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概要:ウォール街は連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて小幅な動きにとどまった。11月の消費者物価指数(CPI)統計を受け、市場では連邦準備制度理事会(FRB)がインフレに対して勝利を宣言するのはまだ早いとの観測が補強された。
CPI上振れも金利見通しほぼ変わらず、注目は議長会見と経済予測
長期債は下げを埋める展開、ドルは小幅安-供給過剰懸念で原油反落
ウォール街は連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて小幅な動きにとどまった。11月の消費者物価指数(CPI)統計を受け、市場では連邦準備制度理事会(FRB)がインフレに対して勝利を宣言するのはまだ早いとの観測が補強された。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4643.70 | 21.26 | 0.46% |
ダウ工業株30種平均 | 36577.94 | 173.01 | 0.48% |
ナスダック総合指数 | 14533.40 | 100.91 | 0.70% |
13日に発表される連邦公開市場委員会(FOMC)結果で金利が据え置かれるとの予想に変わりはないが、CPI統計は市場が積極的に織り込んだ緩和転換に対する疑念を生じさせた。トレーダーが予想する来年の利下げ確率は小幅に低下したが、初回利下げは5月と依然見込まれている。パウエル議長が記者会見で、市場の緩和期待に水を差すだろうとの観測も広がった。
米CPI、11月に上振れ-インフレ低下への険しい道を浮き彫りに (3)
パウエル議長は前回FOMC後の記者会見で、インフレの進展が平たんではないと念を押した。11月のCPIが小幅に上振れしただけで、ほぼ予想通りだった事実は、物価を押し下げることの本質的な難しさを浮き彫りにした。特にFRBがインフレとの闘いで「最後の1マイル」とみなすサービスセクターでは、なおさら容易ではない。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏は「近い将来に向けた利下げ期待や臆測が広がった後、この日のCPI統計はそのムードをやや沈ませるものだ」と指摘。「端的に言えば、これは市場の政策緩和期待を再確認あるいは正当化する十分なインフレ減速を示していない。とりわけ、労働市場が依然かなり堅調なことを考慮すればなおさらだ。パウエルFRB議長は13日に、最近の市場でみられるこうした見方を押し返すはずだ」と話した。
米2年債利回り(中央値)
エバコアのクリシュナ・グハ副会長は、ディスインフレのプロセスは漸進的な前進を続け、途中でノイズが入る可能性もあるという政策当局の認識と、CPIは共鳴すると指摘した。
「経済の正常化でこれまで築いた進展を認識しながら、早期利下げという考えを押し返すという『きわどい綱渡り』がパウエル議長に求められる」と述べるのはTDセキュリティーズのオスカー・ミュノス、ジェナディー・ゴールドバーグ両ストラテジスト。「FOMCのガイダンスはハト派的になる可能性が高いが、議長は会見で慎重ながらもタカ派的な考えを示すだろう」と述べた。
経済と労働市場に有意な悪化がない限り、FRBはインフレ率が2%目標への持続的軌道に乗ったと確信するまで政策を緩和しないだろうと、TDの両氏は指摘。「きょうの統計がその確信を与える可能性はまだ低い」と述べた。
LPLファイナンシャルのチーフ・グローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「市場にはFRBが来春にも利下げに踏み切るとの見方が根強いが、インフレ抑制の取り組みで難しさが増す『最後の1マイル』が終わっていないのであれば、金融当局は選択肢をオープンにしておきたいだろう」と述べた。
11月米CPI、金融緩和期待を正当化せず:市場関係者の見方 (1)
Economists See Lower Inflation as Key to 2024 Fed Rate Cuts
Nearly three-quarters see inflation data, not jobs, as catalyst for first rate cut
Source: Bloomberg News survey conducted Dec. 1-6
Economists were asked what would prompt the Fed\'s first rate cut: A financial shock or deterioration in asset prices, an economic shock or deterioration in the labor market, or a lower inflation rate to prevent real rates from rising.
インフレ率を金融当局の目標である2%に戻すまでの「最後の1マイル」について、イエレン米財務長官は特に難しいとは考えていないと述べた。
FOMCが金利予測分布図(ドットプロット)で2024年と25年の金利をどう位置づけるかによって、現行予測より先走りしている市場にいくらかの不安定さが加わる可能性がある。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「パウエル議長のコメントと最新の四半期経済見通し(SEP)が年末の高揚感をもたらすか、あるいはいじわるな『グリンチ』となるのか、市場参加者は待っている」と指摘。「2024年に5回の利下げがあるという投資家が期待する通りのSEPとなれば、株式市場はサンタクロース・ラリーを迎えるが、2-3回の利下げ見通しとなれば株式相場はグリンチとともに暗いムードで一年を終えるだろう」と述べた。
個別銘柄では、スマートフォンのアプリストア運営を巡りグーグルがゲーム大手のエピック・ゲームズに敗訴。年2000億ドル(約29兆円)近くを生み出すアプリストア市場のグーグルとアップルの2社による複占が揺らぐ可能性がある。ウォルト・ディズニーとインドの資産家ムケシュ・アンバニ氏率いる複合企業リライアンス・インダストリーズは、インドにおける両社のメディア事業を統合する方向で18日にも拘束力のない合意に署名する見通しだ。
長期の米国債は下げを埋める展開。注目された30年債入札で堅調な需要が見られ、市場では供給増に対する吸収力への根強い不安がやや和らいだ。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.31% | -1.4 | -0.33% |
米10年債利回り | 4.20% | -2.9 | -0.68% |
米2年債利回り | 4.73% | 2.3 | 0.48% |
米東部時間 | 16時48分 |
朝方はCPI統計を受けて来年の利下げ期待が後退し、米国債の一角が小幅に下げたが、入札の結果発表後に下げを縮小した。
来年の米利下げ観測やや後退、5月開始予想は変わらず-CPI統計後
ファースト・シチズンズ・バンク・ウェルス・マネジメントの市場・経済調査ディレクター、フィリップ・ニューハート氏は「きょうのデータでは前年同月比での総合指数がまた改善したが、コア指数はFRB目標の2倍という高い水準を維持した」と指摘。「FOMCは実質的なインフレのさらなるペース改善を確認してから、フェデラルファンド(FF)金利目標水準を引き下げる気になるだろう」と述べた。
Fed Swaps Steady After November CPI Data
Swaps price 108bp of cuts for end-2024, first 25bp of easing priced by May
Change in Fed\'s interest-rate target implied by overnight index swaps and SOFR futures. Fed dots use interpolation.
金利の変動性は高いが、依然高い水準にある利回りには妙味があると投資家の多くは判断している。とりわけ歴史的な積極引き締めが終了したとの観測が広がっている状況ではなおさらだ。
インベスコのチーフ債券ストラテジスト、ロブ・ウォルドナー氏は「FRBが来年たどる道はゆっくりとした利下げか、急速な利下げだ」と話す。「いずれも債券にとっては非常に良い。経済はゆっくりと成長し、ディスインフレ的な環境だと考えている」と述べた。
外為
ドルはFOMC結果を控えて小幅安。朝方は予想外のCPI上振れを受けて、ショートカバーが入る場面もあった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1240.95 | -2.72 | -0.22% |
ドル/円 | ¥145.49 | -¥0.67 | -0.46% |
ユーロ/ドル | $1.0795 | $0.0030 | 0.28% |
米東部時間 | 16時49分 |
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、CPI発表直前に0.5%下げていた。原油相場と金属価格が下げ、資源国通貨は軟調。
マネックス・ヨーロッパの外国為替分析責任者、サイモン・ハービー氏は「きょうのデータはFRBにとって完璧だった。タカ派的な姿勢を信用してもらうのに十分なほどに熱いが、その姿勢を実行に移す必要性が高まるほどには熱くない」とリポートで解説した。
対円でのドル相場はCPI発表後、アルゴリズムに基づく売りで144円74銭まで下げた。その後はショートカバーで下げを縮小した。統計前は実需筋や企業勢、クロスの需要が円を押し上げていた。
来週の日銀政策会合を含む1週間のインプライドボラティリティー(IV)は、14.8%に上昇。1カ月物IVは10.6%。
原油
ニューヨーク原油先物相場は大幅反落。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は一時4%を超える下げとなり、1バレル=69ドルを割り込んだ。6月以来の安値水準。
原油相場を圧迫している供給過剰懸念がこの日は一段と強まった。海上輸送によるロシア産原油供給は12月10日までの4週間では平均で日量約320万バレルとなり、3日までの4週間に比べて増加した。 米エネルギー情報局(EIA)は今年の米原油生産量見通しについて、前月時点の予想から日量3万バレル上方修正した。
原油先物のスプレッドでも期近物が期先物より価格が低いコンタンゴ(順ざや)が続き、供給過剰が示唆されている。
原油価格は9月下旬に付けた今年の高値からは25%余り下落。週間ベースでは2018年以来となる長期連続安に向かっている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は前日比2.71ドル(3.8%)安の68.61ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は3.7%下げて73.24ドル。
金
ニューヨーク金相場は小幅ながら続落。CPI発表を受けて、米金融当局が来年に積極的な金融緩和を実施するとの見方が後退した。
金スポット価格は先週に過去最高値を更新した後に急失速し、足元では1オンス=2000を割り込んだ水準。この日はCPI発表直後に一時0.7%高まで買われる場面もあったが、勢いは続かなかった。
アーカシュ・ドシ氏らシティグループのアナリストは「最近の金相場での巻き戻しには驚いていない。オンス1950ドル前後で『押し目買い』だろう」とリポートで指摘。「現在の高値環境では調整と利益確定が予想される」とした。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比50セント(0.1%未満)安の1993.20ドルで取引を終えた。
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