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概要:2021年にフェイスブック(現メタ)が社名変更とともに巨額の投資を発表した「メタバース」ですが、ザッカーバーグCEOが当初描いた世界はいまだ実現していません。いまや人々の関心は生成AIへと移り、ザッカーバーグ自身も最近ではメタバースよりAIのために時間を費やしています。ザッカーバーグにとってメタバースとは何だったのでしょうか。
Robyn Phelps/Insider
メタバース(Metaverse)。それはかつて大きな話題を呼び、ユーザーが方向感覚のつかめないビデオゲームのような世界でぎこちなく遊べるとされたテクノロジー。そのメタバースが、ビジネス界から見放された挙げ句に死亡した。わずか3年の命だった。
1982年の映画『トロン』と2003年のビデオゲーム「セカンドライフ」の流れを汲んだ期待の超新星メタバースが誕生したのは2021年のこと。このときフェイスブック(Facebook)創業者のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)は、時価総額1兆ドルを超える同社の社名をメタ(Meta)へと変更した。
鳴り物入りでデビューするや、メタバースはテック業界の話題をさらい、ウォール街の投資家たちをまたたく間に虜にした。
しかし、誇大宣伝をもってしてもメタバースを救うことはできなかった。プロダクトが一貫したビジョンを欠いていたことが、最終的にメタバースの衰退を招いた。テック業界が生成AI(ジェネレーティブAI)という、より将来性のある新トレンドに目を向けた時、メタバースはとどめを刺された。
メタバースは今、テック業界の失敗したアイデアたちが眠る墓場へと向かっている。しかしその早すぎる無念の死は、メタバースを生み出したテック業界に痛烈な批判を突きつけている。
膨れ上がった期待
ザッカーバーグはあの発表の瞬間から、メタバースこそがインターネットの未来になると語っていた。ザッカーバーグが社名変更を発表した、あの華やかで欺瞞に満ちたプロモーションビデオでは、人々が仮想世界でシームレスに交流できるようになる未来が描かれていた。ユーザーは「目を合わせて」、「まるでその部屋に一緒にいるような感覚になる」と。メタバースで「没入型」の体験を味わえる、とザッカーバーグは主張した。
こうした大言壮語のせいで、人々はメタバースに大いに期待を抱くようになった。メディアもこの目新しいコンセプトに魅了された。ザ・ヴァージ(The Verge)は、あの発表直後にザッカーバーグのロングインタビューを掲載し、その中で記者はメタバースを「拡張的でイマーシブなインターネットのビジョン」と呼んだ。
称賛の嵐のなか、メタバースは輝かしいプロフィールを築き上げているかに見えた。だが実際は、その短い人生を通して人々の期待に応えることはできなかった。CBSの司会者ゲイル・キング(Gayle King)との奇妙なVRインタビューでは、解像度の低いキングとザッカーバーグのアバターがぎこちなく動いていた。メタがあの華々しい紹介ビデオで見せた未来とは対照的な光景だった。
メタバースは、深刻なアイデンティティクライシスに悩まされてもいた。
機能的な事業計画では、成長を見込むためにはいくつかの要素が必要になる。明確なユースケース、ターゲットとなるオーディエンス、そして顧客がどれだけそのプロダクトを欲しいと思うか、だ。
ザッカーバーグは、メタバースは「多くの企業にまたがるビジョン」であり「モバイルインターネットの後継者」であると謳ったが、メタバースが解決すべき基本的なビジネス課題を明確にすることはできなかった。
アバターを使ってユーザー同士が交流する仮想世界のコンセプトは決して目新しいものではなく、古くは1990年代後半の「Meridian 59」「ウルティマオンライン」「エバークエスト」といったMMORPGまで遡れる。
メタバースはこれらのアイデアの上に新しいテクノロジーをもって作られるのだと思われていた。しかし実際にザッカーバーグから出てきたプロダクト——VRプラットフォーム「ホライゾン・ワールド(Horizon Worlds)」——は、この上なく不便なOculusヘッドセットを装着しなければならない代物で、ロードマップや真のビジョンに何かが近づいてきている感じはまるでなかった。
メタバースのコンセプト開発が止まっているにもかかわらず、移り気なメディアたちは、メタバースの将来について非現実的とも無責任ともつかないような意見を発信していた。
ザッカーバーグが「10億人がメタバースを使い、そこで何百ドルも使うだろう」と発言したときも、CNBCの司会者ジム・クレイマー(Jim Cramer)はしたり顔でうなずいていた。ザッカーバーグが、人々は現金と引き換えに何を手に入れるのか、なぜ出来の悪いキャラのコンサートに参加するために不格好なヘッドセットをつけたがるのか、何も語ることができていないにもかかわらず。
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テックも、仮想通貨も、コンサルティング会社も
メタバースがビジネス界のトップに躍り出られなかったのは、その定義が定まっていなかったからというわけではない。実際、メタの発表から数カ月経ってもそれが何であるか、なぜそうしなければならないかは明らかになっていなかったが、企業はこぞってメタバース製品を提供しているかのようだった。
マイクロソフト(Microsoft)のサティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOは、同社の「Ignite 2021」カンファレンスで、メタバースが自社、業界、そして世界にとって「どれほどのブレイクスルーであるかは言い尽くせない」と述べている。
2004年に立ち上げられたオンラインゲームプラットフォームのロブロックス(Roblox)は、メタバースが繰り出す波に乗り、IPOを果たして時価総額410億ドル(約5兆7400億円、1ドル=140円換算)という評価を得た。
もちろん、仮想通貨業界もその波に乗り、駆け抜けた。ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(BAYC)というNFT企業の関係者は、誰かが作ったデジタルのサルの画像をVRにアップロードすることが「メタバースをマスターする」鍵になるとマスコミを欺いたし、他の暗号通貨伝道者も、メタバース内のデジタルランドが不動産投資の次なるフロンティアになると人々に信じ込ませることに成功した。
テックとはあまり関係がなさそうな企業も、この流れに乗った。ウォルマート(Walmart)やディズニー(Disney)もメタバースに参加した。
ザッカーバーグがメタバースの構想を明かした当初はビジネス界もこの話題で持ちきりになったが……。
こうした企業の参入ラッシュを受け、ウォール街の投資家、コンサルタント、アナリストたちは、競い合うようにメタバースの成長を予測し始めた。
ガートナー(Gartner)は、2026年までに25%の人が1日に1時間以上メタバースで過ごすようになると予測した。ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は、メタバースは私たちの働き方を永遠に変えるだろうと述べた。
マッキンゼー(McKinsey)は、メタバースが最大で「5兆ドルの価値」を生み出すと予測し、約95%のビジネスリーダーたちがメタバースは5~10年以内に「自分の業界にプラスの影響を与える」と予想していると付け加えた。また、シティ(Citi)は、メタバースが13兆ドル(約1820兆円)のビジネスチャンスになるとする大規模な報告書を発表した。
過疎ったオンライン空間
これほどの誇大広告があったにもかかわらず、メタバースは健全に成長することができなかった。ビジネスアイデアやバラ色の市場予測は、すべて一人のCEOの曖昧な約束の上に成り立っていた。そして、試してもらう機会を設けても、実際にメタバースを使う人はいなかった。
最も資金力のある、分散型の暗号ベースのメタバース製品(実質的に「歩き回れる」不思議なオンライン世界)といえばディセントラランド(Decentraland)だ。だがその「13億ドル(約1820億円)のエコシステム」のDAU(Daily Active User)はたった38人しかいないと報じられた。
ディセントラランドはこの数字に異議を唱え、DAUは8000人いると主張するが、それにしても「フォートナイト(Fortnite)」のような大規模オンラインゲームのプレイヤーに比べればほんのわずかにすぎない。
メタによる前評判の高かった取り組みも、同様に苦戦を強いられた。2022年10月までのホライゾン・ワールドのMAU(月間アクティブユーザー数)は20万人に満たず、メタが2022年末に設定した50万人という目標には遠く及ばなかったとマッシャブル(Mashable)は報告している。
ウォールストリート・ジャーナルは、ユーザーが作成したワールドのうち、プレイヤーが50人以上訪れたのは9%程度だと報じているし、ザ・ヴァージは、メタの社員でさえ敬遠するほどバグが多かったと述べている。当時のメタは時価総額1兆ドル超を誇っていたが、それでも未来を賭けたプロダクトを人々に納得して使ってもらうことはできなかった。
景気が後退し、人々が生成AIに期待を寄せるようになると、メタバースは深刻な事態に陥った。
マイクロソフトは2023年1月に仮想ワークスペース・プラットフォーム「オルトスペースVR(AltSpaceVR)」を閉鎖し、「産業メタバースチーム」のメンバー100人を解雇。ホロレンズ(HoloLens)チームも削減した。
ディズニーが3月にメタバース部門を閉鎖すると、ウォルマートもロブロックスベースのメタバースプロジェクトを終了させた。何十億ドルもの投資と、中途半端なコンセプトをめぐる息詰まるほどの誇大宣伝によって、何千人、いや何万人もの人々が職を失うことになった。
しかし、メタバースを生命維持装置から完全に外したのは、ザッカーバーグと、このブームを仕掛けた彼の会社、メタだった。メタはもっと金回りがよい分野へとシフトしたのだ。
ザッカーバーグは今年3月、メタの「唯一最大の投資はAIを進歩させ、それを当社の製品のすべてに組み込むことだ」と宣言した。4月にはメタの最高技術責任者であるアンドリュー・ボスワース(Andrew Bosworth)がCNBCに対し、彼はザッカーバーグと同社の最高製品責任者であるクリス・コックス(Chris Cox)とともに、現在ほとんどの時間をAIに費やしていると語った。
同社は、「メタバース・ファースト」というミッションのために1000億ドル(約14兆円)を超す研究開発費を費やしたにもかかわらず、広告主に対してメタバースを売り込むことさえやめてしまった。ザッカーバーグは、Questヘッドセット用のゲームを開発することがある種の投資だと示唆しているものの、はっきりしていることがある。「メタはメタバースで終わり」だ。
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ザッカーバーグにとってメタバースとは何だったのか
仮想世界やグループでのオンライン体験というアイデアは何らかの形で生き続けるかもしれないが、鳴り物入りで登場したメタバースは死んだ。前述の生成AIや自動運転のような新鮮なアイデアを前に、Web3やGoogle Glass(グーグルグラス)といった過去のテクノロジーと同じく失敗したのだ。長らく失望を味わったが、はっきり言おう。メタバースの死は、テック史上最大の失敗の1つとして記憶されるべきものである。
私は、マーク・ザッカーバーグが「メタバース」に対して本当に興味を持っていたとは思わない。なぜなら、彼はアバターや複雑なハードウェアでFacebookに少し手を加えただけで、それ以上メタバースを定義するようなことはしなかったからだ。
ザッカーバーグにとってメタバースは、人間の相互作用の未来に対する真のビジョンではなく、株価を高める手段でしかなかった。ザッカーバーグはその強大な富と力を使って、テック業界全体とアメリカのビジネス界を、この生煮えのアイデアに引きずり込んだのだ。
マーク・ザッカーバーグが明らかにメタバースから手を引いたという事実は、彼の後に続いた人たちや、彼をいまだにビジョナリーなテックリーダーとみなしている人たちを糾弾するものとなった。また、ザッカーバーグの後を追って、プレスリリースの薄っぺらな謳い文句に基づくハイプサイクルに何十億ドルもつぎ込んだベンチャーキャピタル界隈も猛省すべきだろう。公正な世界であれば、ザッカーバーグはメタのCEOを解雇されるべきだ(現実世界においては不可能だが)。
ザッカーバーグは皆を欺き、何千億ドルもの金を浪費し、業界のフォロワーたちを自分の突飛な妄想へと引き込んだ。そして、ウォール街の関心が別のところへ移り始めるや、それを打ち捨てた。
何万人ものレイオフを指示した男が、大企業を経営する理由はない。ザッカーバーグが率いるメタに未来はない。停滞し、やがて死に至り、遂にはメタバースと同じ墓場に入ることになるだろう。
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