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概要:アルゼンチンではインフレ率が100%を超え、通貨価値は下落の一途をたどっているが、IT労働者のルイスさん(33)は生計を支える裏技を見つけた。自分のアパートをAirbnb(エアビーアンドビー)で貸し、誰もが欲しがるドルを手に入れると同時に、税務当局から所得を隠す、という方法だ。
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[ブエノスアイレス 25日 ロイター] - アルゼンチンではインフレ率が100%を超え、通貨価値は下落の一途をたどっているが、IT労働者のルイスさん(33)は生計を支える裏技を見つけた。自分のアパートをAirbnb(エアビーアンドビー)で貸し、誰もが欲しがるドルを手に入れると同時に、税務当局から所得を隠す、という方法だ。
アルゼンチンではインフレの加速に対応して所得を膨らませるため、何千人もの不動産オーナーがエアビーアンドビーなど短期賃貸サービスを利用するようになっている。
ブエノスアイレスにあるアパートからの収入は月800ドル(約11万1400円)前後。IT企業でもらっていた給与に比べて60%も多い。給与はペソ建てで、ルイスさんがフリーランスになろうとして退社を決意した昨年7月の時点では、闇市場のレートで490ドルにしかならなかった。
ルイスさんの説明では、エアビーアンドビーでの賃料は、米国の決済サービス「ペイオニア」のデジタル口座にドル建てで入金されるという。ルイスさんは、その収益を使って海外の暗号資産(仮想通貨)市場でドル連動のステーブルコインを購入し、アルゼンチン国内の個人間取引所でペソに替えている。いずれも、アルゼンチンの税務・金融当局に捕捉されることはない。
アルゼンチンではインフレの加速に対応して所得を膨らませるため、何千人もの不動産オーナーがエアビーアンドビーなど短期賃貸サービスを利用するようになっている。ロイターの取材によれば、その多くが外国為替管理や賃料収入への課税を回避している。
ロイターは18人の民泊ホスト、不動産仲介業者、当局者にインタビューを行い、これまで報道されていなかった賃貸データを分析、さらには大家同士によるチャットグループを閲覧した。所得を申告している不動産オーナーも一部にはいるものの、多くは民泊賃料の収入を簿外取引とし、大家による正直な申告を当てにしている制度の裏をかいている実状が見えてきた。
取材では、民泊ホストの多くは大規模な賃貸事業者というより、アルゼンチン国民の4割を貧困線以下に転落させた経済危機の中で、何とか生き延びようと苦心する専門職の人々であることが分かった。
民泊ホストが非公式市場でドルをペソに替えると、そのお金は公式経済からは消えていき、外貨準備の流出を加速させ、アルゼンチンは債務返済や輸入代金の支払いに苦労することになる。
短期賃貸の増加は国内の住宅価格を押し上げ、ペソ建ての家賃で借りられる住宅を見つけることが難しくなった。アルゼンチン不動産会議所が管理している登記簿によれば、ブエノスアイレスではペソ建ての家賃で借りられる住宅が2020年には約8000戸あったが、現在では1200戸にまで減少している。
ロイターがある民泊ホストのアカウントを閲覧したところ、アルゼンチンの民泊ホストがエアビーアンドビーを利用する場合、賃料の受け取り方法として、国内・外国の銀行口座、あるいはペイオニア、ペイパルといったサービスを利用できる。エアビーアンドビー側もこれを確認した。
国内銀行口座に入金されると、公定為替レートでドルからペソに交換される。国内法では、月400ドルを超える入金があった場合、銀行に報告義務が課せられる。
中央銀行関係者によれば、外国の銀行口座やグローバルな決済サービス経由での支払いを選び、闇市場でのレートで交換すれば、民泊ホストの手取りは88%も上昇し、しかも税務当局の目を逃れることができる。ただし、そうしたやり方は違法だという。
「法に触れずにエアビーアンドビーを利用する唯一の方法は、国内銀行に入金してもらうことだ」とこの中央銀行関係者は言う。同関係者は決済の専門家で、公式に発言する権限はない。
<短期賃貸ブーム>
エアビーアンドビー、ペイパル、ペイオニアのウェブサイトに掲載されている利用条件では、所得を各国税務当局に申告する責任は、サービス側ではなく利用者側にあるとされている。
エアビーアンドビーはロイターに対する声明の中で、ウェブサイトで公開している利用ガイドでは、民泊ホストに対し、短期賃貸物件をアルゼンチン当局に登録することを推奨している、と説明した。
同社は、アルゼンチン国内の民泊ホストの約40%が「昨今の生活コスト高騰に関連した支出増大への一助として」同サービスを利用している、とした。
ペイオニアにも取材を申し込んだが断られた。ペイパルは、「グローバル決済企業として、関連の法令・規則を順守している」と表明した。
米国を拠点とする暗号通貨決済企業ビットウェイジで、アルゼンチン国内の成長担当バイスプレジデントを務めるラミロ・ラポーソ氏は、デジタル通貨を用いてアルゼンチンに資産を移すことは合法だが、所得の申告に関してはユーザーの責任になる、と話している。
「租税回避は明らかに違法だが、私たちとは何の関係もない」と同氏は言う。
アルゼンチンの短期賃貸市場のブームは2020年に始まった。この年、借り手の保護を目指して、大家による賃料の引き上げを年1回に制限する法律が成立したことが契機だった。
だがこの法律はむしろ、短期賃貸市場の急拡大につながった。
エアDNAがロイターに提供したデータによれば、6月には、ブエノスアイレス市内では1万8500戸以上の物件がエアビーアンドビーに登録されていた。だが同市観光局はロイターに対し、同月、市の短期賃貸物件登記簿に掲載されていた物件は570戸にすぎないと明らかにした。
<エアビーアンドビーに政界の関心も>
不動産仲介業者のアリエル・イェーガー氏は、「短期賃貸へのオーナーの関心は高まる一方だ。外貨、つまりドル建てで稼げるから」と語る。昨今では同氏の扱う物件の90%が短期賃貸向けだという。
イェーガー氏は、ドル建てで賃料を得る不動産オーナーは、ペソ建てによる長期契約の賃料の2倍は稼げると言う。外貨を利用できる短期の借り手の方が購買力は高いからだ。
借り手には、リモートで働く外国人、近隣諸国からの留学生や医療ツーリズム参加者、戦争や徴兵の恐れから国を離れたとみられるロシア人などが含まれるという。
アルゼンチンの大家同士のチャットグループをロイターが閲覧したところ、民泊ホストの間では、エアビーアンドビーで得た収入を当局に把握されずにペソに交換する最善の方法について議論が交わされていた。
地元の不動産仲介業者を経由し、アパートを月1500ドルで短期滞在向けに貸しているというグスタボさんは、ペソでの賃料支払いを受け入れるが、闇市場のレートで計算するという。グスタボさんに言わせれば、公定レートは「フィクション」にすぎない。
「できれば近いうちに為替レートがただ1つに定まればいいのだが。あらゆる点でその方が望ましい」とグスタボさんは言う。
賃貸法と短期賃貸市場の成長については、国会議員や、10月に予定される総選挙・大統領選挙の候補者からも批判の声が上がる。
大統領選挙で有力視される4人の候補者は賃貸法への批判を公言しており、与党連合を構成する正義党(ペロン党)のアナ・マリア・イアンニ議員は、民泊ホストがアルゼンチン当局への登録を行わない場合、エアビーアンドビーに罰金を科すことを提案している。
イアンニ議員は、この提案の趣旨はエアビーアンドビーの事業を締め出すことではなく、「観光客向けに物件を提供する場合は、この登録義務を順守して進めてほしい、ということだ」と説明している。
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