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概要:27日の米金融市場は、日本銀行が金利操作を修正する可能性を巡る報道で大きく揺れた。報道後に株式相場は下落に転じ、10年債利回りは4%台に上昇。円は対ドル、対ユーロで急伸した。
日銀会合でYCC修正案が議論されるとの報道、金融市場全般に影響
株式市場では主要3指数がいずれも下落、米GDP統計はプラス材料
27日の米金融市場は、日本銀行が金利操作を修正する可能性を巡る報道で大きく揺れた。報道後に株式相場は下落に転じ、10年債利回りは4%台に上昇。円は対ドル、対ユーロで急伸した。
日本経済新聞は、日銀が28日に開く金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の修正案を議論すると報じた。長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上しているという。
日銀がYCCの修正案を議論へ、上限0.5%超え容認案-報道
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.04% | 10.4 | 2.63% |
米10年債利回り | 4.00% | 13.5 | 3.50% |
米2年債利回り | 4.93% | 7.5 | 1.54% |
米東部時間 | 16時48分 |
米国債は全ての年限で下落。10年債利回りは一時15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、4.02%を付けた。
BMOキャピタル・マーケッツのストラテジスト、イアン・リンジェン氏は日銀会合について「政策変更なしという見方が共有されていたが、はるかに不確実になった」と述べた。
この日発表された米経済指標では、4-6月(第2四半期)の米国内総生産(GDP)速報値や先週の新規失業保険申請件数、6月の米中古住宅販売成約指数がいずれも市場予想より強い内容だった。米国債相場はこうした指標を受けて下落。そこに日経のYCC報道が重なった格好だ。
米GDP、2.4%増に予想外の加速-個人消費が想定ほど減速せず (2)
米中古住宅販売成約指数、予想外に上昇-4カ月ぶりのプラス (1)
ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は、日銀が政策を修正したとしても日米の利回り差が「非常に大きい」ため、その波及的な影響は「限られるだろう」とインタビューで指摘した。その上で「過大な影響が一時的に生じる可能性はある」と述べた。
スコシアバンクのチーフ外為ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「政策修正に関する観測は以前に間違っていたし、今回の報道も日銀がYCC修正案を『議論する』としているだけだ。しかし、インフレや賃金の上昇、日銀による資産買い入れの大きさは、何らかの調整時期が到来しつつあることを示唆する」と述べた。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は「きょうの相場の動きから判断すると、YCCの修正や終了は世界各地に波及して利回りを押し上げる公算が大きい」と指摘した。
この日はブルームバーグのドル・スポット指数も上昇し、2週間ぶりの高値。米GDPが市場予想を上回ったことが材料となった。
ユーロ・ドルは下落し、7月10日以来の安値。欧州中央銀行(ECB)による0.25ポイントの利上げ決定の前には1週間ぶりの高値を付けていた。
ECB、0.25ポイント利上げ-9月は利上げか据え置きと総裁 (2)
株式
株式市場では主要3指数が全て下落。S&P500種株価指数は日銀の報道が伝わった後、上昇から下落に転じた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4537.41 | -29.34 | -0.64% |
ダウ工業株30種平均 | 35282.72 | -237.40 | -0.67% |
ナスダック総合指数 | 14050.11 | -77.17 | -0.55% |
米GDPが予想外に加速したことを受け、S&P500種は午後の早い時間までプラス圏で推移していた。
モルガン・スタンレー・グローバル・インベストメント・オフィスのマイク・ローウェンガート氏は「今のところ各種の経済指標は依然として、経済が比較的軟着陸となることを示している」と指摘した。
チャールズ・シュワブUKのマネジングディレクター、リチャード・フリン氏は、堅調な米GDP統計は景気が強さを増しつつあるという明るいサインだが、高水準の需要は政策当局が懸念するインフレ圧力も強めると指摘した。
同氏は「労働市場の逼迫(ひっぱく)が続き、インフレ率が当局目標の2%を上回ったまま推移する限り、向こう数カ月に追加利上げが行われるとの予想が成り立つ」と発言。「市場は利上げサイクルの終了を待ち望んでいるが、金融政策が経済をリセッション(景気後退)に近づけるという、一部投資家が恐れているような事態は起きていないことに安心するかもしれない」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反発し、4月以来の高値となった。テクニカル要因に基づく相場調整への懸念がある中、米経済の力強さを示す指標を受けた需要見通し改善の方が強く意識された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は1バレル=80ドルを回復。米金融当局による引き締めサイクルが終わりに近づきつつあるとの見方も原油相場の押し上げ要因となっている。ただ、相対力指数(RSI)は3日連続で買われ過ぎを示す水準で推移しており、相場反落への懸念も強まっている。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「原油相場は株式市場の『リスクオン復活』センチメントに引っ張られる形で」上昇したと指摘。その上で「投機的な買いで急激に上がったため、買われ過ぎの状態が生じている。近いうちに多少の不規則な調整が入るはずだ」と述べた。
MKS PAMPの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は同GDP統計について、「連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストはもはやリセッション(景気後退)を予想していないというパウエルFRB議長の前日の説明」を裏打ちするものだと指摘。「金相場はこれを嫌気している。金価格が金融政策よりも米経済指標に敏感になっていることは明らかだ」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は1オンス=2000ドルを割り込み、前日比24.30ドル(1.2%)安の1985.20ドルで終了した。
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