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概要:最近、内閣府が国内総生産(GDP)統計の詳細データを早いタイミングで公表するようになった。統計ユーザーにはうれしいことである。速報として四半期ごとに公表されるQE(Quartely Estimates)以外にもGDP統計には見所がたくさんある。
[東京 22日] - 最近、内閣府が国内総生産(GDP)統計の詳細データを早いタイミングで公表するようになった。統計ユーザーにはうれしいことである。速報として四半期ごとに公表されるQE(Quartely Estimates)以外にもGDP統計には見所がたくさんある。
8月22日、 内閣府が国内総生産(GDP)統計の詳細データを早いタイミングで公表するようになった。都内で8日撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)
一例を挙げると、コロナ禍の貯蓄動向である。すでに2022年1─3月期までの家計可処分所得・家計貯蓄率の速報が発表されている。
<積み上がる政府債務と個人金融資産>
過去2年間、コロナ禍でのダメージは大きかったが、それを政府の巨大給付金が補う格好になっている。2020年4─6月期は、個人事業所得と雇用者所得が激減したが、それを上回って政府からの給付が増加して、結果的に家計可処分所得は季節調整済み前期比で10.5%も増えている。
驚くのは、それが個人消費を増やさずに、貯蓄率を劇的に上げたことである。家計貯蓄率は21.9%(季節調整値)まで上昇した。これは、政府支援の資金移転が家計のバランスシートに保蔵されたことを意味する。
そうしたこともあって、コロナ禍の2年間は、家計金融資産は190兆円も増加した(2020年3月末1815兆円から2022年3月末2005兆円)。この中には、株価上昇・円安で増価した部分も大きい。政府債務が膨らむ一方で、家計金融資産が増大する図式である。
この図式では、巨大に積み上がる政府債務という「バベルの塔」の横に、もう1つの家計金融資産の巨塔がそそり立ち、ツイン・タワーを形成しているようにみえる。一方が崩れるときに、もう一方が安泰ということはあり得ないだろう。
<インフレ課税の構造>
政府債務を減らす方法として、1)消費増税、2)ハイパー・インフレ─が例示されることが多い。消費増税は、国民に強烈なアレルギーがあって、政治的に選択ができない。ならば、ハイパー・インフレということになるが、それをどうやって引き起こすのかという問題がある。人為的なハイパー・インフレも政策的に選択できない。
より現実的なのは、忍び寄るインフレ(クリーピング・インフレーション)だろう。好況・不況でも一定ペースでインフレが進んでいくシナリオだ。そのとき、政府債務の実質価値はじわじわと目減りする。
例えば、2%の物価上昇率が5年間続けば、1.02X1.02X・・・=1.104になる。2022年に100万円だった札束の価値は、2027年に実質的に89.6万円に下がる。購買力の低下である。5年間で10.4%の実質価値を奪うのが、物価上昇の効果だとも言える。
経済学では「インフレ課税」と言われる。人々が資産をタンスに仕舞い込んでいても、忍び寄るインフレはこっそりと財産を目減りさせる。
マクロでみて、この時に家計金融資産はどうなっていくのか。2022年3月末に元本価値2005兆円あったものが、2027年3月末の実質価値が0.896倍の1816兆円に目減りする。
差額は189兆円になる。ちょうど過去2年間のコロナ禍で増加した残高(190兆円)が吹き飛ぶ格好だ。
このインフレ課税から逃れる方法は、運用資産の元本価値をなるべくインフレに連動させて増やすことだ。それと、高利回りの金融資産に資産シフトさせることも防衛術になる。インフレに連動して元本価額が増えたり、金利上昇する金融資産を選ぶことである。
しかし、多くの家計が保有する預金は不利に置かれる。預金利回りは、全く上がらないだろう。黒田東彦総裁は「金利を上げると景気が悪くなる」(2022年7月21日の定例記者会見)と、利上げ観測を否定する。一見、景気配慮に思えるが、実際は実質金利の低下を容認している。すでに2%の物価上昇を得たのに、いろいろな理由を付けて、目標達成を強く否定する。
よく考えたいのは、日銀のハト派的な政策運営が、インフレ課税を容認し、預貯金や国債の保有者から実質価値を奪っていることだ。家計資産を浸食するインフレ課税は、静かに着実に進んでいる。
<分かれる明暗、弱者にしわ寄せ>
インフレ課税とは、物価上昇に対して、賃金や金利、そして資産価値がスライドしないことで引き起こされる実質価値の目減りである。通常、実質賃金が低下、実質金利はマイナスとなるとき、その裏側に受益者がいる。
その受益者とは、まずは債務者である。返済すべき元本の実質価値が下がるから、もう一方で債権者は損をする。実質金利がマイナスの時も、債務者は恩恵を受けている。それとは別に、物価上昇の時、金利が上昇すれば、債権者は助かる。
次に、価格転嫁力の高い者はインフレでも生き残れる。すでに製造業では、相当に価格転嫁が進んでいる。消費者は、インフレ・コストを課される側になり、弱い立場だ。事業者の中でも、値上げをしにくい中小企業は受益者にはなりにくい。すでに、円安に伴う輸入インフレが、価格転嫁しにくい企業の収益を食っている。
勤労者にとっては、企業が賃上げに寛容で、インフレ率を上回るような賃金上昇率を認めてくれれば、インフレ課税を免れられる。賃上げに企業が消極的であれば、インフレによって購買力を奪われることに対抗しにくいと言える。
また、年金生活者は、賃金・物価スライドが課されて1年遅れで年金受給額が増減する。しかも、マクロ経済スライドで相対的に割り負けることが運命づけられている。インフレの打撃が大きい。そうしたシニア層を主な顧客にしている国内サービス事業者には、価格転嫁がしにくい企業が多い。
最後に、円安もインフレ課税の変形であると考えると、ドルを持っている家計・企業は輸入インフレの負担増を円安メリットでオフセットしやすく、損失を少なくできる。特に、円資金で借り入れをして、それをドル資産で運用すると、ドル高・円安によって、恩恵を受ける。ドル価値が上がり、円債務価値が下がるから、投資家の返済は容易になるというわけだ。
最近は、米利上げでドル保有者はインカムゲインを増やしやすくなっている。海外展開をしている日本企業は、円安デメリットへの抵抗力が高いと言える。
整理すると、インフレ受益者とインフレ被害者は、対照的に生じる。債務者と債権者。価格転嫁できる企業とそうではない企業。インフレに連動して元本価額が変動する資産を持っている投資家と、預貯金しか持たない者。ドルなど外貨資産を持つ者と、円資産しか持たない者。インフレ被害者ははっきりと分かれる。
昔から言われるのは、インフレが起こるとき、社会的弱者が犠牲になることが多いという点だ。社会全体に格差への不満が高まり、不平等を恨む人が増加する。すでに日本にはそうした予兆が感じられるが、インフレが続くことはますますその傾向を強くするだろう。静かに忍び寄るインフレにもっと警戒心を持った方がよい。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
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