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概要:延長保証の「Kiva(キヴァ)」がシリーズAで約4億5000万円の資金調達を行いました。国内外の投資家に提出したピッチデック19枚を、CEOの野尻航太さんのインタビューと共に読み解きます。
延長保証サービスを手がける「Kiva(キヴァ)」が、2022年12月、シリーズAで約4億5000万円の資金調達を行ったと発表した。SBIインベストメントなどのVCらを引受先とする第三者割当増資で、グローバルに展開しGrab、Fundbox、Paidyなどに出資するフィンテック特化型VCの「Arbor Ventures」も参加している。
国内外の投資家に提出したピッチデック19枚を、CEOの野尻航太さんのインタビューと共に見ていく。
インシュアテックの信頼高めた大手との提携
Kivaの野尻航太CEO(24歳)。同社は2020年12月に創業した。
撮影:竹下郁子
Kivaの延長保証「proteger(プロテジャー)」は、同社と提携保険会社である損害保険ジャパンによるサービスで、ECサイトに対し、消費者が商品を購入する際の延長保証を提供する。メーカー保証は多くが1年だが、protegerに加入すればさらに1〜3年間の保証が受けられる。
たとえばポール&ジョーの2万3100円(税込)の腕時計の場合、保証料は延長1年で2079円、2年で3927円、3年で5313円という具合だ。
protegerのローンチは2021年5月。スタートアップによるインシュアテックは信頼を得るのが関門だが、
「保険大手の損保ジャパンと提携したことが、投資家の信頼獲得につながった側面は大きいと思います。
リード投資家であるSBIインベストメントの投資委員会(SBIがKivaに出資するかを決める会議)前日、日経新聞にうちと損保ジャパンが提携したという記事がバーンと出たのも良かった(笑)」
そう振り返るのは、Kiva CEOの野尻航太さん(24歳)だ。
「バリュエーションは強気で」「銀行系はマスト」
提供:KivaのHPより
今回のラウンドには前述のSBIインベストメントの他、国内からは三井住友銀行系のSMBCベンチャーキャピタル、ココナラスキルパートナーズ、ALL STAR SAAS FUND、New Commerce Ventures、Plug and Play Japan、メディアジーンなどが参加している。
「保証を提供しているので、財政基盤がしっかりしている銀行系のファンドはマスト」。そして「CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を入れるなら競合他社を2社以上」と考えて臨んだそうだ。
「『保証という形で消費者に安心を提供しているが、そもそもあなたたち自身は安心なのか?』と、創業してから耳が痛くなるくらいずっと言われてきました。メガバンク系のファンドに出資してもらうことは、金額以上の圧倒的なバリューがあります。
競合CVCに入ってもらうのは、意識している人たちの間で競争原理を働かせるためです。1社だけだと、こちらの交渉力が弱くなってしまうので」(野尻さん)
撮影:竹下郁子
交渉といえば、重要なのはバリュエーションだ。
「バリュエーションは強気でいきました。投資家からは『ちょっと高いんじゃない?』『出資したいがバリュエーションは(Kivaが提示した)半値で』と言われたことも。
サービスには絶対的な自信を持っていますし、僕らはこんなもんじゃないと思っているので、そこは粘りましたね」(野尻さん)
という。資金調達では一体どんな交渉があったのか? 早速、ピッチデックを見ていこう。
(※KivaにはBusiness Insider Japanの運営元であるメディアジーンが出資しています)
延長保証で客をリピーターに
提供:Kiva
提供:Kiva
従来の延長保証は高価格帯の商品につけるもので、さらに保険会社と組んで商品1つずつに対して保険料を決めてオペレーションを考える必要があった。protegerの特徴はこれらの過程に加えて修理・交換までKivaが一気通貫で請け負うことで、ECサイトが負担なく延長保証を導入できる点にある。
「消費サイクルは明らかに長くなっています。事業者からすれば1年に1回新商品が売れるほうがいいのかもしれないけれど、それは現実的じゃない。だったら3年間の保証をつけて、他のブランド・メーカーに乗り換えさせないほうがいい。
延長保証の加入者はそうでない人に比べてリピーターになる割合が2倍ほど高いというデータもあります。客が離れないようにする方法として、延長保証が効くんです」(野尻さん)
メリットはそれだけではない。
「ブランドやメーカーがずっと欲しがっていたものが手に入ります。購入後の客との接点、そして故障データです。特に故障データは各社テストはしているものの、実際のところは分からない。使用期間や使う人・家族の構成、生活パターンによっても異なりますしね。
これらのデータは新商品の開発に活かせるはずです」(野尻さん)
CVRは平均1.4倍アップ
提供:Kiva
現在の取り扱い保証数(延長保証をつけた商品数)は約5万点で、損保ジャパンが持つデータをもとに、日々、最適な保証料にチューニングしている。
延長保証導入後の対象商品におけるECサイトのCVR(コンバージョン率)は平均1.4倍向上しているという。
チャットで申請、「保証書どこいった?」もナシ
提供:Kiva
提供:Kiva
ECサイト側だけでなく、購入者の負担を減らすことにも徹底的にこだわった。
修理や交換など保証が必要になったら、チャットで申請。保証加入時に登録したメールアドレスに必要な情報は全て紐づいているため、面倒な「保証書」の管理も不要だ。
家電、キャンプギア、カバンにも対応
提供:Kiva
protegerの強みは、幅広い商品カテゴリーだ。家電はもちろん、家具、キャンプ用品、スーツケースなどこれまで延長保証の対象となることがなかった商品にまでその幅を広げている。
「日本初の試みが多いので、営業する時は大変です(笑)。でも、こんなに潜在需要があったんだと、良い意味でECサイト側の期待を裏切る結果が出ています」(野尻さん)
海外VCも驚いた平均加入率は32%
提供:Kiva
提供:Kiva
提供:Kiva
提供:Kiva
「良い意味で期待を裏切る結果」の最たるものが、平均32%という保証加入率の高さだ。
「家電では50%を超える商品もあります。一方、同じような延長保証を提供している海外競合の平均保証加入率は13%ほどなので、この数字には海外の投資家もすごく驚いていました。
国民性の違いもあるのかもしれません」(野尻さん)
実際に商品を見てから保証に入りたいと思う人にも対応するため、購入時だけでなく、購入後60日間は加入できるようにしている商品もあるという。
廃棄しないサステナブルなビジネス目指す
提供:Kiva
サステナブルなビジネスであることも重視しているといい、回収した破損商品は廃棄せず、提携している全国約400拠点の修理工場などで修理やリユースをしている。
海外には競合サービスも
提供:Kiva
提供:Kiva
提供:Kiva
海外の投資家に向けては、国内投資家とは異なるピッチ資料も用意した。上のスライドはその一部だ。海外の競合サービスとの比較(消費者視点、ECサイト視点それぞれ)と、同じく競合であるアメリカの「Extend」などの資金調達金額が記されている。
保証料はECサイトにも分配
提供:Kiva
提供:Kiva
Kivaの直近の流通取引総額(GMV)は約20億円。「2023年度末には5倍の100億円にしたい」(野尻さん)と意気込む。
気になるビジネスモデルだが、延長保証の加入者から得た保証料がKivaの収益となり、そこからECサイト、そして商品が故障した際の弁済費用などをKivaと共に負担し合っている損保ジャパンにも保証料を分配している。
海外競合は徹底的に「コピー」して闘う
提供:Kiva
海外VCから特に多く尋ねられたのは、(1)「どのようにして優位に立ち続けるのか?」(2)「海外の競合サービスが日本に進出したらどうするのか?」という成長戦略だったという。
(1)については上のスライドが示すように、 2024年まではブランドの公式オンラインストア(カートパッケージシステムは小〜中規模の事業者、フルスクラッチシステムは大規模の事業者を指す)への導入を進め、最終的にはAmazonやヤフー、楽天などの大手ショッピングモールに導入されることを目指す。
現状では国内に競合サービスはほとんどないが、気になるのは(2)だろう。日本の延長保証の加入率の高さを知れば、海外の競合スタートアップが参入する可能性は少なくない。
「君たちは日本版のExtendだと思うが、彼らと何が違うのか?彼らが進出してきたらどうするのか?と聞かれました。僕の答えは『コピーコピーコピー』です。彼らがやってるからうちはやらないでおこうということも出てくるかもしれませんが、基本的には『張り付きます』と。
投資家の反応ですか? 笑ってましたね(笑)。その後で競合の戦略について教えてくれました」(野尻さん)
まさにそれこそが野尻さんが今回、海外VCにラウンドに参加して欲しかった狙いだ。
「競合で先行しているスタートアップが何を目指していて、事業のコアはここで、という本当のところは絶対にメディアを通しては分かりません。僕らは予想することしかできない。そうした情報を現地の投資家を通してキャッチアップしたかったんです」(野尻さん)
日本では誰を巻き込むかが大事
提供:Kiva
一方で商習慣は国によって異なる。それを主張したのがこのスライドだ。
【翻訳】
成長戦略 日本のECを取り巻く状況
日本のEC業界における重要なプレイヤーは、「カートシステム」と「ECデベロッパー」「メディア」「サードパーティツール」です。ECデベロッパーはカートシステムを利用してECサイトを開発し、メディアから情報を入手し、サードパーティツールからさまざまなサポートを受けます。これが日本のECを取り巻く環境です。
当社はこの1年、「カートシステム」「メディア」「サードパーティツール」の3者の関係性構築に注力してきました。売上も重要ではありますが、それ以上に上流の関係性がものを言うと実感しています。この関係構築こそが、protegerの成功に不可欠なのです。
これについて野尻さんは次のように話す。
「日本のサービスの広がり方はアメリカのような『PLG(Product-Led Growth):製品主導』ではなく、『SLG(Sales-Led Growth):セールス主導』だと思っています。独自の商習慣があって、それが海外企業の参入障壁になっている。
だからこそ誰をどんな風に巻き込むかが重要で、そこはしっかりと説明しました」(野尻さん)
独走するために特許も取得
提供:Kiva
そんなprotegerは先日、特許を取得したばかりだ。
「特許を取得する理由は2つのケースがあると思います。1つは利用料をもらうため、もう1つは競合への対抗手段として。僕らは後者です。延長保証の市場で勝ちきりたい」(野尻さん)
今後は海外旅行保険や火災保険にも進出する予定だという。
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