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概要:「異例の暖冬」と話題になった欧州の年明け。誰もがロシア・ウクライナ戦争に伴うエネルギー不足の懸念された欧州には朗報、と思いを馳せたことでしょう。実際、この暖冬の経済的影響は世界の勢力図を塗り替えるくらい大きく……。
年明けの欧州諸国では、1月の観測史上最高気温を更新する地域が相次ぎ、雪不足や水の使用制限など生活への影響まで出た。画像は気温が20℃を超えたスペイン南部マラガ市内の様子。
REUTERS/Jon Nazca
米金融情報大手S&Pグローバルが1月24日に発表した1月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)は50.2と市場予想を上回り、景気拡大・縮小の分かれ目となる50を超えた。前月比ではプラス0.9ポイントの大幅上昇となった。
業種別に見ると、サービス業PMIが市場予想を上回る50.7と、前月から改善した。注目の製造業PMIも市場予想を上回って48.8と、分かれ目の50こそ超えなかったものの前月比ではプラス1.0ポイントの大幅改善を記録した。
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下の【図表1】を見ると分かるように、ここ数カ月の製造業PMIの動きから、ユーロ圏には他の国・地域より勢いがあると感じられる。
【図表1】主要国の製造業購買担当者指数(PMI)の推移。パンデミック発生直後の下限はあえてカットしてある。
出所:Bloomberg、Markit資料より筆者作成
2022年1~10月の景況悪化ペースはユーロ圏が抜きん出ていたが、それは(ロシア・ウクライナ戦争に伴う)エネルギー危機で欧州は史上最悪の冬を迎えると予想されていた当時の企業心理が強く反映されていたからだろう。
しかし、フタを開けてみればこの冬は欧州各地で観測史上最高気温を記録、地球温暖化の懸念が上回るほどの暖冬ぶり。
必然的にエネルギー需給のひっ迫は回避され、経済成長を犠牲にした必死の節電努力も相まって、天然ガス価格は年初来18%下落。1メガワット当たり58ドル強(1月24日時点)で取引されている。2022年6月に急騰が始まる前を下回る水準だ【図表2】。
【図表2】2022年以降の天然ガス価格(TTFオランダ先物1カ月)の推移。
出所:Macrobond資料より筆者作成
半年ほど前、筆者は本連載で欧州の天然ガス価格動向について次のように指摘した(2022年9月21日付)。
「天然ガス価格は(2022年)9月に入ってから顕著に下がっている。ドイツを筆頭に各国が消費量を絞っているからで、言い換えれば『成長を放棄』するという高価な代償を支払って天然ガス価格の低減を実現している状態とも言える」
当時、ドイツは計画停電などの影響で成長率の低迷に直面すると言われ、そのダメージはロックダウン(都市封鎖)並みが想定されていた。
その深刻さを思えば、今冬のユーロ圏経済は文字通り「神風」に救われたと言っても過言ではないだろう。
1月17日に発表された同月の欧州経済研究センター(ZEW)景況感指数(ドイツの景気見通しを指数化した経済指標)は、前月比プラス40.3ポイントの大幅上昇を記録し、11カ月ぶりに景気拡大・縮小の分かれ目となるゼロを超えた【図表3】。
【図表3】欧州経済研究センター(ZEW)景況感指数の推移。現状指数(青線)と6カ月先の期待指数(橙線)。
出所:Macrobond資料より筆者作成
ZEW景況感指数はアナリストや市場関係者を対象とするアンケート調査結果から算出され、6カ月先の景況感を示唆すると言われる。
だとすれば、この1月の数字はドイツ経済の深刻な景気後退が避けられつつあることを示しているのかもしれない。
なお、天然ガス価格が急落している背景には、すでに述べたような気候要因以外に、中国の天然ガス在庫が十分なために同国のガス輸入業者の購入した分が欧州に振り向けられる(振り向けざるを得ない)状況もある。
ブルームバーグ報道(1月16日)によれば、中国のガス輸入業者は国内向けの販売価格が低迷していることもあり、2月および3月の出荷分を欧州に回す算段をしているという。
中国のゼロコロナ政策終了により世界のエネルギー需給がひっ迫するとの懸念もあったが、それも今のところ杞憂に終わりそうだ。
ただし、天然ガス価格が下がったとは言え、歴史的に見ればまだまだ高い。足元の58〜59ドルという水準は、パンデミック直前の5年平均(2015~19年)約17ドルの3倍以上。価格が正常化したとまでは言えない。
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ユーロ圏が「台風の目」になる可能性
ユーロ圏の経済復調は、当然ながら通貨ユーロの相場を押し上げる一因にもなる。
欧州中央銀行(ECB)の利上げサイクルは、域内経済へのダメージに配慮して途中で挫折するのではとの見方もあったが、ここまで述べてきたような景況の回復により、その可能性はだいぶ後退した。よって、金利面からユーロが支えられる可能性は高い。
また、エネルギー危機が回避されたことで、需給面からもユーロ相場には追い風が吹くだろう。
2022年夏(8月12日付)の寄稿で筆者は以下のように予測した。
「割高なスポット価格でのロシアからのエネルギー輸入がいま以上に増えれば、貿易赤字はさらに拡大し、いよいよ経常収支の赤字も視野に入ってくる」
「これまでは『世界最大の経常・貿易黒字を誇るドイツひいてはユーロ圏』という実態に根ざした通貨ユーロの強固な需給が、相場の底割れを防いできた面がある」「その強固な需給がウクライナ危機を受けて揺らぎ始めている」
ところが、筆者の予測は外れ、予想外の暖冬によってドイツの年間貿易赤字転落はギリギリ回避された。ユーロ相場もそうした展開に応じて切り返した面があるだろう【図表4】。
【図表4】ドイツ貿易収支(赤線)とユーロ/ドル相場(青線)の推移。
出所:Macrobond資料より筆者作成
2000年代前半、ユーロの対ドル相場がパリティ(1ユーロ=1ドル)を割り込んでいた時期がある。そこから抜け出した理由として欧米金利差の逆転などが指摘されたが、上の【図表4】左側を見ると分かるように、当時はドイツの貿易収支が顕著に改善するタイミングでもあった。
今回も同じように貿易収支の改善がユーロ相場の上昇を支える展開になっていくのか、注目される。
これから中国の天然ガスが欧州に回り、需給も緩和される春の訪れが迫ってくる。前節の最後で触れたように、天然ガス価格の下げ余地はまだ大きいので、ユーロ圏経済の交易条件は改善が続く公算が大きい。
そう考えると、ユーロ圏経済と通貨ユーロは2023年の「台風の目」になる可能性がある。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
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