アップルの年利4.15％預金、現金黄金時代の象徴か－落とし穴も

何年も低金利が続いた後、高利回りを提供する貯蓄預金口座の時代がやって来た。

アップルは今週、ゴールドマン・サックス・グループと共同開発したクレジットカード「アップルカード」の保有者向けに手数料や最低預金残高要件なしで、年利4.15％の新商品を投入した。同時に、ゴールドマンの消費者部門マーカスは年利を過去最高の3.9％に引き上げた。

アップルとゴールドマンの貯蓄預金口座、年金利4.15％－米平均の10倍

これらはすべて、現金相当資産の魅力が高まっている例だ。何年にもわたってほぼゼロの金利が続いた後、こうした資産がまともなリターンをもたらすことは、リセッション（景気後退）懸念の中である程度投資家を守る効果がある。貯蓄商品の利回りがこれほど高いなら、株式市場で損失を被るリスクを冒す必要はないと投資家は考えるだろう。

利回りの高い貯蓄預金と市場での投資を比較検討する際、何を考慮すべきかを金融の専門家に尋ねてみた。

機会費用

貯蓄商品の高金利に誘惑されるのはたやすいが、 アップルの利回り4.15％もまだ、３月に５％だった米インフレ率より低い。

テキサス州を本拠とするチザム・ウェルス・マネジメントのオーナー、ジャロッド・サンドラ氏は、購買力の尺度で考えることを勧める。貯蓄預金口座の残高は増え続けるだろうが、残高の伸び率は現在、物価上昇率に追いついていない。

エンベスト・アセット・マネジメント（コネティカット州）のパートナー、カレン・オグデン氏は、株式市場への投資が依然として長期インフレに打ち勝つ最善の方法の一つだと言う。

「重要なのは、自分の時間軸を知り、リスクに耐え得る自分の能力を認識することだ」と同氏は述べた。

目先の株価ボラティリティーに関する懸念は全く不当ではない。ヘッジファンドは相場下落を見越した取引を積み上げているし、リセッションや企業収益低下の懸念が広がる中で投資信託からは資金が流出している。

ただ、ネクスト・ミッション・ファイナンシャル・プランニングのオーナー、マイク・ハンスバーガー氏は、今後５年かそれ以上の期間に資金を必要としない人にとっては、株式の分散ポートフォリオが依然として最良の道だと主張した。

利子課税

高利回り貯蓄預金口座の一部預金者は、資金を口座から引き出さなくても利子はそれが発生した年に課税対象になることを理解していない可能性がある。

ファイナンシャルプランナーでノースブルック・ファイナンシャルの税担当ディレクター、エリオット・ペッパー氏は「米国債に投資すれば資金を少し長く固定する必要があるが、それでも比較的高い利率を得ることができる。現金化するまで税金はかからず、州税は完全に免れることができる」と説明した。

もちろん、ほとんどの投資で最終的には税金が発生するが、預金以外の株式や債券など投資では売却するまで税金はかからない。

高利回りの貯蓄預金口座に入れる現金の適正額はどのくらいだろうか。キール・ファイナンシャル・パートナーズ（ウィスコンシン州）のファイナンシャルアドバイザー、ジェレミー・キール氏は、緊急資金としての３－６カ月分の生活費を勧める。それ以上の額は長期投資に回せばよいということだ。

セキュリティーリスク

先月の米シリコンバレー銀行（ＳＶＢ）破綻が浮き彫りにしたように、米連邦預金保険公社（ＦＤＩＣ）の限度額である25万ドル（約3370万円）までの預金が保証される金融機関に資金を預けることは極めて重要だ。

高利回り貯蓄預金口座にそれ以上の預金がある場合は必ず分散させるようにと、マリーナ・ウェルス・アドバイザーズ（カリフォルニア州）のプリンシパル、ノア・ダムスキー氏は助言した。

「ＦＤＩＣの限度額に達した場合、限度額内に預金を抑えるため新たな金融機関を探すよりも、同じ金融機関を通じ米国債に投資する方が便利だ」という。

また、ある銀行での預金がＦＤＩＣの限度額を超えた場合に他のＦＤＩＣ保険対象機関に電子的に送金してくれるサービスもある。

アップルの新商品に関しては、あまりに多くの個人情報と財務情報を一つの会社に保持させることのリスクがあるとノースブルック・ファイナンシャルのペッパー氏は警告する。

「iPhone（アイフォーン）の紛失や盗難は誰もが避けたいことだが、携帯電話を事実上の取引銀行にすれば、紛失や盗難、アップルＩＤがハッキングされた場合のトラブルはさらに大きくなる」と同氏は指摘。

また、アップルの新貯蓄預金口座を利用するにはアップルカードを作る必要がある。それによって予算が許すよりも多くのお金を使いたくなるようであれば、貯蓄預金もカードもやめておくのが最善かもしれない。