ウォール街が次に狙うは330兆円の年金基金、金融界幹部が相次ぎ訪豪

シドニーを訪問したジェームス・ゴーマン氏（2022年）

Photographer: Brendon Thorne/Bloomberg

資産規模が拡大する中、豪年金基金はより多くのグローバルな資産運用会社とさまざまなプライベート市場取引で提携している。ここ数カ月では、1200億豪ドル規模の年金基金ユニスーパーがＫＫＲと共に欧州の携帯電話中継塔会社に投資。1600億豪ドル規模のアウェア・スーパーはアリアンツなどの投資家と共同で英国の賃貸住宅開発会社に投資し、その直後には米国のデータセンター運営会社に出資した。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント・オーストラリアのマネジング・ディレクター、ダニエル・バンデン・ブーム氏は、「市場は成長軌道に乗っている」と指摘。同社はインフラや不動産などの分野での共同投資についてオーストラリアの年金基金と協力しており、「こうしたテーマへの取り組みはかつてないほど活発だ」と語った。

バンデン・ブーム氏によれば、ニューヨーク在勤のゴーマン氏と投資運用責任者のダニエル・シムコウィッツ氏は、特にプライベート・マーケットのような成長分野について、定期的にオーストラリアの年金業界幹部と話をしているという。

Australia Tops Growth Worldwide

Change in assets among biggest retirement systems from 2002 to 2022

Source: Thinking Ahead Institute, Bloomberg

グローバルな提携は、「スーパーアニュエーション・ファンド」として知られる豪私的年金にとって自然な流れだ。スーパーアニュエーション・ファンドは運用先が分からなくなるほど資産が拡大しており、プライベート・マーケットのアセットマネジャーと共に取引に参加できるだけの規模がある。

ヌビーン傘下のプライベートクレジット・スペシャリスト、チャーチル・アセット・マネジメントのケン・ケンセルＣＥＯは昨年11月、ニューヨークから飛行機で20時間かけ、オーストラリアの年金ハブであるメルボルンを訪問。3000億豪ドルの資産を持つ業界最大のファンド、オーストラリアンスーパーと融資パートナーシップを締結した。

1000億豪ドル規模の資産を持つ年金基金ホストプラスのコン・ミカラキス副最高投資責任者はインタビューで、今年は「より多くのマネジャーがオーストラリアのファンドからの資金調達を目指してやって来ている。成長している数少ない分野の一つだからだ」と述べた。

金利上昇が債券リターンなどに痛手となっているが、豪年金業界は資産拡大で世界の市場のボラティリティーを乗り切っている。総資産は過去５年間で１兆豪ドル近く増え、2023年第１四半期には３兆5000億豪ドルに達した。

業界への資金流入に拍車をかけているのは、オーストラリアの法律だ。企業は今月から、労働者の賃金の11％を選択した年金基金に拠出しなければならない。この割合は来年には11.5％、25年には12％に引き上げられる。その結果、年金業界の資産は40年までに３倍の10兆5000億豪ドルに達すると予測されている。