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概要:[東京 7日 ロイター] - 片岡剛士・前日銀審議委員(PwCコンサルティング・チーフエコノミスト)は、ロイターのインタビューに応じ、米欧の利上げがもたらす世界景気の腰折れリスクに警戒感を示した。日本
[東京 7日 ロイター] - 片岡剛士・前日銀審議委員(PwCコンサルティング・チーフエコノミスト)は、ロイターのインタビューに応じ、米欧の利上げがもたらす世界景気の腰折れリスクに警戒感を示した。日本の消費者物価指数は10月以降に前年比3%超の上昇が視野に入るものの、インフレが進む中で景気が悪化した場合、日銀の追加緩和は難しく、早期の効果が見込める財政政策がメインになり得ると述べた。
片岡氏はリフレ派の論客として知られ、2017年7月から22年7月まで日銀の審議委員を務めた。審議委員時代は、長短金利の引き下げによる金融緩和の強化を主張し続けた。
片岡氏は、携帯電話通信料の値下げの影響が完全にはく落する10月以降、物価上昇率が3%台に上昇することは「既に視野に入っている」とした。ただ「インフレ率が3%台になったとしても、ほとんどは原材料価格の上昇によるもので、日本の場合は物価が2%台でアンカーされることで期待される賃金の上昇や人々のマインドの変化、働き方の変化といったものが全く起こっていない」と指摘。「3%台をいったん付けたからと言って利上げしたら、大変なことになる」とした。
一部報道によると、黒田東彦総裁は8月の米ジャクソンホール会合で、金融緩和策を維持する必要があるとの見解を示した。片岡氏はこうした黒田総裁の発言に触れ「少なくとも今の金融緩和を継続することが非常に重要だと私も思う」と述べた。
片岡氏は「物価上昇を伴いながら賃金が上がり、価格転嫁することが何回も広がっていけば、価格上昇が食料やエネルギーに限定されずいろいろな財・サービスに広がっていって、結果的に2%物価上昇の『ノルム』(社会的な規範)ができ上がっていくのではないか。そういう期待がここ数年の間で一番持てる局面だと思う」と話した。ただ「問題は賃金上昇や価格転嫁が広がる前に世界経済が腰折れるリスクがあることだ」と警戒感を示した。
景気悪化時の政策対応として、片岡氏は「決定的に悪い状況が起こらない限り、おそらく追加緩和の議論はあまり出てこないと思う。むしろ政策を発動してからのラグが短い政府の財政政策で対応するといったことの方がメインとしてあり得る」と述べた。物価上昇率が3%超になるなど、景気は悪いが物価は上がっているという状況の場合、「日銀として追加緩和はなかなか難しいのではないか」と語った。
9月末に期限となる新型コロナウイルス対応特別オペについては「足元の状況を見る限り、コロナオペの役割は終わったと思う」と話す一方、「融資の返済が困難となり倒産せざるをえない会社をできる限り減らす対応は必要」と指摘した。
<異次元緩和、2つの誤算>
片岡氏は黒田総裁の下での異次元緩和を振り返り、2つの誤算があったと述べた。1つ目は2014年4月の消費税率引き上げ。「政府が消費税増税をアナウンスした2013年の10月以降から予想インフレをはじめいろいろな指標がおかしくなり始め、結果的に消費増税による大きな落ち込みがあった」とした。「財政政策も金融政策も両方十分に拡大させないと2%という大きな目標を一気に達成することは難しいにもかかわらず、片方が転換してしまった。結果、物価はデフレではなくなったが、2%を達成することはできなくなってしまった」と語った。
2つ目の誤算として、量的・質的金融緩和(QQE)からイールドカーブ・コントロール(YCC)への移行の経緯を挙げた。日銀は2016年1月にマイナス金利政策を導入したが、そのことで逆ザヤとなったイールドカーブを安定化させようと同年9月にYCCを始めた。
片岡氏は、YCCの導入で金融政策の主軸を金利に移したことで「QQEでマネーを供給していく、資産を買い取って量に働きかける政策は限界ではないか、という誤解をもたらしてしまった」と語った。
一方で、足元ではYCCにより実質金利が低下しており「設備投資の拡大や来年・再来年以降も円安が持続する中で企業の行動変容、国内回帰につながることが期待される」と述べた。片岡氏は「YCCの本領発揮だ」とし、「企業も今の緩和環境を生かして変わることが重要だ」と強調した。インフレ圧力が企業の賃上げにつながり、企業行動が変化するかがカギになるとの見方を示した。
このインタビューは6日に実施しました。
(和田崇彦、木原麗花)
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