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概要:投資家たちは歴史が示す不都合な真実に目を向けていない…米金融大手モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は、2000年以降の企業業績に関する指標に注目し、この先の株価急落の可能性に警鐘を鳴らしています。
投資家たちは歴史が示す不都合な真実に目を向けていない……米金融大手モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)はそう指摘する。
Reuters
不測の事態が次々と起きた2022年、米ウォール街の主要アナリストの中で最も正確な目標株価を設定したのは、米金融大手モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)のチーフ米国株ストラテジスト、マイク・ウィルソン氏だった。
そのウィルソン氏がいま再び、株式市場の暴落の可能性に警鐘を鳴らす。同氏は2月6日の顧客向けメールで、S&P500種株価指数はまだ底打ちに至っていないとの見方をあらためて示した。
同氏によれば、2月第2週に入って企業の予想1株当たり利益(EPS)成長率(投資家が想定する12カ月先の企業収益見通し)はマイナス転換し、企業の業績後退がこの先に予想されるという。
これまでについて言えば、予想EPS成長率のマイナス転換は株価の低迷に直結してきた。
下の【図表1】はモルガン・スタンレーが作成したもので、予想EPS成長率とS&P500種指数の推移を並べて示してある。図表には「株価下落が私たちの後ろではなく、前にあることを歴史は示している」との印象的な説明が付されている。
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【図表1】米企業の予想1株当たり利益(EPS)成長率(黄線)とS&P500種指数(青線)の推移。前者は2000年以降で5回目のマイナス転換(右端の囲み部分)。
Morgan Stanley
「こうした動き(=予想EPS成長率のマイナス転換)は過去23年間で4回しか起きていません。いずれのケースでも(2001年、08年、15年、20年)直後に大幅な株価下落が発生しています。
この当社分析をさらに強力に裏付ける事実があります。それは、歴史的に株価急落の大多数が予想EPS成長率のマイナス転換『後』に起きているということ。言い換えれば、迫り来る企業業績の後退はまだ(下落が確認されていない以上)株価に織り込まれていないわけです。
当社による予想EPS成長率の推移見通し(【図表1】の右端に見える黄点線)が妥当だとすれば、企業業績の伸びには今後急ブレーキがかかると思われます」
ウィルソン氏は企業の業績後退を予想する根拠として、下の【図表2】も示している。
【図表2】パンデミック発生以降における、各決算発表シーズン中のEPS(1株当たり利益)翌四半期見通しの修正実績。2023年第1四半期(1〜3月)の下方修正は過去最悪水準。
Morgan Stanley
今回の業績発表シーズン(2022年第4四半期および通期分)に伴う各企業の2023年第1四半期(1〜3月)業績見通しは、EPSの下方修正率がパンデミック発生以降で最悪水準となっており、これを見る限り企業業績の後退は避けがたいように思われる。
なお、ウィルソン氏は2022年12月時点の予測として、S&P500種指数は第1四半期に3000~3300ドルで底を打ち、2023年下半期には3900まで回復するとしているが、2月6日付の顧客向けメール(前出)でも基本的な見方は変えず、年内の動きが若干後ろ倒しになる程度としている。
「市場コンセンサスを大幅に下回る当社の企業業績予想と、そうした業績低下に直面して米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を通じてできることは少ないという事実、その両方を市場が織り込むまでにはまだ時間がかかりそうですが、当社としては独自の予測に引き続き確信を持っています」
S&P500種指数は2月に入って4000〜4100のレンジで推移しており、ウィルソン氏が予測する底入れレンジが正しければ、現在より18~27%下落する計算だ。
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金融大手の見方は似たりよったり
ウィルソン氏と同様、ウォール街の他の金融専門家たちも、足元の相場水準は景気後退入りを回避してソフトランディングできるシナリオをベースにしており、アップサイド(上振れ幅)は限定的と予測する。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のチーフ米国株ストラテジスト、デイビッド・コスティン氏はモルガン・スタンレーと同じ2月6日付の顧客向けメモで、「ソフトランディング、つまりトレンドを上回る成長はすでに株価に織り込み済み」と指摘した。
ただし、コスティン氏はウィルソン氏ほど弱気ではない。
実際、ゴールドマンはアメリカおよびグローバルの各種マクロ経済指標が改善されたことを受け、S&P500種指数の短期(3カ月)目標をすでに3600から4000に上方修正している。年末目標も同じく4000なので、現在とほぼ同水準で年越しを迎える想定だ。
スイス金融大手UBSの富裕層向け資産運用部門グローバル・ウェルス・マネジメント(Global Wealth Management)のソリタ・マルチェリ北南米部門最高投資責任者(CIO)も、株式のリスクリワード比率を「魅力的とは言えない」とネガティブ評価した上で、投資家には「この先のボラティリティ上昇に備えるよう」助言しているという。
マルチェリ氏はウィルソン氏と同じく、2022年10月に記録した52週安値との比較で約16%、年初来で約8%上昇という絶好調の相場について、投資家たちは企業の業績下方修正に十分な注意を払っていない(つまりその分を織り込んでいない)と考えている。
「投資家の視線はいま企業業績以外の別のところに向いています。それは、中国のゼロコロナ政策終了に伴う経済活動再開であり、インフレ沈静化であり、タカ派姿勢を維持してきたFRBの若干の軟化なのです」
マルチェリ氏はS&P500種指数の年末目標を、ウィルソン氏と同じく4000に設定している。
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ウォール街の主要ストラテジストが設定したS&P500種指数の年末目標の中央値は4075だ。
最低値はパイパー・サンドラー(Piper Sandler)のマイケル・カントロウィッツで3225、最高値はファンドストラット(Fundstrat)のトム・リーで4750と幅があるものの、大多数(24人中16人)のストラテジストは3800~4200のレンジに収まっている(ブルームバーグ調べ)。
それを踏まえると、これから年末までの潜在リターンはほぼゼロということになるので、投資家に残された大きな問題は、ウィルソン氏が警鐘を鳴らすように、その間の3四半期強に大幅な相場急落があり得るのかどうかという点に尽きる。
その答えは、FRBのタカ派政策に米経済がどれだけ持ちこたえられるか次第と思われる。FRBは過去数十年で最もハイペースかつアグレッシブな利上げサイクルを継続中で、直近では2月7日にもパウエルFRB議長が「さらなる利上げが必要」と発言している。
労働市場は歴史的な力強さを示しており、1月の米雇用統計では、失業率が3.4%と1969年以来の低水準を記録。非農業部門雇用者数も前月比51万7000人増と、市場予想を大幅に上回った。
消費者物価指数(CPI)は2022年6月をピークに鈍化を続けてきたものの、2月14日に発表された1月の数字は市場予想を上回る前年同月比6.4%の上昇(12月は6.5%上昇)。前月比ではインフレが加速する結果となり、厳しい現実が浮き彫りになった。
景気後退入りを回避し、インフレ率を目標の2%まで引き戻すソフトランディングの可能性が消えたわけではないものの、FRBのハト派転換への道筋は少なくとも現時点では見えてこない。
いずれにしても、ゴールドマンのコスティン氏とUBSのマルチェリ氏が指摘するように、2023年中の株価上昇には限界がありそうだ。
FRBは利上げのペースこそ減速させたものの、2023年中の利下げや緩和政策導入は適切でないとのスタンスを崩していない。また、ここまでの利上げが実体経済に影響を及ぼすのはこれからのことで、第2四半期(4〜6月)以降は企業業績の低下も予想される。
ウィルソン氏が警告するように、今後数カ月のうちにも投資家たちはその不都合な現実に直面する可能性がある。
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※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
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