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概要:ヘッジファンド運営会社ロングテール・アルファの創業者ビニア・バンサーリー氏は、金融市場でかつて最も静かな場所の一つだった米国債が最近頭から離れず、睡眠があまり取れていない。
金融緩和時代のピークにおいて、米連邦準備制度は月1000億ドル(現在の為替レートで約15兆円)を上回るペースで、リターンにかかわらず国債と住宅ローン担保証券(MBS)をやみくもに買い入れ、満期まで保有した。取引は閑散となり、利回りは来る日も来る日も最低水準に張り付いた。ヘッジファンドはより多くの利益が見込める高リスク投資に引き付けられ、米国債をおおむね避けた。
しかし、今や連邦準備制度はバランスシートのランオフ(償還に伴う保有資産の減少)を許し、市中金融機関もアウトライトで保有資産を売却している。消費者ローン金利が一層高くなる恐れがあり、景気全体の脆弱(ぜいじゃく)性が増す一方、バンサーリー氏のような投機家にとって、米国債の状況は好ましいものとなった。
これら「ファストマネートレーダー」は、はるかに価格に敏感であり、原油相場上昇や連邦準備制度当局者の何げない発言、失業率の変化といったごくわずかな誘因で、はるかに素早く債券ポジションから手を引く。
ファンド運営会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントを率いるビル・アックマン氏は、米国債相場の下げ方向への賭けを過去数カ月にわたり公然と行ってきたが、10月23日時点で「最近のデータが示唆するより速いペースで米景気が減速しつつある」との認識を示し、米長期国債のショートポジションを手じまったと明らかにした。
それほど機敏でなかった従来の投資家と異なり、新たな買い手は、膨らむ米財政赤字を賄うために国債利回りを一層押し上げ、相場の変動もより激しくなる可能性が高い。
アルファシンプレックス・グループのチーフ・リサーチストラテジスト、キャスリン・カミンスキー氏は「債券のボラティリティーは短期的に戦術的好機を提供可能であり、そうなるだろう」と指摘した。
価格変動は劇的で予測不可能だ。米国の10年国債利回りは先月23日に2007年以来で初めて5%を突破した。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの戦争が拡大するリスクのヘッジ手段として、投資家が買い急ぐ場面もあれば、予想外に強い米経済指標に反応し出口に殺到することもあった。
30年国債利回りの1日の変動幅は平均で13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)前後と、過去10年平均の3倍余りに達した。
連邦準備制度のデータによると、ヘッジファンドの米国債保有額は過去最高の2兆3000億ドルと1年で3倍に増えた。ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によれば、新たなファンドのスタートは過去1年余りで最速ペースとなっており、最も豊富な戦略の一つは債券市場の価格のずれを利用し、利益を得ることを目的としている。
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