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概要:オーストラリア名物、サンドイッチとコーヒーを提供するカフェをコスト高騰が直撃している。コロナ禍による苦境を何とか乗り切ってきたカフェも収益を圧迫され、相次ぐ閉店を余儀なくされている。
[シドニー 10日 ロイター] - オーストラリア名物、サンドイッチとコーヒーを提供するカフェをコスト高騰が直撃している。コロナ禍による苦境を何とか乗り切ってきたカフェも収益を圧迫され、相次ぐ閉店を余儀なくされている。
7月10日、オーストラリア名物、サンドイッチとコーヒーを提供するカフェをコスト高騰が直撃している。
豪州のカフェ産業の規模は100億豪ドル(約9420億円)。国民1人あたりに換算すると、欧州を除けば世界最大だ。だが、エコノミストや業界関係者によれば、光熱費や製造費、人件費、賃料の高騰に加え、利上げに伴う消費支出の鈍化が重なるという最悪の状況のせいで、他に先駆けて、目に見える犠牲者になりつつある。
ロイターがカフェでの定番メニューを分析したところ、ステーキサンドイッチを作るコストは、電気代から使用する牛肉代に至るすべての経費を含めて、この2年間で6分の1高騰した。その一方で消費支出は横ばいであり、この業界で一般的な10%のマージンは実質的に帳消しになっている。
コーヒーのメニューのうち国内で最も人気があるのはエスプレッソにスチームミルクを入れた「フラットホワイト」だが、そのコストもほぼ5分の1急騰した。
結果的に利益は減少し、常連客の数は減り、事業主は撤退を考えるようになった。
世界ラテアート選手権での優勝経験を持つジャック・ハンナさんは、先月、シドニー中心街の「グッズライン・カフェ」を閉店した。「生活費の上昇が、特に毎日の食事をしにきていた人たちを圧迫しはじめた」と語る。内装に約150万豪ドルを投じ、オープンから2年、絶賛を浴びていた店だ。
「スーパーで買うような商品もかなり値上がりしているから、嗜好品にお金を使おうという気にはなかなかならない。我々としては、値上げして、スタッフに生活可能な賃金を支払わなければならなかった」と、ハンナさんは続ける。
近所のカフェのオーナー、ダミアン・クリグスタインさんは、ハンナさんの「グッズライン」撤退作業を手伝ったが、自身の経営する「バー・ジニ」も、経費削減のためにテイクアウト専門店に転換する予定だと語った。
「シドニーの街中を見渡すと、『貸店舗』の表示ばかり。子どもの頃から見慣れた店もすっかりなくなり、人々は生計手段を失っている。恐ろしい時代だ」と、クリグスタインさんは語る。
コロナ禍以前は、売りに出される国内小規模事業の約3分の1を接客サービス関連が占めていた。仲介業者によれば、最近では売却対象となる事業がさらに増えるとともに、接客サービス施設の比率が半数に近づき、売却希望価格は過去の市場価格に比べ最大50%も値引きされているという。
SBSビジネスブローカーズで仲介担当者を務めるピーター・メレディス氏は、「接客サービスのベンダーの多くは、コロナ禍を乗り切って、すっかり消耗してしまった」と語る。「彼らはリース契約を解除してホッとしている」
売却物件となっているカフェの約6分の1は、買い手が見つからずに閉鎖されている。
リンク・ビジネス・セールス・オーストラレイジアでディレクターを務めるガイ・クーパー氏は、「電気料金、人件費、賃料の高騰で、みなパニックに襲われ始めている」と語る。
豪州証券投資委員会のデータによれば、5月の企業破産ペースは、政府のコロナ禍関連救済措置が終了したことを受けて、過去8年間で最高になっている。
信用情報機関クレディターウォッチでは、今のところ、企業破産のうち圧倒的多数を占めているのは建設会社だが、来年には接客サービス業が上回ると予想している。
クレディターウォッチのパトリック・コホラン最高経営責任者(CEO)は、企業間(B2B)取引ならば10-20%の値上げもありうるが、消費者相手の接客サービス業では不可能だと語る。
「ベーコンエッグロールに30豪ドル払えというのは無理だ。もはや逃げ道はない」
<コストの圧迫>
インフレを加速させたのはエネルギー価格だ。ウクライナでの戦争による石炭・天然ガス市場の混乱で30%も上昇。これとは別に、それまで異常気象が何年も続いたことで農産物の卸売り価格は急騰していた。
失業率が史上最低に近い水準にあるため、接客サービス業のスタッフも含め、人件費も上昇している。
さらに、コロナ禍によってサードパーティーの食品デリバリーサービスへの依存度が上昇したことも、カフェの収益を削り取っている。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)はインフレ対策として過去14カ月で400ベーシスポイント(bp)の利上げを実施した。7月には利上げを見送ったものの、引き続き7%で推移するインフレが減速しない場合には、追加引き締めの可能性があると警告した。
シドニー郊外のカフェを所有するデイビッド・コックスさん(59)は、光熱費の高騰と消費支出の落ち込みのために賃料を払えなくなり、売却を進めている。だが、2年前に店舗の購入と改装にかかった17万豪ドルの費用のうち、少なくとも60%は回収できない見込みだという。
「住宅ローン金利の影響は大きかった」とコックスさんは言う。1日の売り上げが昨年の1000豪ドルから200豪ドルに落ち込むなかで、先日、アルバイト3人に辞めてもらった。毎月の光熱費は3000豪ドルから3800豪ドルに上昇しそうで、それだけで収入がほぼ消えてしまう。
「これまでの常連客の中には、今でも来店してコーヒーを飲んでくれる人もいるが、『ランチは持ち込みでいいかな。家から持ってきたのだけど』と言われる」とコックスさんは肩を落とす。
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