよいよ政策修正に動くという理解になる。
7月27-28日の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動幅の上限を0.50%から引き上げるとの観測がある。いよいよ政策修正に動くという理解になる。熊野英生氏のコラム。
しかし、日銀の今までの説明では、副作用が生じていれば、金融緩和をより長く続けるためにしかるべく副作用対策を講じるというものだった。
現在、10年金利は0.50%に急接近しているが、8-9年の年限が0.50%を超えるまでには至っていない。イールドカーブがゆがむという副作用はまだ生じていない。その点では、政策修正の必然性はないと筆者には思える。
観測の発端は、内田真一副総裁が7月7日付日本経済新聞のインタビューに答えたことから始まる。このインタビューは、金利操作修正は「バランスをとって判断」と報じられた。このバランスをとって判断とは、副作用が生じれば、それを修正しながらイールドカーブコントロール政策(YCC)を継続していくという意味で、従来からの公式見解を一歩も踏み出していないと筆者はみている。
しかし、ドル/円レートはその発言が政策修正のニュアンスを持つものだという理由から円高方向に動き始めた。はっきりしたエビデンスよりも、疑心暗鬼の成せる技に思える。
<思惑の背景>
なぜ、日銀の政策修正がありそうだと多くの人が信じるかという理由を考えると、合理的な理由はいくつかある。
第1は、少し行き過ぎた円安へのけん制を警戒したことである。すでに財務省は5月末から為替介入をにおわせるアナウンスを始めていた。理屈はともかく、7月末に日銀の政策修正が行われれば、日米金利差は縮小して、円高になる。政府・日銀は円安対策として、政策修正のカードを切ろうとしている。
しかし、この仮説には難点がある。もしも、7月末の会合で政策修正がゼロ回答だったとき、円安が再び進むことになるかもしれない点だ。
筆者は、その点は深読みしている。7月末には、政策修正がないとしても、会合の発表文か総裁会見では、副作用対策の実施について踏み込んだことを示すのではないか。そうすれば、元の円安トレンドには戻らない。
筆者は、政策修正が7月末になかったとしても、その次の9月、その先の10月には実施される可能性は十分にあるとみている。だから、マーケットが内田副総裁の発言に過剰反応しても、日銀はそれを予行演習のつもりで放置しているのだろう。
<第2の理由>
思惑の背景は、円安けん制のほかにもある。7月末の会合で、2023年度以降の物価見通しが改定されることだ。特に2023年度の数字は、4月末の1.8%(中央値)から、筆者は2.5%前後へと大幅に上方修正されるとみる。これは、安定的に2%を上回るという条件にかなり近づいたことを示すものだ。
2%目標の達成に近づくことは、政策修正に寛容になることを示唆すると、多くの人が感じるのだろう。日銀が副作用対策として長期金利の変動幅の上限を引き上げると説明していても、多くの人は、それは実際的に引き締めの一環だとみていることを意味する。
2%目標の達成=マイナス金利解除だとして、達成に近づくことは金融緩和の枠組みを引き締めの方向に修正することになる。
伏線として以前に、植田和男総裁は2023年度後半に物価上昇率がいったん2%を割るとの予想を示していたことがある。筆者は、10-12月にかけて2%を割らないとみている。日銀は7月または10月に以前の見通しを見直したことを表明するだろう。その見通しの修正は、政策修正につながると連想させる。
<第3の理由>
日銀の政策修正は、暗黙のうちに米国の金融政策と連動している。米国の長期金利が本格的に低下してくると、円高圧力が強まるから、そうした局面では日銀の政策修正は困難になる。
だから、日銀の政策修正は、極力、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ過程の中盤くらいの方がよい。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年内にあと2回の利上げ(合計で0.50%)が予告された。
日銀にとっては、できれば年内の早い段階で長期金利の変動幅を動かす方が、為替変動を大きくしなくても済む。こうした思惑を感じとって、7月末のタイミングで政策修正がありそうだとみる人が増えた可能性はある。
日銀の立ち位置からみると、7月の修正と、9、10月の修正では少し違いがある。FOMCでは9月に政策見通しの予告を変更する。6月に年内2回と予告していたが、変更する可能性が残る。
米消費者物価指数(CPI)は5月4.0%、6月3.0%と早いペースで伸び率を鈍化させている。7月のFOMCで0.25%の利上げを行って、9月にもうそれ以上の利上げはしないとスタンスを改める可能性は十分にある。すると、日銀としては政策修正に挑むのならば、9月よりも7月の方が好ましいと映るかもしれない。
<地ならしという見方>
植田総裁は「積年の課題である物価安定の総仕上げをしたい」と述べて就任した。就任後、ハト派の雰囲気を強くにじませて、円安の流れを促した。日経平均も5月以降は3万円台になり、植田路線はマーケットに優しいとみられている。
筆者は7月末の政策修正は少し早いかなと感じるが、それを9月または10月に遅らせることで植田総裁は慎重な判断を演出する可能性は十分にあると思う。つまり、7月末でなくても、日銀は年内のどこかで政策修正をしてくるつもりだと考えられる。
これは、そのまた先にあるマイナス金利解除の地ならしだ。マイナス金利解除に伴う大きなショックを回避するために、小さな摩擦をいくつか乗り越えることでマーケットの耐久性を高めたいのだろう。植田総裁のしたたかさが7月以降に具体的に試される。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
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