ＥＣＢ、パンデミック購入債の再投資終了を前倒しか－今週会合で焦点

2023年10月25日 9:03 JST

1.7兆ユーロのＰＥＰＰ債、再投資継続は金利政策と矛盾の見方も

柔軟な再投資規則、市場混乱時の防衛策として機能－放棄にためらい

欧州中央銀行（ＥＣＢ）は新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）期に購入した１兆7000億ユーロ（約271兆円）の保有債券をいつ縮小し始めるのか、再考する必要性が高まっている。

ＥＣＢは今週アテネで開く政策委員会会合で、パンデミック緊急購入プログラム（ＰＥＰＰ）購入債の満期償還金再投資を現行ガイダンスの2024年末より前に終了させることを議論し始める見込みだ。そうすれば、量的引き締め（ＱＴ）の取り組みを金利政策に完全に一致させることになる。ＥＣＢはインフレ率を２％に戻すために10会合連続の利上げを実施してきた。

ＰＥＰＰの再投資は現在、ユーロ圏政府の国債利回りが不合理に跳ね上がった場合の最初の防衛手段として機能している。イタリアなどで財政が逼迫（ひっぱく）する中、重要な手段だとみる当局者もいる。

しかし、再投資の停止を前倒しすべき理由もある。 再投資を来年の遅い時期や期限である年末まで引っ張り過ぎれば、景気を浮揚させるための利下げと同時進行になりかねず、投資家には複雑なシグナルが送られることになる。

ECB Balance Sheet Is Set to Shrink Slowly

Source: ECB, Barclays, Bloomberg

Note: APP estimates through Sept. 2024 according to ECB, figures for 4Q24 are average of monthly redemptions Sept. 2023-Sept. 2024; PEPP path according to Barclays (redemptions of €18b/m, 50% rolloffs March-May, 100% from June); TLTRO maturities according to ECB; rate projections from Bloomberg survey

ＵＢＳの欧州担当チーフエコノミスト、ラインハルト・クルース氏は「ＥＣＢがＰＥＰＰ再投資の終了を数四半期前倒ししても驚かない。重要なのは、利下げを開始する前に発表することだ。そうしなければ、コミュニケーションが非常に難しくなる」と話した。

ＥＣＢは今週、１年余り前に利上げを開始してから初めて金利を据え置く見込みだ。当局者は金利以外の政策手段にますます目を向けている。

デフレが懸念された2015年に導入した資産購入プログラム（ＡＰＰ）下の購入債券は、既にロールオフ（償還に伴う保有減少）が認められている。ＰＥＰＰの再投資を続けることは経済活動と物価を抑制するための高水準の金利と矛盾する。

エストニア中銀のミュラー総裁は先月、「来年末よりも早くＰＥＰＰ再投資を停止することに賛成する強い根拠がある」と述べた。

バークレイズのエコノミストは、月平均で約180億ユーロのＰＥＰＰ債が償還期限を迎えると概算しているが、公式な開示はない。

ＰＥＰＰの再投資はユーロ圏のいずれの国の国債に行ってもいいことになっている。このため、これまでの利上げの影響が大きくなり債券市場が混乱する際に、再投資がなければ問題になると警戒する当局者も一部いる。

ECB Used the PEPP\'s Flexibility Only Briefly

Source: European Central Bank

最近のイタリア債の急落は、投資家の信頼がいかに急速に失われ得るかを示した。バスレ・スロベニア中銀総裁のようなタカ派の当局者も、必要な場合に安定を取り戻す手段を手放すことを躊躇（ちゅうちょ）する。

しかしコロナ禍が過ぎた今、ＰＥＰＰ再投資を続けることを正当化するのは難しくなりつつある。

資産運用会社ＤＷＳのエコノミスト、ウルリケ・カステンス氏は、「再投資はやや拡張的な政策だ。従って、もはや全体的な状況に実際そぐわない」と述べた。

ここ数週間の当局者発言は、政策委員会がコンセンサスから程遠いことを示している。ブルームバーグのエコノミスト調査では、ＥＣＢがＰＥＰＰ再投資の終了を前倒しするとの予想が43％と、以前の39％から上昇した。

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