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概要:中東欧諸国は国民の所得が低い一方で、石炭が豊富に埋蔵されているため石炭火力発電に対するニーズが非常に強い。それでも、石炭火力を削減する脱炭素化に異を唱えないのは、原発新設の目論みがあるからだ。
図表1:石炭依存度が高いEUの国々(電源構成に占める石炭火力発電の割合、2019年)。
出典:欧州連合統計局(Eurostat)
ポーランドはEUきっての製造業立国でもある。最大の輸出先はドイツで、品目は自動車の部品だ。
ドイツを中心とするヨーロッパの自動車産業を考えるうえで、ポーランドの石炭火力発電が大きな役割を果たしていることは、実はあまり知られていない事実だろう。いずれにせよ、ポーランドの石炭火力発電の削減はEUにとって大きな意味を持つ。
スイスの中間貯蔵施設にある核廃棄物コンテナ(2014年撮影)。
REUTERS/Ruben Sprich
中東欧諸国では、現在でも原子力発電所が少なからず稼働している。
しかし、その多くが旧ソ連で開発されたロシア型の旧式原子炉(VVER)であるため、経年劣化に伴う非効率化への対処が長年の問題となっていた。もともと原発の更新ニーズがあった中で、国際政治色が強い脱炭素化の潮流を受けて、中東欧諸国は原発の更新を進めやすくなった。
なお、米国は次世代原子炉であるSMR(小型モジュール炉)の開発競争をリードすべく、中東欧諸国に接近している。ルーマニア政府はこうした流れを受けて、2014年の入札に唯一参加した中国広核集団有限公司(CGN)と交わした覚書を廃棄、米ニュースケール・パワー社製のSMRを導入すると11月2日に米国との間で合意に達した。
EUもまた、フランスの原子力企業オラノを中心に拡大を図る。
オラノは開発で遅れをとるSMRの開発をはじめ、かつて挫折したEPR(欧州加圧水型炉)の普及を再び目指している。オラノを擁するフランスのマクロン大統領は、手始めにフランスの原子炉の新設に着手する旨を表明しているが、彼らが中東欧の市場を視野に入れていることは明白だ。
2011年の東日本大震災の記憶がまだ残る日本では、原子力発電に対しての議論は慎重にならざるを得ない。しかしグローバルな視野に立てば、脱炭素化の潮流の中で、「原子力発電の強化」が模索されているという事実もある。
もっとも、各国とも先送りし続ける論点がある。それは「核燃料の最終処分の問題」だ。原発の増設推進は、すなわち、処分の目処がつかない使用済み核燃料を大幅に増やすことになる。
(文・土田陽介)
電源構成比のデータ出典:Euro stat
土田陽介:2005年一橋大経卒、2006年同修士課程修了。エコノミストとして欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。主要経済誌への寄稿(含むオンライン)、近著に『ドル化とは何か‐日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)。
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