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概要:米株式市場は安値からの上昇率が2割を超えて強気相場入りし、2022年初日に記録した過去最高値に迫る勢いです。が、スイス金融大手UBSは独自のチャート9点を紹介した上で、「23年中の景気後退入りは不可避」との見方を崩しません。
スイス金融大手UBSは2023年中に米国株のバリュエーション急落を予想している。
wildpixel/Getty Images
米株式市場は直近安値からの上昇率が2割を超えて強気相場入りし、2022年1月3日に記録した過去最高値に迫る勢いが続いている。
S&P500種株価指数は7月7日終値で4398.95。ピークに向かってもう一段飛躍する直前、2021年7月末とほぼ同水準だ。
しかし、ウォール街の景気後退懸念が完全に消え去ったわけではない。米投資銀行エバーコア(Evercore)の創業者兼上級会長ロジャー・アルトマンのような著名投資家でさえ、2023年末までの景気後退入りを予測している。
慎重な見方が消えないのには理由がある。それは、年初来の株価上昇は市場全体として見る限り悪くないものの、実際に株価上昇の起きているメカニズムに目を向けるとかなり複雑なものだからだ。
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人工知能(AI)関連のビジネスを手がける巨大ハイテク企業の存在が足元の株価上昇に拍車をかける形になっており、この勢いを長期持続するのは難しいことをすでに多くのアナリストが指摘している。
例えば、米金融大手チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)マネージングディレクター(トレーダー教育担当)のジョー・マッツォーラ氏は、この強気相場で値上がりした銘柄は近いうちに調整局面を迎え、アウトパフォームから市場平均に近づいていくとみる。
さらに、スイス金融大手UBSのアナリストチームの見立てでは、これから調整局面を迎えるのはハイテクセクターだけではない。同社チーフフトラテジストのブハノ・バウェジャ氏は6月28日付の顧客向けレポートでこう指摘する。
「当社含めてウォール街の大半のアナリストは、2023年中に景気後退入りし、それに伴う企業の業績悪化が株価下落につながる展開を予測し、繰り返し指摘してきました。
企業業績の伸びは投資家が語るシナリオより弱く、市場の織り込み度に比べた場合は、はるかに弱いものになると思われます」
ただし、弱気筋の専門家は逆風のたびに企業業績の悪化を要因として挙げてきたが、今回は必ずしもそうならないとバウェジャ氏は説明する。
「銘柄間の相関性の低さ、信用格付けの低下、流動性低下の加速(という株式市場の現状)が示唆するのは、企業業績の悪化を待たずしてバリュエーションの低下が始まる可能性です」
バウェジャ氏らUBSのアナリストチームは、2023年中の株価急落を予想する根拠となる「エッセンシャル(最重要)」チャート9点も併せてレポートに掲載している。
世界経済の伸びは、投資家が予測するよりはるかに弱い。
【図表1】世界経済の伸びは投資家が言うより弱く、市場の織り込み度よりはるかに弱い。
UBS
2023年が始まるやいなや、厳格な行動制限の続いていた中国の経済再開と想定以上のエネルギー価格下落を背景に、世界経済は大きな伸びを見せた。
しかし、その後は世界中で減速が見られ、足元では1.8%程度まで戻している。これはパンデミックがまだ猛威を振るっていた2020年第4四半期(10〜12月)と同じ水準だ。にもかかわらず、市場は3.6%という高い成長率を織り込んでいる。
2023年の株式市場をけん引してきた流動性は低下に向かう。
【図表2】何が2023年の上昇相場、強気相場をけん引してきたのか。2020年4月以降のS&P500種株価指数について、寄与度の累積変化を見ると、一義的には「流動性(Liquidity)」(青い部分)であると分かる。
UBS
年初来のS&P500種株価指数の上昇幅13%のうち、およそ9%が流動性に起因するとUBSは分析している。ただ、3月にシリコンバレーバンクの破綻をきっかけに広がった銀行危機の影響で、年内にはグローバル規模での流動性の枯渇が起きると投資家は予測している。
FRBのバランスシートはさらなる縮小に向かう
【図表3】米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートは年初来2%縮小。2023年末には10〜15%の縮小となる見通し。
UBS
米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年6月から量的引き締め(QT)を進めており、バウェジャ氏によれば、バランスシートは2023年末までに72億5000万ドル〜75億ドルに縮小する可能性が高いという。
量的引き締めが株価に与える影響を定量化した先行調査に基づき、バウェジャ氏らアナリストチームは、今後6カ月以内にバリュエーションが(量的引き締めの影響で)低下すると予測する。
信用格付けは引き下げ基調が続く
【図表4】レバレッジドローン指数の格付け分布。「B」の割合が減り、より格付けの低い「CCC+ to C」「D」の割合が増加中。間もなく株式バリュエーション低下を誘発するトリガーに。
UBS
信用格付けはレバレッジドローンの全てのバケット(カテゴリー)で悪化している。歴史的に見て、こうした動きには株式バリュエーションの低下が伴う。
企業業績は市場予想を下回る
【図表5】すぐにではなくても、ほとんどの企業が遠からず業績低下を経験することになる。四半期ごとの1株当たり利益(EPS)について、ハイテク銘柄(左)とそれ以外の銘柄の推移。半透明部分は23年下半期以降の見通し。
UBS
バウェジャ氏は企業の業績見通しについて、経済データが示す水準よりはるかに楽観的に設定されていると評価している。一方、UBSのアナリストチームが予測する2023年下半期の企業業績は、市場コンセンサスを12%下回る。
「企業はまだ良好な資金調達環境が続き、堅調な受注残も抱えているため、市場の業績予測の下方修正は第3四半期決算の発表まで持ち越されることになるでしょう」
なお、バウェジャ氏は2024年の業績見通しも楽観的すぎるとみている。
銘柄間の株価相関は低い、しかしボラティリティは高い
【図表6】銘柄間の相関性の低さは、取引量増加とバリュエーション低下の予兆。S&P500種の株式相関係数(期間1年、青線)とボラティリティ指数(VIX)の3カ月後変化予想(赤線)。UBSは今後について、10ポイント程度のVIX急上昇を予測。
UBS
2023年の株式相関係数(銘柄間の相関性)は極めて低く、セクター別に見ると、テクノロジーと自動車、住宅建設、メディアがここまで、ヘルスケアとエネルギー、公益事業をアウトパフォームしている。
過去のデータによれば、銘柄間の相関性の低下は、株式バリュエーション低下の予兆となってきた。
ウクライナ危機の解決は世界経済の成長に貢献しない
【図表7】原油価格の推移を、サイクル(需要動向)による変化(青棒)とロシア・ウクライナ戦争の影響による変化(橙棒)に区分。2022年2月以降の累積変化額とともに示した。
UBS
バウェジャ氏によれば、ロシア・ウクライナ危機発生直後はともかく、2022年6月以降は原油価格の低下が続いている理由として、危機の存在より需要減退のほうが大きいことを挙げる。ロシア産原油は現在も市場にあふれ続けている。
ロシア・ウクライナ危機の終結は、短期的には市場センチメントを改善してくれるかもしれないが、欧州あるいは世界の経済成長にとって長期的な追い風になるとは考えられないというのがバウェジャ氏の見解だ。
米ハイテク企業に期待される業績のハードルは高まっている
【図表8】MSCI米国株指数の市場予想P/E(株価収益率、12カ月先)のMSCI欧州株指数に対するプレミアム(青線、左軸)と、大型株の動向を示すS&P500種株価指数に対する小型株の動向を示すラッセル2000指数の比率(赤線、右軸)。後者は2010年12月を100として示した。
UBS
年初来の米国株の株価上昇は基本的には大型株の動きによるもので、それゆえ大型株の時価総額に対する小型株のそれの比率はほぼ20年ぶりの水準まで上昇した。また、欧州株や中国株、日本株と比較した米国株のバリュエーションも高まっている。
しかし、こうした割高なバリュエーションとその妥当性を維持するためには、ハイテク企業がウォール街のアナリストの期待を裏切らないような業績を実現していく必要がある。
米ハイテク企業のバリュエーションは評価不能
【図表9】主要ハイテク株で構成される米ナスダック100株価指数の予想株価収益率(P/E、12カ月先)と実質利回りの関係。ハイテク銘柄を追うべきか、否か。
UBS
アメリカのハイテク企業のバリュエーションと実質利回りは歴史的に正の相関関係にあった。しかし、バウェジャ氏によれば、最近の人工知能(AI)ブームを受けてハイテク銘柄の株価が上昇し、「極端な」逆転現象すなわち負の相関関係が生まれている。
したがって、ハイテクセクターを広く見ても、投資家にとって圧倒的に魅力的な状況があるとは言えない。
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※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
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