米国債入札、雇用統計よりも株価に大きな影響－シティグループが分析

2023年11月9日 12:47 JST

入札実施日のＳ＆Ｐ500種、上下いずれかに約１％の値動き

金融政策にも影響する国債入札動向を株式トレーダー注視

米国債入札が株価動向への影響力を強め、金利の道筋が株式市場の関心を集めている最近の状況がシティグループのデータ分析で浮き彫りとなった。

それによれば、入札実施日のＳ＆Ｐ500種株価指数の値動きは2022年初め以降、上下いずれかの方向に約１％に達し、それ以前の10年の平均を上回っている。

分析対象の22例（いずれも30年債入札）を見ると、その後の値動きは月次の雇用統計のケースよりも大きく、10年債入札でも同様の結果が示された。調査は米株式トレーディング戦略責任者、スチュアート・カイザー氏が主導した。

こうした分析を踏まえ、株式トレーダーは９日に行われる30年債240億ドル（約３兆6220億円）の入札動向を注視することになりそうだ。８日の10年債入札は需要が予想よりもやや弱めだった。

米財務省が１日に発表した四半期定例入札の規模は大半の主要ディーラーの予想より緩やかな増加となり、Ｓ＆Ｐ500種は上昇した。入札発表は同日の連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）会合後のパウエル連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）議長の記者会見と同様に注目され、重要度が裏付けられた。

財政赤字拡大に伴う国債供給の増加で利回りが高水準で推移し、株価の逆風になると懸念される状況にあって、資産全般にわたって入札が投資家の主な関心の的となっている。

国債入札とそれが利回りに及ぼす効果は、米金融当局の金利政策運営に影響する可能性もあり、投資家は注視している。長期金利の上昇は金融状況の引き締まりにつながり、当局の追加利上げの必要性が減じることも考えられるためだ。

トロント・ドミニオン銀行の欧州金利シニアストラテジスト、プージャ・クムラ氏は、米金融当局が金利をより高くより長く維持する姿勢を保つ限り、国債入札が注視される状況は続く公算が大きいとの見方を示した。