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概要:[東京 30日] - ドル円は2022年高値の151円95銭から今年1月安値の127円23銭の61.8%戻しが位置する142円51銭を上抜けた。テクニカル上は同76.4%戻しの146円12銭が次の上値メドとして視野に入る。
[東京 30日] - ドル円は2022年高値の151円95銭から今年1月安値の127円23銭の61.8%戻しが位置する142円51銭を上抜けた。テクニカル上は同76.4%戻しの146円12銭が次の上値メドとして視野に入る。
ドル円は2022年高値の151円95銭から今年1月安値の127円23銭の61.8%戻しが位置する142円51銭を上抜けた。テクニカル上は同76.4%戻しの146円12銭が次の上値メドとして視野に入る。尾河眞樹氏のコラム。写真は2022年9月撮影(2023年 ロイター/Florence Lo)
ドルと円の名目実効為替レートを見ると、6月に入ってからはドルが軟調な一方で、円がそれを上回る大幅な下落となったことが分かる。欧州(ユーロ圏、英国、ノルウェー、スイスなど)の中銀による相次ぐ利上げに加え、米連邦準備理事会(FRB)は6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を据え置いたものの、年内2回の追加利上げを示唆した。
これに対して植田日銀総裁の「緩和維持姿勢」が際立っていることが、円が売り込まれている背景として挙げられよう。今週ポルトガルのシントラで開催された欧州中銀(ECB)フォーラムでも、欧米のインフレ抑制スタンスと、日銀のハト派スタンスのコントラストに注目が集まり、円は一段安となった。
<けん制発言に反応限定>
1ドル=145円台というと、昨年9月22日に政府・日銀が24年ぶりの円買い介入に踏み切った水準と重なる。この日、145円90銭までドル円が上昇した後、介入により140円36銭まで急落したことは記憶に新しい。
財務省の神田財務官は今週26日、「足元の動きは急速で一方的だ」と市場をけん制。翌27日には鈴木財務大臣も「行き過ぎた動きについては適切に対応する」と警戒感を示した。ただ、昨年の大規模介入の記憶が残るなかで、相次ぐ当局者のけん制発言にもかかわらず、為替市場の反応は意外なほど限られている。
これには、輸入物価の低下が背景にありそうだ。日本の輸入燃料物価を示す円建ての原油価格は、1バレル=9900円台と、22年のピークである6月初旬の1万6000円台を大きく下回っている。年初来の円安トレンドにもかかわらず、円建ての原油価格が1万円前後にとどまっているのは、原油価格が昨年6月の1バレル=123ドル台から69ドル台まで大幅に下落したことが要因だ。
これによる影響か、あるいは、ドル円の143円台が昨年経験済みの水準だからか、又は円安と株高が同時に起きているからか、世論においても昨年程の円安批判は感じられない。ただ、今後、夏のドライビングシーズンに向けて、仮に原油価格が再上昇し始めるようであれば、政府・日銀による円買い介入の可能性は高まりそうだ。
<違和感ないドル円上昇>
実際のところ、足元のドル円相場は日米実質金利差(10年・米―日)と平仄があっており、「投機筋による一方的な円安」や「行き過ぎた動き(オーバーシュート)」とは言い難い。日米実質金利差は、5月初旬の1.05%台から6月28日時点では2.24%台まで拡大しており、2022年以降のドル円と日米実質金利差の相関から見れば、138円台後半から143円台後半へのドル円の上昇に違和感はない。この間の日米実質金利差の拡大は、米国の長期金利がジワリ上昇し、米実質金利が1.21%台から1.56%台まで上昇したことが一因だ。
加えて、日銀のハッキリとした緩和スタンスによって「出口戦略」への期待が萎み、日本の10年債利回りは0.4%を割り込んだ。更には日本の期待インフレ率が0.7%台から1.0%台へと上昇したため、日本の実質金利がマイナス0.38%台から、マイナス0.67%台へと大きく低下したことが、日米実質金利差をさらに拡大させた。
<米実質金利、上昇に限界>
果たして、日米の実質金利差が今後一段と拡大する可能性はあるのだろうか。
まず、米国の期待インフレ率は2%台前半でほぼ変わらないと想定すると、重要なのは米10年債利回りだが、あと年内1回の利上げは既に市場に織り込まれているため、足元3.7%付近の利回りが4.0%を大きく上回る可能性は低い。
仮に、あと2回、3回の利上げが必要となった場合には、むしろ米株式市場が崩れて、米10年債利回りが低下する可能性もある。2008年、リーマンショック直前の米政策金利は5.25%だった。年内あと2回利上げすれば政策金利は5.625%となり、同水準を大きく上回ることになる。
さすがにこれ以上利上げするとなれば、素直に「米長期金利上昇→ドル高」とはならず、むしろ先々の景気悪化懸念から長期金利の低下とドル安圧力につながるのではないか。6月22日、英中銀(BOE)がサプライズの0.5%の利上げを決定した後の為替市場の反応は、むしろポンド安だった。米国でもここから先の更なる金融引き締めは、同様の市場の反応を促すとみている。
<日本の実質金利、現状付近がボトム>
一方で、日本の実質金利はどうだろうか。日銀が植田新体制へ移行した後、YCCの早期再修正への期待が一気に萎み、年初に0.5%の上限に張り付いていた10年債利回りは低下。足元0.36%前後で推移している。しかし、日銀が追加緩和ではなく、あくまで「現状の緩和政策維持」を決め込むなかで、これ以上10年債利回りが大きく低下する可能性は低そうだ。
問題は、日本の期待インフレ率だが、これも日本のインフレが今後減速に向かえば、現状から大幅に上昇するとは考えにくいだろう。日本の消費者物価は、食品価格を主体に財価格の高止まりがしばらく継続する公算だが、足元の資源価格の下落等により、輸入物価は既にマイナス圏となっている。
ソニーフィナンシャルグループは、23年の後半から、財価格を主体に生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)が減速に向かうと予想している。サービス価格は賃金上昇がしばらく押し上げ要因となる一方で、今後、欧米の景気減速が見込まれるなかで、2%の物価目標の持続的な達成が見込まれるほど、賃金インフレ圧力が強まることは想定しづらい。したがって、今後はコアCPIの減速と共に、日本の期待インフレ率も低下していくとみている。仮に、日本のインフレが再加速した場合には、期待インフレ率が上昇すると思われるものの、この場合は同時に緩和解除への期待が高まりやすく、日本の10年債利回りも再び上昇すると思われる。この結果、日本の実質金利はこれ以上低下し難く、現状付近がボトムになると考えられる。
<適正水準145円付近か>
22年初旬からの相関関係でみると、日米実質金利差が、足元の2.2%付近から、仮に2.5%付近まで拡大した場合、ドル円は145円付近が適正となる。しかし、さすがにそれ以上の大幅な日米実質金利差の拡大は見込みにくいとなると、そこから先のドル円上昇は、投機的な動きによるオーバーシュートと言えるため、政府・日銀による円買い介入の可能性は一段と高まるのではないか。
介入がなかったとしても、日米実質金利の環境を踏まえれば、ドル円は今後オーバーシュート気味に上昇する可能性はあっても、上昇トレンドのピークは近づいているように思われる。
<YCC再修正、年内にも>
これまでの植田日銀総裁の発言を見る限り、YCCの再修正やマイナス金利政策の解除は当面お預けのように見える。しかし、YCCの再修正に関しては、足元の円安地合いも踏まえれば、7月か9月か、年内のいずれかのタイミングで踏み切っても不思議はない。黒田前日銀総裁は22年9月の会見で、長期金利の上限引き上げは利上げに当たるのかとの質問に「それはなると思う」と答えた。これにより同年12月のYCC修正は、「事実上の利上げ」と受け止められ、市場に混乱が生じた。
しかし、植田総裁はYCC修正と利上げを特段結び付けてはおらず、あくまで「市場の副作用の解消が目的」と説明することはできるのではないか。日本の金融政策が現状維持のまま欧米の景気後退期に突入すれば、欧米の十分過ぎる程の利下げ余地に対し、日銀の追加緩和余地は限られるため、現状とは逆に急激に円高が進行するなど、マーケットのボラティリティを高めるリスクはあるだろう。今の安全運転は将来のリスクにつながる可能性があるように思われる。
(編集 橋本浩)
*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルグループの執行役員兼金融市場調査部長、チーフアナリスト。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。著書に「〈最新版〉本当にわかる為替相場」、「ビジネスパーソンなら知っておきたい仮想通貨の本当のところ」などがある。
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