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概要:コロナ禍が明け、アパレル企業の多くが業績を回復しました。ただ、アパレル在庫を最適化するクラウドサービスを手掛けるフルカイテンの瀬川直寛CEOによると、売上高は回復しても「少ない在庫で稼ぐ力」はコロナ禍前に戻っていない企業も多いといいます。
コロナ禍が明け、アパレル各社の決算が好調です。店舗への人流回帰や需要復活により、多くの企業が増収増益となりました。ただ、アパレル在庫を最適化するクラウドサービスを手掛けるフルカイテンの瀬川直寛CEOは「単純に売り上げという側面だけで見てはいけない」と指摘します。実は、在庫などの指数に注目することで、一見好調に見える企業の実態が見えてくるといいます。
本当に優秀なアパレル企業はどこか?大手16社の決算比較をもとに読み解きます。
瀬川直寛/フルカイテンCEO
慶應義塾大学理工学部を卒業後、外資系IT企業等を経てベビー服等のECを起業。在庫問題が原因で3度の倒産危機を経験したが、その過程で外的要因や予測不能な変化に強い小売経営モデルを創出した。そのモデルを「FULL KAITEN」として2017年にクラウド事業化。現在はEC事業を売却した。
同社の在庫分析サービス「FULL KAITEN」は中小から大手のアパレル小売、雑貨小売、スポーツ小売など累計約200ブランドが導入している。
16社中13社が増収、11社が増益
表1:2023年3月~8月の大手アパレル16社の損益指標。
各社の公開資料をもとにフルカイテン作成
各社の2023年3月~8月期の決算を比較しました。まずは売上高、営業利益、当期純利益といった損益指標を見てみます(表1)。売上高はライトオン、パレモ・ホールディングス、マックハウス以外の13社が前期を上回りました。特にユニクロを展開するファーストリテイリングは20.1%、良品計画とアダストリアは18%超の大幅な増収でした。
営業損益をみると、11社が前年同期から増益となり、2社が前年の赤字から黒字転換しています。一方、ライトオンとマックハウスのは前年同期から赤字幅が拡大してしまいました(前年同期の営業赤字はライトオンが2億4100万円、マックハウスが3億3500万円)。
「在庫を増やさないが吉」に多くの企業が気付いた
表2:2023年3月~8月の大手アパレル16社の仕入れ額・在庫高・粗利率の変化。
各社の公開資料をもとにフルカイテン作成
上記の表2は、各社の2023年3〜8月における
仕入れ額(発注額)
在庫高
粗利率の前年比
2023年8月末における在庫高の対前年増減率
を一覧にしています。
注目してほしいのは、在庫がどれだけ残っているかです。8月末の在庫高を見てみると、前年と同水準だった会社と、2割前後増やしている会社に大別されました。
在庫を増やしたアダストリアやオンワードホールディングス、TSIホールディングスは20%を超える増加率で、ハニーズホールディングスも19.6%増となっています。
これらの企業は、非常に順調に事業が推移している中で在庫を積み増し、順調な計画をさらに継続していこうという戦略。悪いことではありません。
一方で、在庫高が前年比で同水準程度の企業も多くあります。増収増益した企業が半数以上だった中で、在庫をそれほど増やさずに済んでいるというのは、事業としてはうまく回っているということです。私はとてもポジティブに見ています。
コロナ禍以前は、在庫を積まないと増収増益できないという会社がほとんどだったと思います。抱えた在庫から効率よく利益を生み出す力がそこまで高くなく、それほど意識も向いていなかったのです。在庫を増やし、セールで多少安く売ってでも、どうにかお金に変えていく。売上重視の経営がずっと続いてきたのが、コロナ禍前までの話でした。
ところが、緊急事態宣言などによってお店をオープンできなくなり、商品の在庫がドカンと積まれたわけです。その時に在庫を抱えすぎることの負のインパクトを各社は経験しました。
そのため、2021年にかけては仕入れが大きく減っていきました。仕入れが減ると、セールの機会を少なくできます。結果として、2022年には営業利益を急回復させた企業が増えました。
コロナ禍の3年間で、在庫と粗利の関係を経営上実感した企業が多かったということです。
増収しながらも、在庫をそれほど増やさずに済んだ企業が多かったのは、もう一度コロナ禍前のような売り上げを取り戻したいという意識が働く中でも、「在庫を増やしすぎるのは良くない」というコンセンサスがある状態で経営がなされたということだと見ています。
在庫効率が良い企業はまだ半数
大手アパレル各社の、3~8月期のGMROIの推移。2019年を1とした。(※三陽商会は2022年度から適用した収益認識会計基準の影響が大きいため単純比較できず)
フルカイテンの資料より編集部作成
上記のグラフは、各社の3〜8月期のGMROI(商品投下資本粗利益率)について、2019年~2023年の推移を示したものです。16社のうち、主要9社をピックアップしました。2019年3月〜8月を1とした指数でコロナ禍前後を比較しています。
GMROIとは、どれだけの在庫でどれだけの粗利を作ったかを表す指標で、粗利益を平均在庫高で割って計算します。
在庫に関する指標としては、一定期間内にどれだけ在庫が入れ替わったかを表す在庫回転率を追っている企業が多いと思います。在庫回転率も大事な指標ですが、あくまでも“売れている”か“売れていないか”を判断する指標のため、実際にその商品で粗利を生み出せているかは分かりません。そのため、在庫回転率と共にGMROIを追っていくべきなのです。
これまで見てきた増収増益というのは、言い換えれば損益計算書(PL)上の話です。在庫高はキャッシュフローの話です。GMROIはPLでもキャッシュフローでもなく、在庫への投資効率です。もっとハッキリ言ってしまうと社員の給与を上げたり、設備投資や職場環境を改善したりする源泉になるような数値です。
2023年3月~8月のGMROIは16社中8社が前年同期より悪化しました。13社が増収で11社が営業増益、3社が赤字幅を縮小させたのとは対照的です。
コロナ禍前の2019年との比較で見ると、2023年のGMROIが2019年の水準を上回っている(指数が1を超えている)会社は次の8社にとどまります。
・ファーストリテイリング
・しまむら
・オンワードホールディングス
・西松屋チェーン
・ハニーズホールディングス
・三陽商会
・ナルミヤ・インターナショナル
・コックス
売上高や営業利益はコロナ禍前の水準に回復していても、少ない在庫でより多くの粗利益を稼ぐ力(在庫効率)はコロナ禍前に劣ったままの会社が半数(16社中8社)を占めているのです。
名指しは避けますが、業績が良い一方で2021年以降ずっとGMROIの前期指数が1未満の会社も存在します。市場のボラティリティが大きくなっているうえ、人口減少が顕在化しているなか、在庫施策に改善の余地があると言わざるをえないでしょう。
三陽商会、ナルミヤは優秀な在庫効率
在庫効率の向上に成功しているナルミヤ・インターナショナルのECサイト。
webサイトより編集部キャプチャ
GMROIにおいて成果を出している企業の例を見ていきます。
面白いのが、子ども服のナルミヤ・インターナショナルです。同社がすごいのは、商品の単価自体が上がっていることです。円安や原料高といった対外的な要因で原価が高騰する中、無理に価格を維持して利幅を減らすのではなく、さらに原価に投資することで付加価値の高い商品を作っているんですね。それを今までよりも高い単価で売ることで粗利率を改善しています。まさに、商売のあるべき姿と言えるでしょう。直近の決算(2024年2月期第二四半期)では、粗利益が前期比110%と好調です。
もう一社、注目すべきなのが三陽商会です。グラフでは、2022年度から適用した会計基準の影響が大きいため単純比較できないとしていますが、それを差し引いても好調と言えます。
2024年2月期第二四半期の決算は売上高281億5000万円で、上方修正した計画を1億5000万円上回りました。粗利率は62%で、前年を0.6ポイント上回っています。
三陽商会は、重点施策に「粗利率の改善」「在庫削減」を掲げ、「できるだけ定価で売る。そして、定価で売りたかったら在庫を抱えすぎてはいけない」という考え方が、トップから現場レベルまで浸透しています。そして、このポリシーをもって社内の業務改革やツール開発に取り組まれています。バーバリーとの契約終了(2015年)による業績低迷などで苦んだ中でも、着実に変化を起こしたという意味で尊敬に値します。
アパレル業界は、2024年も増収増益の基調と、在庫高が微増で推移する傾向は続くでしょう。
2023年は改善したのが半数の企業にとどまったGMROIという指標ですが、2024年はさらに多くの企業がこの数値を改善させることを期待しています。
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