セールスフォースのベニオフCEO、レイオフは｢一度きりのことと思いたい｣。大規模解雇から一転、幹部の採用を強化

セールスフォースのマーク・ベニオフCEO。

Kevin Dietsch/Staff/Getty Images.

セールスフォース（Salesforce）のマーク・ベニオフCEOは8月30日、第2四半期決算説明会でウォール街のアナリストを前に、同社の素晴らしい業績に貢献した｢ブーメラン（出戻り）｣社員らを賞賛し始め、話を矛盾したものに変えた。

2024年度第2四半期は、利益率が大幅に改善するなど全般的に予想を上回り、通期の見通しも明るいものとなった。

利益率改善の大部分は、コスト削減策によるものだ。ベニオフCEOは1月、従業員の10％をレイオフする大規模なリストラを発表、最近では値上げを実施し、一部の顧客の反発を招いた。

ベニオフCEOは、2020年から2021年にかけてのパンデミック最盛期における過剰な雇用がリストラの原因となったと述べ、リモートで働く新規採用社員の生産性は一般的な社員ほど高くないと示唆した。同氏はまた、レイオフされた社員を再雇用すると述べた。

そのような経緯から、ベニオフCEOは今回の決算説明会で、業績回復に取り組んでいる間に同社に復帰した元従業員全員に感謝を示すことに時間を割いた。

｢これらの結果の多くは、当社の素晴らしい従業員のみならず、会社に戻って助けたいと心から感じてくれた多くの人たちとも関係している｣

｢全員にまず、ありがとうと言いたい。彼らの復帰を歓迎することは素晴らしいことだ｣

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ベニオフCEOは、数年間の他社での勤務を経て、最近セールスフォースに戻った3人の幹部と、2022年にオラクルのマーケティング・トップの座を去ったアリエル・ケルマン（Ariel Kelman）CMO（最高マーケティング責任者）を招き、即席の質疑応答セッションを行った。

2022年末に始まった大規模な人材流出を経て、経営陣を再び充実させたことをベニオフCEOはアナリストに示した格好だ。セールスフォースでは2022年11月以降、共同CEOだったブレット・テイラー（Bret Taylor）氏、スラック（Slack）創業者のスチュワート・バターフィールド（Stewart Butterfield）氏、タブロー（Tableau）CEOのマーク・ネルソン（Mark Nelso）氏などの主要幹部が退社している。

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2023年8月には最高人財責任者のブレント・ハイダー（Brent Hyder）氏が退社、最高ビジネス責任者のエボニー・ベックウィス（Ebony Beckwith）は、長年にわたって同社の慈善財団を率いてきたが、6月にセールスフォースを去っている。

だがベニオフCEOは、同社への復帰を待ち望む元従業員の｢長蛇の列｣を誇示し、特に同社の主要ビジネス部門である｢セールス、エンジニアリング、テクノロジー部門｣では｢両手を広げて歓迎している｣と述べた。

ベニオフCEOのコメントについてInsiderがセールスフォースの広報担当者に説明を求めたところ、｢重要な役割のために採用を強化している｣との回答だった。

セールス職は2022年11月、同社が業績を理由にレイオフを行った際、真っ先に影響を受けた。セールス部門はセールスフォースの従業員の大半を占めている。セールスフォースは、2023年度に130億ドル（約1兆8800億円、1ドル＝145円換算）以上を営業・マーケティング費用に費やし、その大半は給与に充てられたと述べている。この金額は、2番目に多い研究開発費の2倍以上だ。

ブーメラン社員を歓迎するという話は、少なくとも1人のアナリストを困惑させたようだ。

UBSのアナリスト、カール・ケイルスタッド（Karl Keirstad）氏は、同社は今年すでに11％の人員削減を行ったと推定、ベニオフCEOがブーメラン社員を賞賛していることに触れて、セールスフォースはレイオフを完了したのかと質問した。ベニオフCEOは明確には答えず、以下のように述べた。

｢これで底を打ったと言えるかどうかは分からない。だが今年初めのような大規模なリストラは計画していない｣

｢あれは一度きりのことで、過ぎたことと思いたい｣

もちろん、将来的にレイオフを行わないと約束できるCEOはいない。だがベニオフCEOは今、セールスフォースは新たに大規模なレイオフを計画していないと言いたかったようだ。これはきわめて大きなニュースだ。Insiderは2023年初め、さらに10％の人員削減の可能性があるという社内の噂を報じている。

だが同時に、セールスフォースの現役・元従業員が、退職を告げられたり戻ってくるように言われて鞭打たれたように感じているとするなら、それはトップからのメッセージが複雑なせいだ。