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概要:フェイスブックを中心とする企業グループが、2020年上半期にサービスを始めると発表した仮想通貨(暗号資産)「Libra(リブラ)」。そもそも、日本の法律で、この仮想通貨は買えるのか。
Libraの送金に対応する「カリブラ(Calibra)」 の送金画面。
Facebookを中心とする企業グループが、2020年上半期にサービスを始めると発表した仮想通貨(暗号資産)「Libra(リブラ)」。
2019年6月18日に発表されたホワイトペーパー(事業構想に相当)から、リブラは、法定通貨や国債などの実在する資産で裏付けられるステーブルコインの一種とみられている。
1年以内にサービスが開始される計画だが、実際に日本のユーザーがリブラを手に入れて決済などに使える環境が整うには、いくつものハードルが待っている。
そもそも、リブラが日本の法律で仮想通貨に該当するかについても、専門家たちの間には複数の見方がある。
仮想通貨に該当しない場合、仮想通貨交換業者ではなく銀行が取り扱う可能性も指摘されている。
24日に東京都内で開かれたリブラの勉強会(主催:日本ブロックチェーン協会)で、仮想通貨を専門とする斎藤創弁護士は、リブラが仮想通貨に該当する可能性が高いとの見方を示した。
斎藤氏は「規制がかなり厳しくなっているが、かなりのメンバーがそろった仮想通貨なので、彼らがやる気になって、日本の交換業者と組めば、(金融庁の審査を)通すことはできるだろうという印象は持っている」と話す。
ビザ、マスターカードも参加
日本ブロックチェーン協会主催の勉強会で、公演するLayer XのCEO福島良典氏。
撮影:小島寛明
リブラはどんな計画なのだろうか。
まず、リブラの運営を担うのは、「リブラ協会」という団体だ。スイスのジュネーブに本部を置く。「Facebook仮想通貨」と呼ばれてはいるが、協会の組織上、Facebookは他のメンバーと対等な、協会のいちメンバーと位置づけられている。
協会の「創立者」には、マスターカード、ビザ、ペイパル、ライドシェアのUber(ウーバー)、宿泊予約サイトを手がけるBooking Holdings(ブッキング・ホールディングス)、携帯キャリアのVodafone Group(ボーダフォン・グループ)、複数のベンチャーキャピタルなどが名を連ねている。
日本ブロックチェーン協会の勉強会で講演したLayer X のCEO福島良典氏は「複数の機関が牽制し合いつつ運用する。メンバーを見ても、本気度の高いプロジェクトだと思う」と指摘する。
Libraの設立パートナー。
Facebook/Libra
創立者となる企業は、リブラ協会に出資する。2020年上半期までに、100社/団体程度を集める構想だ。
協会は、創立者の構成を「地理的に分散させる」としているため、日本企業も創立メンバーに入る可能性は少なくない。ただ、ハードルはものすごく高い。協会が示している評価基準は、例えば次のようなものだ。
市場価値が10億米ドル超、または顧客残高が5億米ドル超
業界リーダーとしてトップ100位以内にランク付けさ れている
複数国に対するリーチが年間2000万人を超える
勉強会のパネルディスカッションでは、登壇者から「ソニーやJCBが協会に入る可能性があるのでは」との声も。
通貨単位はLibraになる。1Libra=XX円といった形で、「認定再販業者」を通じて取引されることを想定している。日本の場合、この認定再販業者は、仮想通貨交換業者が担う可能性が高そうだ。
新たにブロックチェーンを構築
現在、仮想通貨とブロックチェーンを実用に近づけるうえで最大のハードルになっているのが、処理速度だ。
ビットコインは以前、わずかな手数料で瞬時に世界中に送金できると言われたが、処理速度の問題で、「瞬時」とは言い難い現状がある。
この点に対応するため、リブラは「数十億のアカウントに対応できるスケーラビリティ」を掲げ、新たにブロックチェーンを開発している。
ビットコインやイーサリアムでは、取引を承認する際に極めて複雑な計算が必要となることが、処理速度の遅さの原因になっている。このため、新しいプロトコル(約束事)を採用した。
処理速度の問題はそう簡単には解決できないとの見方が強く、「数十億のアカウントに対応」との構想が実現できるかどうかは、注目すべきポイントのひとつだ。
価格に裏付けをもたせる仕組み
リブラは保有する資産を価格の裏付けとする計画だ。この仕組みを「Libraリザーブ」と呼んでいる。
ビザやマスターカードといった創立者に対して、出資に対してリブラを付与。ユーザーがリブラを手に入れる際に、支払った米ドルや日本円といった法定通貨も、リザーブに組み入れられる構想のようだ。
リザーブに集まった法定通貨は、銀行預金や国債といったリスクが低い金融商品に投資されて、運用益の確保も目指すという。
日本での取引には高い壁
法律家の視点で仮想通貨リブラの見方を解説する斎藤創弁護士。
撮影:小島寛明
日本でリブラを流通させる前に、高い規制の壁が待っている。
リブラが日本の資金決済法で定義された、仮想通貨に該当するかどうかについても、すでに複数の見方がある。
ひとつは、「通貨建資産」に該当する可能性だ。通貨建資産は、プリペイドカードなどが含まれる。
リブラが通貨建資産に該当する場合、銀行業や資金移動業の免許を持つ金融機関が取引を担う可能性もある。
もうひとつの可能性は、日本の法律上、仮想通貨に当たるとされた場合だ。新しい仮想通貨の取り扱いを始めるには、少なくとも(1)取り扱う交換業者、(2)日本仮想通貨交換業協会、(3)金融庁のチェックを通過する必要がある。
日本で独自の仮想通貨の発行と流通を目指す企業は複数あるが、2018年1月に起きたコインチェックの巨額流出事件以降、新しい仮想通貨の取り扱いは認められていない現状がある。
冒頭で斎藤氏が指摘したように、金融庁がリブラを仮想通貨に該当すると判断した場合、リブラ協会と仮想通貨交換業者が組んで、自主規制団体と金融庁のチェックに対応するシナリオが有力だろう。
斎藤氏は「日本でもリブラが使える可能性は十分にある」とみる。
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(文、写真・小島寛明)
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