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概要:日銀の黒田東彦総裁は17日、金融政策決定会合後の記者会見で、原材料価格の高騰で日本の物価上昇率にもアップサイドリスクがあるものの、物価目標の2%にはなお距離があり、欧米の中央銀行のように金融政策の正常化に動き出すことはないと語った。賃金と物価がともに上昇していくのが望ましいと話し、企業の賃上げ進展に期待感を示した。
[東京 17日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は17日、金融政策決定会合後の記者会見で、原材料価格の高騰で日本の物価上昇率にもアップサイドリスクがあるものの、物価目標の2%にはなお距離があり、欧米の中央銀行のように金融政策の正常化に動き出すことはないと語った。賃金と物価がともに上昇していくのが望ましいと話し、企業の賃上げ進展に期待感を示した。
12月17日、 日銀の黒田東彦総裁(写真)は、金融政策決定会合後の記者会見で、引き続き中小企業の資金繰り支援に万全を期すため、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの一部を半年間延長することにしたと述べた。
<緩和修正に動く海外中銀、日銀に影響せず>
世界的なインフレを受け、米連邦準備理事会(FRB)が債券買い入れプログラムを来年3月で終了することを決めたり、英中銀が利上げを決めるなど、海外の中央銀行が緩和政策の修正を進めている。黒田総裁は「海外中銀の決定が直ちに日銀の政策スタンスに影響を及ぼすことはない」と言明。米欧ではインフレ率が上昇しているが、日本の場合は「一時的な要因やエネルギーを除いたベースの物価上昇率を見てもプラス0.5%程度で、目標の2%にはなお距離がある」と説明した。
物価について「常にダウンサイドリスクではなく、アップサイドがあるかもしれないが、到底2%に及んだり超えたりすることはないと思う」とし、「欧米のように金融政策の正常化に向けて動き出すことにはならないと思う」と語った。
黒田総裁は「単に物価が上がればいいのではなく、賃金・物価がともに上昇していく中で(目標の)2%に収れんしていくのが望ましい」と話し、企業の賃上げ浸透に期待感を示した。政府の賃上げ促進税制などさまざまな取り組みは「非常に好ましいことだ」と述べた。
外国為替市場での円安傾向について黒田総裁は、原材料コストがかさむ半面で輸出金額や海外子会社の収益の押し上げにもつながると述べ、「為替の円安はこれまでのところ、日本経済にプラスに作用している」と語った。「米国の金融政策の調整が日本経済にマイナスになるとは全く考えていない」とも述べた。
<コロナプログラムの縮小・延長>
日銀は16―17日の金融政策決定会合で、民間部門の資金繰りを支援する新型コロナ対応特別プログラムについて、縮小して一部の期限を半年間延長することを決めた。
コロナオペのうち、金融機関のプロパー融資分は現行制度のまま延長する。黒田総裁は、中小企業のうち、宿泊・飲食や対個人サービスの資金繰りがなお厳しい状況を踏まえ、金融機関がリスクをとって支援することが重要だと述べた。
CP・社債買い入れは、来年4月以降、コロナ前の買い入れペースに戻す。黒田総裁は「CPの残高は半年くらいでコロナ前のレベルに戻るが、社債が元のレベルに戻るには5年くらいかかると思う」と話した。
<短期金融市場の金利上昇をけん制>
11月積み期の最終盤に当たる今週、日銀は3日連続で国債買現先オペを実施し、短期金融市場でのレポレートや無担保コールレートの上昇抑制に動いた。黒田総裁は連日のオペは「レポレートが急激に上がり、好ましくないため」と説明。「短期金利がマイナス0.1%程度、10年物国債金利がゼロ%程度というのは政策の要諦。短期金利が上がりすぎることがあれば、今後も必要に応じて同様の措置を取る」と述べた。
(和田崇彦、杉山健太郎 編集:田中志保、橋本浩)
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