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概要:セブンイレブンのお弁当に変化が起きています。「魯珈」「ルー・ド・メール」「デリー」といった有名カレー店や牛鍋の老舗「柿安」など、全国の有名店が監修したフェアを毎月続けています。なぜこのような取り組みを実現できているのか? 担当者に話を聞きました。
8月に開催した「カレーフェス」と11月に開催した「鍋フェア」。
撮影:杉本健太郎
セブンイレブンに「何か」が起きている。
「魯珈」「ルー・ド・メール」「デリー」といった有名カレー店や、牛鍋の老舗「柿安」、人気ラーメン店の「一風堂」など、全国の有名店の監修を受けた商品を販売するフェアを、2022年1月から毎月のように続けているのだ。
いずれも行列ができる人気店ばかりで、なかにはその日の営業分の整理券がすぐになくなるお店もある。夏に食べたカレーフェアでは、カレー好きの筆者も「もう一生食べられないかもしれないと思っていた人気店の味がコンビニで食べられる」と心が踊った。
なぜセブンイレブンでは、超有名店と協力したフェアを連発しているのか。
商品開発を担当するセブン‐イレブン・ジャパン執行役員 商品本部 デイリー部長の笠石吉美氏に話を聞いた。
コンビニで「遊園地に行くようなワクワク感を」
明治四年に三重県で創業した牛鍋の名店「柿安」のお弁当。
撮影:杉本健太郎
——なぜ、毎月のように有名店と協力したフェアを実施しているのでしょうか?
笠石吉美部長(以下、笠石):2020年以降、コロナ禍で人の行動が抑制されることが当たり前の社会になりました。コンビニは通勤や通学の行き帰りの途中で使っていただくことが多く、我々としても影響がありました。
こうした厳しい状況に直面したときに、コンビニに行くこと自体を目的にしてもらおうと発想を転換しました。セブンイレブンに行くと楽しいことがある、新しい体験ができる。そういうお店を目指そうとしたわけです。
そこでイベント感を提供するために何をすればいいか考えたときに出てきたのが「食」でした。
我々にはこれまで蓄積してきたフレッシュフード(お弁当やおにぎりなど)のノウハウと矜持があります。全国に商品開発の人材が散らばっており、現地で暮らしながら、その地域の料理や食材をもとにおいしいものを研究開発しています。
人の行動が抑制されているなら、我々のリソースを活かして、全国のおいしいものを食べられるようにしようと思ったんです。
——寄り道ではなく、「セブンイレブンでおいしいものを食べること」を目的にしてもらおうということですね。
笠石:例えば、有名レストランや遊園地に行くときはワクワクしますよね。それは非日常を体験できるからです。
コンビニというとどうしても普段の生活の一部というイメージがありますが、我々が目指したのは、セブンイレブンに行っておいしいお弁当を買うこと自体にワクワクしてもらうということです。「あの有名店の味が家で食べられる!」「今度はどんな新商品が出るんだろう」という期待感を持ってもらいたいと考えました。
コロナ禍では、来客数が減った一方で、客単価が上がった。
出典:セブン&アイホールディングス2022年度第2四半期決算資料より
——コロナ禍ではコンビニに来店する客数が減った一方で、客単価が上がったそうですね。そういったことも影響しているのでしょうか?
笠石:外食業界のみなさんほど大きな変化ではありませんでしたが、(我々もコロナ禍で)成長がなかなか望めない状況になったことは間違いありません。
お弁当などの売り上げはどうしても厳しくなりました。なかでも最も落ち込んだのはおにぎりです。おにぎりは出先で買ってサッと食べることが多いものですから。
ただ、テレワークが当たり前の状況の中では、我々の商品構成も変わらざるを得ない。コロナ禍では、惣菜やお弁当を買って帰り家で食べる「中食」と、自宅で料理を作る「内食」、そして「外食」がシームレスな世界になったと思っています。
——その変化の中にセブンイレブンを組み込んでもらうための一つの方法が「フェア」だったということでしょうか。
笠石:セブンイレブンに行くことを目的にしてもらうのですから、当然それに見合った価値を提供しなければいけません。そうすると使う原料も当然見直すことになる。
ただ、我々がいきなり「高級牛肉を使ったお弁当」を出したとしても、これはご理解いただけない。そう考えると有名店とのコラボレーションすることで、少し上の価格に対してお客様の納得感が生まれると考えました。
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「名前貸しだけの商品は絶対にやりたくない」
上半期に実施したフェアのラインナップ。このほか1月に北海道フェア、2月にアジアングルメフェア、9月に関西グルメ巡り、10月に秋の味覚だより、11月に鍋フェアを開催している。
出典:セブン&アイホールディングス2022年度第2四半期決算説明資料より
——お弁当フェアでは「コラボ」ではなく、「監修」という表現を使っていますが何か理由があるのですか?
笠石:コラボというのは、お店と我々で何か世の中にないものを作り出すというイメージがあります。しかし、今我々が行っているのは有名店の味を再現することです。やるなら、お店の名物メニューをそのまま出したいという思いで商品開発をしています。
——コンビニで商品を出すことをためらうお店もあると思うのですが、どのようにして有名店の監修を実現していったのですか?
笠石:我々としては、「お金を払って名前だけ貸してもらう」というやり方は絶対にしたくなかった。Win-Winでないと意味がないと考えています。ですので、お相手がしたいことをきちんと聞いて、我々とシンクロできるかどうかを重視しています。
例えば、神田の「ルー・ド・メール」さんは、カレー好きなら誰もが一度は食べてみたいと思う有名店ですが、全国の人に食べてもらうのは難しい。そこで、我々はこの素晴らしい味を全国の人に食べてもらいたいんだという思いを伝えました。そこに共感していただいたということです。
それからもう1つ。これは私たちの先輩たちがずっとやってきたことが実になっているのですが、「セブンイレブンのファンだ」と言ってくれる人が結構多いんです。
物作りに対する評価と信頼がベースとしてあるということが、実はものすごい近道になるのです。我々が地道にやってきた部分が血肉になっています。そうした土台があるからこそ、監修やコラボも実現できていると思います。
——商品開発の中では、お店とどういうやり取りをされているのですか?
笠石:例えば「デリー」さんのカシミールカレーはそのまま提供すると、子どもやお年寄りにとっては辛すぎます。幅広い人に食べて頂くために、セブンイレブンで提供したカシミールカレーでは本来の味の要素を残しながら少しマイルドにしています。
これはお店で料理を提供するときとコンビニでお弁当を販売するときの発想の違いです。
「魯珈」さんや「エリックサウス」さんも、スパイスカレーの市民権を広げたいという思いがおありだったので、ご協力いただけました。このようにお店の哲学や目標と我々の思いが掛け算できたときに良い商品が生まれます。
PB商品は「筋トレ」のようなもの
セブンイレブンお弁当の商品開発トップに立つ笠石吉美さん。
撮影:杉本健太郎
——有名店に監修をしてもらうという選択肢の他に、プライベートブランド(PB)のセブンプレミアムなどを強化するという選択肢もあったと思うのですが、住み分けはどうなっているのでしょう?
笠石:セブンプレミアムの強化は常に行っています。
コラボ商品をどんどん入れるという形ではなく、同じ商品でも常に改良を加えています。PB商品はまさにデイリーユースであり、コンビニの基本なので相当力を入れています。PB商品の改良は「筋トレ」のようなものですね。
ここできちんと足腰を作っておく。フェア商品とPB商品のどちらかを重視するということではなく、両方ともきちんとする。実際、PB商品をリニューアルした結果、この秋に来て数字は絶好調です。
2022年度に多くのPB商品をリニューアルした。
出典:セブン&アイホールディングス2022年度第2四半期決算資料より
——とはいえ、いかにPB商品で商品開発力を培ってきたとしても、有名店の味を果たしてそのまま再現できるものでしょうか。出来立てを出すお店の料理とコンビニに並べるお弁当では、商品設計の概念自体が違う気がします。
笠石:これは順番が逆なのです。我々セブンイレブンの強みはフレッシュフードだと思っています。
おにぎりやお弁当、チルドのカップ麺、サンドイッチにお惣菜。フレッシュフードで培ってきた商品開発のプロセスがあったからこそ、セブンプレミアムができました。我々は、「作った翌日に食べても味や品質が落ちないものを作るためにはどうすればいいか」という膨大なノウハウを溜め込んできたわけです。
——だからこそ、有名店の料理も再現することができると。
笠石:「セブンさんの商品ってすごいですよね」と言っていただけるのは、多分そういうところなんだと思います。監修していただいたお店をがっかりさせるような商品は絶対に作りません。
ですので、時間軸からいうと中食、フレッシュフード。そして、その技術をセブンプレミアムに投入して大きく成長し、さらにそれらを結集して今回のフェア・監修商品ができたんです。
——ちなみに、有名店監修のフェアのスタートが決まったのは、どのタイミングだったのでしょうか?
笠石:実は今まで我々はあまりコラボや監修商品を販売してこなかったのですが、去年の秋頃に永松文彦社長から「毎月フェアをやるように」という鶴の一声から始まりました。
——毎月というのはすごいですね。
笠石:正直最初は驚きました。ただ、コロナの終息が見通せないなかでは、それくらいやらないといけないのだとわかってきました。
お客様を飽きさせないためには単発でやっても意味がない。毎月新しい価値を提供しないといけない。もし、この鶴の一声がなければ、2カ月に1回とか、開発商品がたまった時にやるといったものになっていたかもしれない。
そうなっていたら、絶対に今ほどの効果にはなっていなかったと思います。
続けることで生まれる「好循環」
フェアを通じて通常のビーフカレーの味も上がった。有名店と協力することで、自社の技術力を高めることにもつながった。
撮影:杉本健太郎
——フェアは、実際どれくらいの売り上げにつながっているのでしょうか?
笠石:4月に「カレーパーティー」、8月に「カレーフェス」を実施したのですが、4月と比べて8月のフェアは1.7倍の売り上げ効果がありました。セブンIDやnanacoのビッグデータを解析すると、過去3カ月お弁当を買っていない人がフェアの商品を買っているという結果が出ています。
特筆すべきは、フェアが終わった後もお弁当を買っていただいているんです。フェアのお弁当がおいしかったので、「通常のビーフカレーも買ってみよう」とつながっているのだと思っています。
ちなみにカレーフェアは今年2回やりましたが、そうするとお店と信頼関係ができて、1回目には教えてもらえなかった門外不出のレシピを教えてもらうことができました。
我々は「デリー」さんと20年のお付き合いをしていますが、看板商品の「カシミールカレー」のレシピはなかなか出していただけなかった。大切なメニューですからね。
第1弾のフェアでは、ナンバー2のコルマカレーを提供いただいたのですが、これを非常に高く評価していただき、第2弾のフェアではカシミールカレーの許可が出ました。
——監修してくださるお店との信頼関係が構築でき、次のフェアにつながる。
笠石:これがフェアをやっている効果ですね。
お互いに成長していく。それともうひとつ大きな効果がありまして。我々の既存商品のレベルも上がるのです。これは技術を盗むということでは決してなくて、商品開発の過程で料理の基本的なことをシェフに教えていただけるのです。
神田「ルー・ド・メール」さんと組ませていただいときは、お肉を煮込む時に野菜のブイヨンと赤ワインをちゃんと入れないと、お肉に味が入っていかないと教えていただきました。その知恵を活かして、我々がもともと出していた通常のビーフカレーの味もぐっと上がりました。
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